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記憶改竄的現世界物語  作者: さも
第3章:贖罪を求めて
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第28話:復活と覚悟

「何じろじろ見てるさね」


耳に入った特殊な語尾。

側近の狐っ娘さんがそう言った。


「あぁ、ごめんなさい」


その姿は日常では絶対にお目にかかれないもので、とても魅力的に感じた。

あのフワフワ感がとにかくすごいんだ。これが。


「貴方からの呼び出しなんて珍しいじゃない。どうしたの?マヨイ」


「そうね、家の子供たちに貴方達の事を様子見させてたんだけど、もうそろそろ限界かなと思って」


「余計なお世話だ」


俊介先生が殺意に似た眼差しでマヨイと呼ばれている女性を睨んだ。


マヨイ・ヴァレン。

ノルヴァ家と対立してたヴァレン家の元締めって事でいいんだろうか?


ピリピリと感じ始めた圧力。

これは....モノホンだ。


「まぁ、そう言わずに。ヴィクセン」


マヨイがそう言うと側近の狐っ娘はスッと闇に消え、ティーセットを抱えて帰ってきた。


「どうぞ」


あの狐っ娘がヴィクセンか。

あの【移】の文字をグリシアに渡したって言う....。


トットットッ....と紅茶を淹れるマヨイ・ヴァレン。


「お茶でも飲んで、大丈夫。睡眠薬とかは入ってないから」


ミレイ・ノルヴァが率先してカップを手に取る。

口に運ぶまでの一連の動作はとても洗練されていて、美しかった。


「貴方達シュンの遺品をどうするつもりなの?」


「破壊するさ。シュンに復活でもされたらたまったものじゃない」


「遺品がどんなモノか分かってる?」


「あぁ。そう簡単に破壊できないのも、遺品そのものの恐ろしさも」


緊迫した空気が流れる。

心なしか紅茶に波紋が広がっている。


「まぁ....貴方ならよく分かってるでしょうね」


「ねぇ勝治。せっかくここまで来たんだし、天界でも見て帰ったらどう?」


「え、えぇ?...はい」


思わずキョドってしまった。

天界。人間の俺なんかが入っていいのだろうか?


と言うかなんで俺なんだ?

この場には俺以外にも季子にキムナエ先生と人間がいるのに....。


2人ともなんの違和感も感じていない顔をしているけど....。



━…━…━…━…


そのまま上手い事丸め込まれて、俺等は天界に行くことになった。

雲の上の天国みたいなものを想像していたけれど、現実はその数十倍奇妙な場所だった。


悪夢をそのまま体現したかと思えば、何処か正気が保たれていて、とてもアンバランスな....。

なんと言うか人間には到底理解出来ないそれだった。


宙に浮くバラバラのルービックキューブ。

基盤の様なモノもある。


これは...連絡石の光だろうか?


キムナエ先生も季子も天界に来たのは初めてのようで、とてもワクワクした表情を見せていた。


魔法陣が至る所に展開されているが、それに魔法的効力は発揮されておらず、標本の様に固定され放置されていた。


とにかく奇妙なこの空間。


ヴィクセンに案内されるまま、俺等は遺品まで来た。


「これが例の遺品さね」


そう言って見せられたのは宙にフカフカと浮く懐中時計のようなモノだった。


鼻をスンスンとさせ匂いを確認するヴィクセン。


「いるさね、まだちゃんと残ってるさね!」


何かを発見したらしく、言動が安定していない。


「いるって何がだよ」


「いるさね、ライリーが。まだ、ここに」


俊介先生は眉間に皺を寄せたが、同じ何かを感じたらしく、構えた。


【ウッドソード】


先生がそう唱えると、時計の周囲から鬼火の様な炎がボッボッボッと点火した。


その鬼火はゆっくりと銃近づき、莫大な光を発しながら時計と合わさった。


針が高速で回り出す。


バァァン!と言う激しい破裂音と共に、先程までそこにあった遺品は完全に破壊され、代わりに一人の女性が目の前に立っていた。


首にかけられた十字架のネックレス。

金髪のポニーテール。

ゲルマンよりの顔立ちをしたその女性は現状に戸惑いながら、俺等の方をじっと見てくる。


しかしその女性は数秒もしないうちにニタァ....と奇妙に笑い、口を大きく開けた。


うおっ....。

そのスラリとした体からは想像できないほど強い吸い込みで、俺は【喰われそうに】なった。


辺りの塵やら標本やらがどんどん口に入っていく中、自分の意識さえも食べられそうに....


【ウッドソード】


先生がそう唱えると同時に閃光が辺りをつつみ、女性の身動きはピタリと止まった。


「あれ...私?」


「調子はどう?」


ミレイ・ノルヴァのその発言に、その女性はハッとする。


「ミレイ様...?」


「お帰りなさい、ライリー」


ライリー・ノルヴァ。

遺品に飲まれた暴食の女神....。


かなり前に教会で聞いた女神が、今目の前で復活した。

俺はとんでもない現場に立ち合わせているのかもしれない。


「ちゃんと遺品は壊せたみたいね」


後ろからコツ....コツ....と足音を立ててマヨイ・ヴァレンがやって来た。

その妙なやりきった感を出している様に微妙な苛立ちを覚えたが、彼女はここまで見越して俺等をここに送ったのだろうか?


だとしたら本当の策士だ。


「貴方もしかしてライリーの精神が残ってる事知ってたの?」


「えぇ、勿論」


「貴方も中々の畜生ね....」


ミレイ・ノルヴァが引き気味でそう言う。


「私の能力じゃ、自分より下の能力を神基準で再現することは出来ても自分より上の能力は再現できないのよ」


「ならもっと早く言えよ」


「あら、ごめんなさい。貴方も貴方で手一杯に見えたから」


ニヒヒと悪戯な笑みを見せるマヨイ・ヴァレン。

頭を掻き、言葉を詰まらせる先生。


この2人を尻目に、未だキョトンとし続けるライリー。


テラを失ってはや数時間程しか経っていないが、事態は秒で進んでいる。

精神的な時間は止まっても、現実の時間はそれに合わせて待ってはくれない。


俺も、改めて決める必要がある。


【決死の覚悟】ってヤツを....。


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