プロローグ
生きるという事が最高につまらない....
生き地獄という言葉は世の中に対して失礼かも知れない。
でも地獄だ。
日常とは常に同じもので、変動しない退屈なものだと思っている。
言語や微妙な行動の変化こそあるが、日常とくくってしまえばどれも同じだ。
「おはよう」
これもそう、いつものあいさつ。なんの変哲もない普通の【日常】
正直人と話すのは嫌いだ。
相手が何を考えているかサッパリ分からない。
しかしそのくせ、言動と内心が一致していない奴はすぐにわかる。
▼◇△※□◆■
何気ない挨拶をしてきた友人の表情から感情が消える。
顔から光が完全に消え、何か大切なモノを失ったかの様にその場に棒立ちする友人。
ハッと彼の表情に光が戻ると、その友人はそのまま席についた。
これが俺の能力。【記憶を改竄する能力】。
友人との挨拶の記憶を改竄し、彼の記憶からさっきの挨拶を消した。
コミュニケーションを上手く回避して、それでいて交友関係を崩さない最高の手段だ。
人からの印象だってこの能力で自由に操作できる。
人に危害を加える能力だと言われれば否定はしない。でもちょっと記憶の一部を借りるだけさ、なんの問題もないだろ?
....嫌いだ。
こうやって能力を乱用している自分が嫌いだ。
俺が生まれつきで持っているこの【能力】が嫌いだ。
俺はこの能力で、殺人を犯している。
醜く汚く、それでいて下劣な殺人....。
生きてるこの状態が嫌いだ。
だが生きてる今が、俺にとっての罪滅ぼし用の牢獄なのだから。
赤松勝治。怠惰で醜い殺人鬼、それが俺だ。