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記憶改竄的現世界物語  作者: さも
第2章:ジェミニの陰謀
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第14話:旧友

「すまん、サッパリ分からない。説明してくれよ」


死んだ俊介の目にハッとハイライトが入る。

こちらを凝視する俊介。

その眼差しは生気を感じさせず、俺はギョッとした。


「あ、あぁわるい。何処から説明したものか....」


「昔の話だよ、僕が神の資格を手に入れる前の話」


俊介の発言の何処かに俺は違和感を感じながらも、彼は昔話を始めた。


━…━…━…━…━…

今からそう離れて無い10~15年程前の話。


僕はちょっとした【病気】にかかっていた。

自分のモノでは無い他の誰かの記憶の保有。


生まれつきその病気を持っていた僕は、その気持ち悪さからその記憶に触れないように生きてきたんだ。


だけど上手くは行かなかった。ある時今度は意識が別の人間に行っちゃったんだ。

意識の【憑依】先は【シュンヤ】って言う男だった。


彼は異世界【バーミア】の人間だった。

そう、ここの住人....。


驚いたよ。異世界が存在すること、そこの住人と記憶で繋がっていたこと。そして何より僕がその土地を別人の体とは言え踏み歩いていること。


いろんな驚きが僕の中にあった。


その後色々あって僕はそこにいるソイツ。ミレイ・ノルヴァと出会った。


彼女も中々に酷でね。気付いたらクソみたいな運命辿らされてたよ。


僕は【その女神のミス】によって生まれたのさ....。


ミレイ・ノルヴァの紹介で色々な神に出会った。


ノルヴァ家と対立している【ヴァレン家】の神々とも嫌と言う程戦った。

でも本当の脅威はヴァレン家なんかじゃ無かったんだ。


本当の脅威は【僕自身】だった。


別の時間軸で僕は世界を一つ丸ごと滅ぼした。


ヒョンな事から【神を】....殺すことで手に入れた力で。

その時間軸のシュンヤが編み出した、【ウッドソード】で。


色々な悪条件が重なって、彼は世界を一つ丸ごと滅ぼした。


その男の名前が【シュン】。僕にとっては絶対に忘れられない名前だ。


そしてそのシュンは、遂に僕の住んでいる時間軸にやって来た。

僕の住んでいるこの世界さえ消そうとしたんだ。


シュンを倒すために物凄い労力をかけた。

ノルヴァ家の分家に入った事もあった。

ヴァレン家と協定を結んだ事もあった。


右往左往しながら、僕はやっとの思いでシュンを倒した。


何度四肢を持ってかれようと、何度血反吐を吐こうと。僕は闘った。

仲間を沢山殺す羽目になった。


戦って、戦って。戦い抜いて。僕は遂にシュンを倒したんだ。


【無達成感】だったよ。


何も残らなく滅びた世界を見て、「あぁ、僕はこんなものの為に頑張ったのか」って。


心の底から虚しく、悲しくなった。


幸い僕はシュンと戦いながら蓄積されていたエネルギー帯を持っていたんだ。


それを使って滅びた【バーミア】,【地球】,【天界】の3つの世界を全て元に戻した。


何もかも消滅して、色すら残らなかったその世界を全部戻した。


戻った後の世界が今君達が住んでるこの世界って訳....。


━…━…━…━…


「こんな所かな。」


唖然とした。

こんな話、受け入れられるはずが無い。


脳が拒絶反応を起こす。


そりゃぁそうだ。


こんな現実からかけ離れた...それこそ【神話】みたいな話、信じろって言う方が無理だ。


テラと季子はほぼ100%理解したと言わんばかりの表情を見せていたが、俺にはどうも理解できない。


じゃぁつまり今僕が生きてる世界は【一度リセットされた】世界って事か?


そしてそのリセットの原因は【シュン】で....。リセットによって世界を救ったのが....【俊介】?


バラバラなパズルのピースが少しずつはまっていく様に、なんとなくで分かってきた。

だが【理解不能】と言う事実は変わらない。


俊介の高すぎる戦闘能力はそれが原因か?


と言うかそんな人間がどうして俺なんかを....。


「こんな陰気臭い教会に居てもなんだ。折角この世界に来たんだったら面白い所に案内してやるよ」


俊介に案内されるまま、俺等はBarに来た。


Bar.雨水。


地球でこれの英名そのまんまのバーを知っている。

俊介先生行きつけのあの店だ。


o0O○O0o0O○O0o0O


カランコロン....


至福の鐘の音が....ガシャン!!


陶器の割れる音が店内に響いた。


「しゅ、俊介....なのか?」


驚いた表情を見せる俊介。


「僕の事覚えているのか?」


「あんなことがあったんだ。忘れるはずも無いだろ....」


そういうのは店主...!?


馬場....さん?


いや、微妙に違う。

全体的な雰囲気は瓜二つだが、なんというかオーラの様なモノが微妙に違う。


物凄い感覚的なのだが、あの2人は別人だ。


「久しぶりだな....バリッシュさん」


心なしか俊介の目に涙が浮かんでいる。


さっき話してた【仲間】....なのだろうか?


テラが号泣している。


「だ、大丈夫か?」


「だって....他のみんな記憶を失って....虚無感を。感じてたのに....この人は...この人だけはぁぁ」


ビエエエンと子供のような泣き方をするテラ。


みんな記憶を失って....?


あっ!


もしかして世界を【リセット】した時に、仲間から俊介の記憶は消えていたのか?


ミレイ・ノルヴァを初めて見た時に動揺していたのもそれが理由....か?


それでこの人だけが俊介の記憶を保有していたと。


「何年ぶりだよ!よくまぁ俺が死なない内に来てくれたな」


ハハハと元気に笑う店主の老人。


「恨んでないのか....?」


「ハハ、人が人である以上いつかは死ぬさ。アイツは偶々それが早かっただけ....。それに死んだ奴らも全部お前が蘇らせたんだろ?」


気さくに笑い飛ばす老人。


「そうだ。お前に見てもらいたいモノがある」


そう言って指を鳴らす老人。


Barに場違いと言わんばかりに設置されていた遊技台。

ルーレットやポーカーテーブル等が一式になっていた遊技台が、指の音と同時にひっくり返った。


そこには懐中時計から霧吹きなど、地球でよく見る品が揃っていた。


「ナエラやトウはあん時の記憶を失ってるっぽかったんだが俺だけは全部覚えててな。馬場の記憶を頼りに作ってみたんだ」


「完全に全部覚えているのか?」


「あれを忘れろって方が無理な話さ」



そう言う老人の目には、歓喜の表情が浮かんでいた。

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