表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶改竄的現世界物語  作者: さも
第2章:ジェミニの陰謀
13/51

第12話:自己【改竄】

男は足を抑えながら蹲っていたが、ゆっくりと立ち上がるとこちらに向かって一つ溜息を付いた。


「そうか」


バァン!と響く銃声。


撃たれたのは季子だった。

肩を押さえ蹲る季子。


その様を不安そうに見つめるテラ。


なる程、計算したのは逃げる所までか....。


反撃手段も用意してくれよ....。


いや、俺は子供に何を求めてるんだ....アホか。


この距離からでもギリギリ記憶を読めるが、改竄できて数秒って言ったところだろう。


足りない。


近づくか触れるかしなくては....。


視線を下に落とすとさっきテラが落とした電車があった。



ラバーチェアの向こうにいる銃持ちの男。


その机の下に落ちている電車。


肩を押さえ蹲る季子。

その奥で半泣きになりながら何かを考えてるテラ。


この状況で....何をすれば....。



時間がない。


男は数秒もしないうちに季子に止めを刺すだろう。

俺がここで騒いで撃たれればターゲットを季子から俺に移す事は出来るだろうが、そんなの時間稼ぎにもならない。


一体...ハッ!


可能性だ。


人間の可能性。


達也は自分の記憶の中に【自分は殺し屋】と言う記憶をねじ込まれていた。


そして実際に季子のあの一撃を防いだ。


なら、俺も俺自身の記憶を【改竄】したなら....。


試す価値はある。

ただしリスクが大きすぎるのも事実だ。


どうする――――

間髪入れず男が二発目を季子に撃ち込んだ。

背中を撃たれ絶叫する季子。


もう時間は無い。


自分の記憶を【改竄】する。


【自分には人間離れした身体能力がある】


....。


瞬間。俺の中の何かが【書き換えられた】。

無意識のうちに瞳を閉じ、そしてゆっくりと開ける。


自分でも信じられない集中力だ。


男の動きがコマ送りの様に見える。

季子の絶叫が耳で分散されて脳まで入ってこない。


それ程の集中力。


右足を深く踏み込むと同時に、男がこちらに銃を向ける。

何の躊躇いもなく引き金を引く男。


弾の軌道が見える。


ゆっくりとコマ送りの様に....。


体が追いついていない。

間に合わないことがすぐに理解できた。


なら簡単な話だ。


足元に落ちていた電車を蹴り上げる。


顔面0距離まで近づいて来たその弾は、蹴り上げられた電車に当たり軌道を変えた。


躱すのに足りなかった距離が補われ、男の弾が俺に当たることは無かった。


男の怯む表情がよく見える。

心なしか視界もクリアだ。


踏み込み十分。


地面を蹴り上げ男の元に向かう。


「オラァァァァ!」


拳を深く握り、男の顔面に一撃加えた。


脳震盪を起こしそのまま地面に倒れる男。


「フゥ....」


手をパンパンと払った。

人の顔面を殴る機会なんて滅多にないものだから少し痺れた。


しかし想像以上だ。


記憶の改竄によって自分の無意識を【操作】してみたが、まさかここまで出来るとは....。


「何者なの...?」


「え?」


「勝治...だっけ?お兄さん何者なの...?」


テラが怯えた目で聞いて来る。


「さっき言ったばっかりじゃないか。俺は理由あって季子の手伝いをしてるただの高校生さ」


「あの男は綿密に【殺しの手段】を立ててこっちに来てたはず。でもそんな計画を実行させる前に倒すなんて....ありえない!」


テラの怯えた目は、どこか嬉しそうに見えた。


「取り敢えず先生呼ばないとな....」


「こっちに来るまでに時間かからない?」


「ん?あぁ、そっちの先生じゃないんだよ」


携帯を取り出す。

電話の相手は当然【俊介】だ。


ツー。ツー。ツー。


出ない。


おいおいおいおい。


季子の出血量....医者を呼んで間に合うか?


と言うか医者を呼ぶのは非常に危険だ。

警察が関与してくるだろ、こんな怪我。


そうなったらもう【捜査】を続ける事は出来なくなる。


一体どうすれば....。


━…━…━…━…


一瞬、世界から色が消えた。

世界に色彩が戻る。


圧倒的なプレッシャー。

俊介に似た、この感覚....。


「ミレイ....ノルヴァ?」


「あら、私の事覚えてくれてたのね」


テラが理解不能と言わんばかりの表情をしている。

そりゃ何の前触れもなく急に現れたら驚くだろう。


まぁ、この女の場合は自分の思った【シナリオ通り】に動いてくれなかったから驚いているのだろうが....。


ミレイ・ノルヴァは季子の怪我を見て、手をかざした。


【ロストブランク】


彼女がそう唱えると同時に季子の傷は跡一つ残さず消えた。


「弾丸は?」


「消えてるわ」


「一体...何を?」


テラが俺の後ろにしがみつきながらミレイ・ノルヴァにそう聞いた。


「私の能力【ロストブランク】は望んだモノのパラメーターを【0】に出来るの。今は季子の怪我のパラメーターを0にしたわ」


テラはゆっくりと目を閉じ、何かを考える仕草を取った。

目を開けると、そこにさっきのタジタジさは消えていた。


どうやら常識を書き換えた様だ。


「どうしてここに?」


「外を歩いてたらたまたま貴方達を見つけてね、今にも死にそうだったから助太刀しようと思ったのよ」


そう言って手元に魔法陣の様なモノを広げるミレイ・ノルヴァ。

魔法陣の上に円形の液体が浮かび、その液体にはこの部屋が監視カメラ映像の様に映っていた。

非現実的すぎるその光景に、無性に【美しさ】を感じた。


「ただちょっと距離が遠くてね、今になっちゃったって訳」


「驚いたわ勝治。まさか貴方があんな人間離れした身体能力を持っていたなんて」


ミレイ・ノルヴァがそう言うと、俺の体は本来の自分を思い出したようで、虚偽で固めていた肉体疲労が一度に襲いかかってきた。


その場に倒れこむ。


薄れていく意識の中、ミレイ・ノルヴァの【ロストブランク】だけはハッキリと聞こえた。


o0O○O0o0O○O0o0O


「※▼□....える?おーい」


「あ、あぁすまん。能力で身体能力を無理やり書き換えてたもんだからつい....」


「そういうことだったのね」


気付くと季子が起きていた。


どれぐらい寝てたんだ....?



「さぁ、俊介の所に連れて行ってもらってもいいかしら?」


「え?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

キオモノシリーズのご愛読、ありがとうございます。


面白いな。と思っていただけたら【ブックマーク】【ポイント評価】【感想】等頂けますと、のたうち回って喜びます。


キオモノシリーズはこちら

全作品は時系列が繋がっていますので、是非他作品も読んでみて下さい!

Twitter

クリックで応援(なろう勝手にランキング)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ