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記憶改竄的現世界物語  作者: さも
第3章:贖罪を求めて
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第25話:敗北の同意義

208号室、病院のドアを開ける。


ベッドでスヤスヤと寝ている季子。


病室に入ると、その音で目が覚めたのか、こちらをじっと見つめて来る。

数秒もしないうちに、季子の目に涙が浮かんだ。


「ごめん....なさい....ほんとうに....」


「そう気にすることないさ、記憶を弄るなんて地味な能力、あんな時にぐらいしか役に立たないから」


季子は何処か安堵の表情を浮かべ、枕に後頭部を沈める。

天井を見上げる季子は相変わらず泣いていたが、その表情に何処か笑みに近いモノが見えた。


「ってことは貴方見たのよね、私の....」


「あぁ」


「そう.....」


幼少期の記憶の事だろう。

季子の詮索能力は相変わらずみたいだ。


「私のって?」


奈恵先生が詮索を入れる。


「触れてやんな」


シーッとジェスチャーを取る俊介先生。


「その方は?」


季子が奈恵先生を不思議に眺める。


「貴方のクラスの担任....って紹介の仕方はまずいのよねぇ....」


「そうね、俊介と同じ【探求者】よ」


季子と奈恵先生は数秒見つめ合った。


「貴方魔法が使えるんですか?」


季子のその発言に驚きを見せる奈恵先生。


「どうして?」


「貴方の瞳ですよ、今貴方は私を見てるはず。でもその瞳にはテラが映ってる」


「.....かしこいのね」


「テラに何かあったのか?」


「えぇ、彼女。今とっても危ないわ」


奈恵先生のその発言に、場の空気が凍る。


【ウッドソード】


俊介先生は針を手に刺し、垂れた血を鏡の様な物に変えた。

奈恵先生が何故テラの事を知っているのかも気になるが、それ以上にテラが危ない状態と言う事のほうがもっと気になる。


「...テラは何処だ?」


「ちょっと操作権貸して!」


奈恵先生は鏡に向かって魔法陣を展開した。

生まれて初めて魔法陣を見た。

その文字の一つ一つが明るく光る。

美しいと言う言葉をこれほどまで直接的に感じたのはこれが初めてだ。


魔法陣がクルクル回転し出すと、鏡に映っている映像がブラーをかけて変化した。

パッ!パッ!と移り変わり、次第にテラが映った。


何も無い個室に....閉じ込められている。

頭を抱え悶えるテラ。


「テラ!」


季子がベッドから起き上がり鏡を見つめる。


━…━…━…━…━…


密室に足音が近づく。


「時間だ」


「お願いだから....目を覚ましてよ」


「無駄だ、もう私はお前の兄じゃない」


「いいや!お兄様はお兄様だもん!誰がなんて言おうとテラの大切なお兄様だもん!」


「....」


テラとテラ兄の間に流れる妙な空気。

テラ兄が指を鳴らすとテラは突然もがき出し、数秒もしないうちに意識を失った。


肩にテラを担ぐテラ兄。


くるりとこちらの方を向く。

指を銃のような形にし、こちらに撃つ仕草を取る。


━…━…━…━…━…


「ッ....」


鏡がバリッと大きな音を立てて割れる。

奈恵先生が目を押さえる。


手から血が流れている。

目の出血がひどいようだ。


「大丈夫ですか!!?」


「えぇ...大丈夫....」


奈恵先生が手をゆっくり動かすと、緑色のダイヤモンドダストの様な霧が広がり、出血は止まった。

どうやら治癒魔法も一通り使えるようだ。


「見つかったな」


「何者なのよ....シュン」


奈恵先生と俊介が静かに割れた鏡を眺める。


「魔法じゃ無いみたいよ」


「分かってる。でも異能力にしてはその度合いを遥かに超えてるんだよ、それこそ神に匹敵するほどの力さ」


仮面....テラ兄の能力....神に匹敵。

分かったような気にはなるが実際のところサッパリ理解できない。


「テラ兄のつけてる仮面ってシュンのモノなんですか?」


「そうなるだろうな、これが遺品の力となると相当厄介だぞ」


「ナエラのリストを見ないことにはなんとも言えないんだが、遺品は複数個存在する。その全てにあんな能力があると思うと正直僕でさえゾッとするよ」


季子が自身の体をほぐし始める。


「待て、何する気だ」


「何って、決まってるじゃないですか。テラを追うんですよ」


「死にたいのか?」


俊介先生がそう言うのと同時に、奈恵先生が彼の肩を抑えた。


「...すまん、言い方が悪かった」


「精神支配がどれほどのものかは分からないが、少なくとも今の彼に人情なんてのは存在しない。そんな奴を相手にしようとしている事を忘れるな」


「もしそれでも、君が命に変えてでも今助けに行かなくちゃいけないと言うのなら、僕も協力しよう」


季子が何かを考える仕草を取った。

頭をフルに使って何かをシミュレーションしているのだろうか?

季子が壊れたおもちゃのようになっている。


「今この期を逃したらもう私は成長できません、何せ大切な私のいとこが死にそうな現場を目撃したんですから....ここで手を打てないようじゃこの先一生後悔する....」


「助け出す方法はもう思いつきました、俊介先生。さっきの密室までドアを繋げる事はできますか?」


季子の瞳はいつにも無く決意に満ち溢れていて、とても病み上がりの人間には見えなかった。


「君がそこまで言うなら僕も協力しよう。君は賢い....。僕はそれを信用している」


「だけどな.....」


俊介先生は、季子のその決意の眼差しを少し冷たい目で見つめ返す。



「自己犠牲は敗北と同意義だぞ」


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