表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶改竄的現世界物語  作者: さも
第3章:贖罪を求めて
23/51

第22話:消えいていた過去

下校時刻になり、生徒が一斉にカバンを用意し出す。

新任の奈恵先生はサッサと支度を済ませ帰ってしまった。


それこそ何処か落ち着かない様子で。


馬場さんのバーに向かう。


━…━…━…━…━

カランコロンというベルの音が鳴ると共に、馬場さんが飛び出してきた。


「...なんだ勝治か。俊介を見なかったか?」


「先生は見てませんけど....」


「そうか....」


「どうかしたんですか?」


馬場さんが何処か落ち着かない様子でカウンターに戻る。

それに付いていき、いつもの丸椅子に座る。


「思い出したんだよ....全部」


「なんで忘れていたかさえも思い出した。絶対に忘れるはずのない思い出を....思い出したんだ」


馬場さんからいつもの落ち着きは消えており、そこにいたのは妙にたどたどしい彼のみだった。


「教えてください、一体何を思い出したんですか?」


「俺が....死んでたって事だよ」


沈黙。


数秒の沈黙が空気を凍らせた。

馬場さんの口から発せられた理解不能の言葉。


頭がその言葉を理解するのに数秒かかった。


「馬場さんって幽霊だったんですね」


「だったらどれ程楽なことか.....」


俺の頭は冗談と解釈したがどうやら間違いだったようだ。

落ち着かないどころか、今の馬場さんは何処か【怯えて】いる。


「もしかして【シュン】に関係することですか?」


馬場さんは何処かポカンとした顔でこちらを数秒覗いた。

その様に狂気に似た気色悪さを感じたのだが、どうやらビンゴだったらしい。


「そう...シュン。シュンだよ」


「あいつはどうなったんだ?」


「すいません。俺は何も....」


さらなる沈黙、カウンターに寄りかかる馬場さん。


「....すまん、取り乱した」


「いえ...」


シュンの事を深く聞きたい。

しかし、とても聞づらい。


しかしこの取り乱し様...。原因はやはり俺か。

俺があの新任教師の記憶をいじったあれがトリガーなのか....。


今馬場さんの記憶に入れば....!?


╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬

ダメだ、馬場さんの記憶に侵入できない。

恐らく先生が何か仕掛けたのだろう。


本当に厄介な事になった。


触らぬ神に祟りなし。

ニーナ・ノルヴァが俺に残していったあの言葉が脳裏をちらつく。


あぁ、不快だ。


この手も足も出ない蹉跌した状況。

心の底から嫌悪感を抱く。


美和子を殺した時に感じた感覚そのもの。


そんな気持ちを押さえつけようとテーブルに顔を押し付けていたら、馬場さんが一つのドリンクを出してくれた。


「シュンについて聞きたいって顔してるな....」


金色に光る飲み物。

俊介先生おすすめのウィッチラニーノーズだ。

馬場さんは何故これを....。


テーブルに小さなコップを置き、コトコトとラム酒を注ぎ始めた馬場さん。

その透明なビンから注がれる液体はキラキラと光っており、注ぎ切ったコトッと言う音が耳に共鳴した。


手にレモンの輪切りを掴み、鼻にレモン汁をダイレクトに入れた。

目に涙が浮かぶ馬場さん。


グイッとコップの中身を一気飲みした。


「覚えとけ勝治ィ....。アルコール度数の高い酒も、別の所に神経を集中させちまえばなぁ....グイッといけるんだよ....」


はぁ....はぁ....と息を切らす馬場さんを尻目に、その左右に激しく揺れる馬場さんの瞳に自分がやらかした事の重大さを感じ、正体不明の不安が体を駆け巡った。


「あれは丁度今から大体十年ぐらい前の話だ。その時から俺はここでバーをやってた。俊介はうちの常連だったよ....」


「先生って確か今28ですよね....18でバーの常連なんですか?」


「あぁ、その俊介に勧めてたのがお前が今飲んでるその【ウィッチラニーノーズ】だ。未成年に飲酒を強要しているみたいで楽しかったよ」


「今思うと本当によく出来た話だと思うよ。俺等は今でこそ違うが、他者に【作られた】存在だった....」


━…━…━…━…━…━…━…


ある日普通に仕事をしていたらな、突然頭痛に襲われたんだ。

それが俺にとっての全ての始まりだった。


その頭痛が収まってから俺はある違和感を感じたんだ。

俺以外の誰かの記憶が俺の脳内に入り込んでるんだよ。

それもただの記憶じゃない。【別世界】の記憶なんだ。


そんな記憶に翻弄されていたら突然俺の店に黄色い変わった目をした男が現れてな、そいつが有無も言わさず俺をカードにしたんだ。


モノも言えない一枚のカード。

つってもカードにされた時の記憶は無いんだ、俊介が言うには相当奇抜なデザインをしていたらしい。


そいつは俊介と取引するために俺をカードにしたらしいんだが、その男....確か純也って言ったか。その男は交渉の末俊介にとり憑いた。


なんでも俊介と融合することで自分の能力をフルで発揮できるのがどうたら言っていたんだが、正直俺はそこら辺のことをサッパリ理解できなかった。


俊介は俺のこの記憶のことを【憑依】だって説明していたよ。なんでもミレイ・ノルヴァのミスでこの憑依現象が起こり、その第一症状が【記憶共有】なんだと。


そう記憶共有....せっかくのいい機会だ。どうせそろそろ俊介が来るだろう。

それまでの間にお前に全部聞かせてやるよ。




俺らが体験した....【記憶共有的異世界物語】を。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

キオモノシリーズのご愛読、ありがとうございます。


面白いな。と思っていただけたら【ブックマーク】【ポイント評価】【感想】等頂けますと、のたうち回って喜びます。


キオモノシリーズはこちら

全作品は時系列が繋がっていますので、是非他作品も読んでみて下さい!

Twitter

クリックで応援(なろう勝手にランキング)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ