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記憶改竄的現世界物語  作者: さも
第2章:ジェミニの陰謀
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第17話:復讐鬼

仮面の表情にノイズが走る。


仮面がノイズしか走っていないアナログTVのように変化していく。


数秒もしないうちに仮面はコトリと地面に落ちた。

仮面の下の女の表情。


その表情に、思わず生唾を飲み込む。


目が何者かにくり抜かれ、血の涙を流している。

口元は裂けており、正直見たくもないグロテスクなものになっていた。


バタンと倒れる女。


「やっぱり死体だったか....」


俊介の冷静な分析を聞くのと同時に、テラがあたりを不信そうにキョロキョロ見回す。


テラが何を探していたか....その地面に落ちたはずの仮面を探していると分かった瞬間、世界から色が消えた。


咄嗟にミレイ・ノルヴァの方を見たが、彼女は原因ではないようだった。


コツンと言う音と共に、仮面が机の上に落ちる。


その仮面は宙に浮き、カタカタ笑い出した。


竜巻の様なものが起こり、吹き飛ばされない様に体重を移動させる。


「よぉ、よぉ。マヌケさん方....お探し物はコレかい?」


仮面の口が開き、そこから声が聞こえた。


竜巻は大量の仮面を生み出し、廊下に向かっていった。


ドン。ドン!ドン!と大きな破壊音が部屋中を包み込む。


パァン!とガラスが大破し、室内に無数の首なし、四肢なしSPが入り込んできた。


風が人の体の形を作り出し、風人形が喋った仮面を装着した。


右手から鬼火のようなものが見えたかと思えば、そこから一つ青と赤のラインが入った異質な仮面が生まれ、風人形はその仮面をテラの兄?の胴体に取り付けた。


数秒もしないうちにテラの兄が起き上がる。


首なし死体で。


操り人形のように....。


「お兄様....?」


テラが嬉しそうに近づく。


「危ない!」


首なしのテラの兄はテラの腹に拳を入れた。

人を遥かに超えた筋力で。


化物さえも超えたような、そんな筋力で。


兄の拳はテラの胴体を貫通した。


テラの血反吐が地面に落ちる間も与えず、テラは壁に吹き飛ばされた。

胴体に空いた穴、壁に強く打ち付けられる痛み。


あの年の娘に与えていい痛みじゃない。


【ウッドソード】


俊介が能力を唱えると同時に、テラの傷口はあっという間に塞がった。


【ロストブランク】


ミレイ・ノルヴァが能力を唱えると、風人形はかすれて消えた。

しかし再び風が巻き起こり、人形は【再結成】された。


カタカタと宙に浮き笑う仮面。


この2人のコンビを持ってしても決して優勢とは言えないこの相手。


SPがこちらにターゲットを変えたようだ。


クソ....またこれか。


自身の記憶を改竄する....【自己改竄!】


反射的に目を瞑る。再びまぶたが上がると、目の前のSPの動きが圧倒的に鈍くなっていた。

右足に力を入れて思いっきり飛ぶ。


空中に飛ぼうと、SPはお構いなしにこちらに突っ込んでくる。


その動きに知性を感じなかった。


ならば俺は闘牛士の様に....。


両手の拳を構え、宙に浮きながら無数の仮面にラッシュを食らわせる。


何処からか銃が飛んできたが、きりもみで回避した。

奴らが化物だとしたなら、今の俺はきっとハンターだ。


仮面持ちが獲物にしか見えない。


体が本能的に殺戮を求めているのだろうか?


考えたくもない。


バリッバリッと仮面が割れていく。


仮面さえ割れば死体は動かなかった。

実在してないのに、仮面を殴る感覚はハッキリあった。


もはや奇妙を通り越して【理解不能】だ。


地面に着地するのと同時に後ろからナイフが振られる。


死角になっているせいで反応できない。


なら....。


地面に力を加え、大きく上に飛ぶ。

クルリと後ろを振り返り、ナイフの上に乗った。


ハリウッド映画でしか見ないようなアクション。


パルクールの演者の様な....そんな視界。


もはや俺の足は無意識に動いていた。


仮面の割れる音と同時に、頭に重い一撃が入る。


さっきまでいなかったはずの背後に、テラの兄の姿があった。


かすれる視界。

立ちくらみのようなノイズが視界に入る。


ものすごい吐き気が体を駆け巡ったが....。


仮面を握ることに成功した、このまま握りつぶし....。


気づけば仮面を握っていた右手が消えていた。

兄の手刀。


手から血が噴き出す。


「ウオォォッ....」


地面に蹲る中、ハッキリとした大声が耳に入ってきた。


「勝治!私にも貴方のそれと同じ記憶を頂戴!」


テラだった。

殺意の篭った目で、圧倒的な怒りの感情をまとって....。


あんな小さい子に肉体疲労をさせるわけには。なんて色々な考えが頭の中をよぎったが、テラのその目を見ればその本気度は伝わった。


彼女の事だリスクは考慮しているはず。


ならばここで俺が出し惜しみしていても蹉跌を産むだけか。


【テラの記憶を....改竄する!】


テラがギュッと目を閉じる。


一瞬体が変な方向に曲がったように見えたが、それは記憶に体が付いていこうとした証だろう。

瞳を開けたテラの目から眼光が鋭く光る。


その様は復讐に燃える鬼のように恐ろしく、美しかった。


傍から見るとこんな風になっていたのか。と思うのと同時に、俺の意識は限界地点に近づいてきた。


【ウッドソード】


あぁ....ちょっとばかし遅いよ....先生。


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