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出会い。

皆さんおはようございます! ななかです!


化けクリ、今回は第3話です。mixi上では19話まで上がっていますが、こちらはマイペースで行こうと思っています^ ^


どうかよろしくお願いします!

(この物語はフィクションです。実在の事例、国、人物と、この物語は関係ありません)




 奈久留が死んで10日後の事だった。


「俺、ちょっと修行に行ってくる」


 緋色はボク達に別れを告げた。よその町へ行くと言う。頭をかいて照れくさそうに彼が笑った。


「だって、いつまでも弱いままじゃ、創たちに守られてばかりじゃカッコ悪いもんな!」


 頭をかいてぎこちなく笑う緋色は、いつもの緋色のように見えた。挙動不審なその表情を除けば本当にいつも通りの彼だった。


「奈久留はボクが冷凍保存しておいた」


 ボクの言葉に緋色の笑みが消える。空を見て、その後彼はまたボクへ笑った。


「ボクが、ボクがいつか奈久留を絶対に助ける! 約束だ、緋色」


 ボクと緋色は腕を絡める。『みれい』は頭を伏せて緋色の前に居た。ゆっくり振り上げられた顔の下で唇が狂おしく動いている。


「緋色は死なないよね? 私の所に戻ってきてくれるよね?」


 みれいは胸の前で腕を組み緋色へ願った。


「ああ」


 緋色がみれいの髪を優しく撫でる。そして緋色はボク達に背を向けた。


「待ってよ! 私を置いていかないでよ、緋色」


 振り返らずに緋色は答える。


「助けてほしい時は呼んでくれ。何処からでも駆け付ける」


 ボクとみれいを残して緋色は旅立った。苗字を持たない幼馴染の緋色はその日、夕陽と共に赤茶けた山へと沈んでいった。




※※※




「創! どうすればいいの? 聞いてるの? 創!」


 意識が6年前から帰ってくる。


 皆が『ペストネズミ』に近づけず手をこまねいていた。果敢に近づこうとするキメラ(仲間)も居る。けれどその全てを、『みれい』と『飼葉かいばタタミ』が抑えていた。


 背に『タタミ』が体を寄せる。そのミディアムストレートの黒髪がボクの肩に触れた。

『飼葉タタミ』。彼女は飼育・調教兼、お茶くみ隊長の13歳少女だ。


「リーダー。『みぃちゃん』なら行けるよ」


『みいちゃん』とはボク達が作った猫ベースのキメラだ。体長11mの巨体で、うちのメンバーの中で唯一『ペスト』に強い耐性のある子だ。

 しかし敵体液の噴出は免れない。いくら『みぃちゃん』が良くてもボク達が感染する。

 けれど『みぃちゃん』しか安全に戦えるメンバーは居なかった。


「お困りのようだね、『化け物クリエイターズ』の諸君」


「……誰だ? お前は」


 頭上を見上げると、民家の上に何者かが立っていた。黒い帽子鳥形の仮面を被った長身の男。そいつは高いそこからボクを見下していた。


「『歯車フォーチュン』と申します。キミたちには是非とも挨拶がしておきたくてね」


「あんた、このキメラ(ねずみ)達のリーダーかい?」


 鳥仮面のそいつが頷く。杖を突き、そのくちばしがボク達を前につり上がる。


「おいおい。こんなお粗末なものじゃなく、もう少し『格』のある奴らを連れておいでよ。ネズミ3匹じゃ、うちの『みぃちゃん』だって腹ぺこさ」


「そうかい。失礼したよ」


『歯車フォーチュン』そいつが声を鳴らし笑った。表情は仮面の中で読み取れない。


「なら、うちの子たちは肩を借りようじゃないか。その『みぃちゃん』に。……それでは、皆さんごきげんよう」


『フォーチュン』はハットを手に頭を下げた。


「逃げるのか?」


「いやいや。世間に響く『化け物クリエイターズ』さんがどれほどのモノかと思ってね。……いや、とんだ期待外れだったよ」


 杖を振り屋根上で陽気に足音を鳴らす。その背がボク達から去ろうとしていた。


「最後に聞きたい。お前、……6年前この街に来なかったか?」


 その背が止まる。ハットを目深に被り『フォーチュン』は言った。


「さぁ、どうだろうね」


「……あ」と。『フォーチュン』が顔だけを振り返らせる。


「そうそう。私からもキミ達に1つ言いたかった事がある」


 その仮面のレンズが煌めく。顔の角度を変えることなく『フォーチュン』はボク達に語った。


「――ネズミ肉、美味シソウに食べてたよ。あの子」


 喉を震わすその姿に、震える腕が収まることを許さなかった。


 杖を鳴らしてその背が屋根を渡っていく。燃える夕日に向かい悠々とボク達から遠ざかっていく。追いかけようとするボク達を『フォーチュン』のしもべである巨大なネズミが阻んだ。


『みぃちゃん』が襲い掛かる。だが『みぃちゃん』と巨大ネズミの交戦はすぐに均衡が崩れた。3対1、しかも『みぃちゃん』はボク達に『ペスト』が感染らないように、ボク達を守りながら戦うしかない。


「みぃちゃんっ!」


 みれいが悲鳴を上げる。みぃちゃんの巨体が民家を押し潰し倒れていく。


「――大変そうだね」


 知らない男が路地裏からボク達に歩みを見せた。それは、あの『フォーチュン』とは別の男だった。

 齢は50くらいだろうか? フォーチュンより歳を重ねているように見える。幅のある肩、大きな体躯で、彫りの深い顔に幾つものシワを蓄えている。その目は無邪気に笑っていた。彼は自身の左手側に剣を携え居合の姿勢をとる。


 一方的に、街を壊し、みぃちゃんを虐げた巨大ネズミたちは、その剣に危険を感じたのか、目標を男へ変更し襲いかかった。


 それは瞬きの間に起こっていた。

 一瞬で大気に6つの太刀筋が奔る。本当に、見えないくらい一瞬の出来事だった。


「これも、……朽ちた世の綻びか」


 男の呟きののち、巨大ネズミ3匹はそのままの姿勢で前傾に倒れた。奥の建屋、『化けクリ』メンバー、全てを無傷に、巨大ネズミ3匹にも一切の傷が見受けられない。


「四肢の腱を切った。あとはキミ達が好きにするといい」


「あなたいったい? いったい何者なの!」


 みれいの声を受け、剣を納めた男が振り向く。


「私に名は無いよ。どうしても名を呼びたかったら、……そうだね、『ジョーカー』と呼ぶといい」


 唖然とした顔でみれいが口にした。


「ジョーカー(切り札)?」


 男、『ジョーカー』は優しい笑みをしていた。軽々とその逞しい身体を持ち上げ語る。礼節に満ち埃を払う所作(しょさ)すら無かった。


「そうだ。キミ達が欲すれば私は文字通り『切り札』となろう。キミたちが私を、『ジョーカー』を手札に加える事が出来たら、だがね」


 ――『ジョーカー』と名乗る男が去っていく。茫然と立ち尽くすボク達を置き捨て、陽を背にして何処までも歩いていく。

 それが、謎の男『ジョーカー』とボク達『化け物クリエイターズ』の出会いだった。



(;ω;)お読み頂き、本当に、本当にありがとうございました!!

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