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記憶改竄的現世界物語  作者: さも
第2章:ジェミニの陰謀
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第20話:次元の違うトラウマ。

谷底に落ちるような、そんな感覚。

いつ地面に叩きつけられるかわからない。そんな感覚。


人の記憶世界でここまで命の危機を感じたのは初めてだ。

もはや方向すら分からない。


真っ暗闇の中、落ちる恐怖に耐えながら体を動かす。

水泳選手の様に体を折り曲げ、壁を目指す。

ふと意識を地面に向けると、そこに謎の光があった。


最初は方向を間違えて上を向いたのだと思ったが違った。

この底なしの谷の底。

最下層に、たどり着いたのだ。


折り曲げた体を飛び込みの様な形に変え、最下層へと急ぐ。


光に飛び込むと、そこには色のないセピア調の世界が広がっていた。

昔の映画にそのまま飛び込んだかのような世界。

記憶の奥深く、昔のトラウマの部分に入ってしまったらしい。


「やめて!放して!」


何処からか声がする。

心の底から怯えた震え声。


声の方を振り向くと黒い風が背後からビュッと吹き、その風が人の形を形成していった。


首を締められる男と首を絞める男。

腕で雁字搦がんじがらめにしている為、絞められている男は抵抗が出来ない様だ。

首を絞める方の力がどんどん強くなっていく。


「放してって....言ってるでしょおおおお」


一人の季子似の女性が小型のナイフを持って絞める男に走っていった。


パスッ。


一瞬だった。

季子似....恐らく季子の母なのだろう。

彼女の抵抗虚しく、残ったのは彼女の胸元にグサリと突き刺さったナイフだけだった。


「え?」


季子母の手にはナイフは握られておらず、そのナイフは彼女の胸元にグッサリと刺さっていた。


「私の能力を忘れたか、その攻撃は....愚行だぞ」


男の意識が途絶える、さっきまで全力で抵抗していた男は無抵抗になった。

ポフッと男を地面に投げ捨て、季子母からナイフを取り上げる。


そのナイフで今度は男の頚動脈に傷をいれた。


季子母とその男....恐らく父だろう。

季子の両親は大量の血の元、亡くなった。


目の前が血で真っ暗になった。


何も見えないし何も聞こえない。


こんな状態に陥れられれば嫌でも思考停止する。


かろうじて血の間から見える視界。


両親殺しの犯人が指を鳴らすと、季子の両親の遺体は消滅した。

驚く程に呆気なく、そして秒もかからぬうちに....消えた。


そして男はニヤリとこちらに向かって笑い、スッと消え去った。


これが季子のトラウマ....。


いや、待て。こんなのトラウマなんて次元を遥かに超えている。

常人なら気が狂って自殺するレベルだ。


賢い頭を持っているなら尚更自害する。

一体どんな思考回路になって今を生きているのだろうか?


....いや、そうか。なるほど。


その賢い頭だからこそ、ギリギリで踏ん張る事が可能なんだ。

ギリギリで踏ん張って、今にも体の中から何かが飛び散りそうな状態からなんとか踏ん張って。


最悪なまでに【不安定】な状態。


季子の背負っていたモノはあまりに大きく、とても俺が理解して慰められるモノでは無かった。


記憶世界とだけあって、俺はこの世界では無敵だ。

イメージしたものを自由に出現させられる。


だからこのトラウマを季子から取り払うことだって、簡単ではないだろうが可能だ。

しかしそれではダメだ。


こんなに長い期間季子を押さえつけていたこのトラウマを取ったりしたなら、その反発は想像したくもないモノになる。


良くて投身自殺か、最悪の場合自分の体を自分で壊していく様を見せられる羽目になる。


地面に石のホバーのを作り、上へ向かう。

落ちる時と違い、這い上がるのは一瞬だった。


石を削除して、俺は記憶世界から抜け出した。


季子の顔に仮面は付いておらず、そこには横に倒れ涙を流す季子がいた。


「季子は?」


「無事よ、気を失っているだけ」


ミレイ・ノルヴァが季子に手を当ててそう言う。


抱きつかれる感覚。


テラだ。


「良かった....本当に....」


傍から見ると事案にしか見えないだろうが、テラの心の底から安堵したようなその表情を見てこちらも安心した。


テラの髪を手で撫でると、テラは嬉しそうな表情を見せた。


「先生、結局テラ兄は何者だったんですか?」


「それを今聞くのか....。まぁ、常識的に考えるなら【ジェミニ】のリーダーと考えるのが筋だろうね」


「ただ疑問なんだが、僕にはジェミニが昔から存在していたグループに見えないんだ」


先生は座った目でテラを睨む。

テラは数秒間沈黙し、そして口を開いた。


「ジェミニはお兄様が作ってたゲーム開発チームなの....」


テラが一瞬でしぼみ、俊介にそう言う。

俊介は何処か申し訳なさそうな表情をしたが、その有益そうな情報に耳を傾けた。


「お兄様は趣味で作ってたんだけど、いつの間にか仲間が出来て....。」


「そのチームの名前が【ジェミニ。】星座を舞台にしたゲームだったから、お兄様の持ち星座の【ふたご座】から取ってジェミニ」


テラが半泣きになる。

その顔は何処か憎悪に満ちていて、そして。


「でもまさか本当にジェミニが殺人集団だったんて....」


「キミの兄は仮面に取り憑かれただけだよ、テラ」


テラは顔をこちらに埋めたが、そのうなじから背中にかけて、今のテラはとても淋しそうだった。


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