-癒皓鳥の使命と燕の勧告-
如何も今日は。御寒い時期ですけど皆さんは御元気ですか?私は寒いのは苦手なので可也きついです。手が悴むと頁は捲れないし、字は書けないし、パソコンを打つ指は縺れるし、色々と苦しむ時期です。
おこた様で温々し、御気に入りの曲を聴いて話を書く時は確かに至福の時ですけれど、セッティングが辛い・・・。早く春に否、夏になぁれ。
あ、然う言えば曲で思い出しました。実は最近ある方のライブに行きました。そして余りの感動に一曲目でホロリ、自分の一番好きな曲が来てホロリ、最後のトークでホロリし、挙句の果てにライブ終了後、ダッシュで会場を飛び出して「うぉぉおおぉお!!」と叫び乍ら走って帰りました。不審者も甚だしいですね。近所の皆さん大変迷惑を御掛けしました。
只其の帰り道、沁み沁みと思った訳です。たった一曲、あの数行の詩、四、五分程で人を感動させ、泣かせる事が出来るんだと。やっぱ歌って良いなぁ。こんな醜い話しか書かない筆者を泣かせるとは。
だから今後も話を書く時にはそんな話も書けたらなぁと思いました。読んでしまえば呆気ない、取るに足りない語りで人々を鬱と絶望の淵に追い遣り、突き落としてやろうと。(何て壮大で傍迷惑な誓いだ。)
まぁそんな誓いは置いといて、本題です。今回出てくる子はカラドリウスさん!某ゲームの事ではないですよ。え、マニアック?・・・そ、そんな事ないですよぉ・・・多分。
此の子はまぁ当て字の漢字の通り、真皓な鳥で病気の王の前に現れ、助かりそうなら病気を吸い取ってくれる子なんです。何て都合の良い子!然も其の溜め込んだ病気を頸に下げた黔い袋に集めて行く事で、其が一杯になると卵を産むんですよ。何て都合の良い子!(大事な事なので復唱しました。)
他にも首回りだとか、尾の付け根、足は黔いとか、嘴と目は小っちゃいよ、とか色々特徴はあるのですが、今回の話では余り関係ないでしょう。要は都合の良い子と憶えていてくれれば良い訳です。
でもどんなに都合の良い事でも、其に慣れれば人はより欲望を深める訳で・・・カラドリウスさんに吸い取って貰う可き病は其の強欲かも知れませんね。
癒皓鳥は飛んで行きます
東の国の王が病で苦しんでいるのです
癒さなくては
癒皓鳥は羽搏きます
東の国の王の病を癒した癒皓鳥
国人に見送られ、北の国へ行きます
急がないと、急がないと
北の国の御后が病で倒れている
后の病を癒した癒皓鳥
脇目も振らず、飛んで行きます
次は、次は・・・
昔はこんな事、無かったのに
癒皓鳥は嘆きます
兎角、人は増え過ぎた
方々に散り過ぎた
此では隣国に行くのも一苦労
其に病を癒して来たからだろう
己が身も年と共に重く感じて来た
程遠くない内に、自分は病で倒れるかも知れない
癒皓鳥は飛んで行きます
未だ次の国は見えません
其にしても最近、病に倒れる人が増えた様な
然う言えば、人々が吉兆の兆しを見なくなったと言うが、何か関係があるのだろうか
飛び続ける癒皓鳥
翼が痺れて来ました
休もうかとも思いましたが、否、人々が待っていると、無理に飛んで行きます
凱風で仰がれて躯が傾いた時でした
黔い雲華の様な物が癒皓鳥を受け止め、支えてくれたのです
見ると、其は燕の群でした
おやおや癒皓鳥さん、如何してそんなに急ぐのですか、少し御休みになりなさいな
一羽の燕が癒皓鳥と並行して飛びました
危ない所を助けて貰い、礼を言う、でも私を待つ人々がいるので止まる訳には行かないのです
癒皓鳥は然う言い、少し強く羽搏きました
然う言えば燕さん、最近人々の所に巣を作らないのですか、人々(ヒトビト)が吉兆の兆しが無いと嘆いていましたよ
人々が頼りにしているのに、何処へ行っていたのですか
癒皓鳥の声は少し責める色がありました
まぁ癒皓鳥さん、貴方若しかして、未だ人間に仕えているのですか、こんなにも翼を痛めているのに
燕は僅かに翼を傾け、凱風を流しました
其が私の使命なのです
貴方も人々の家に巣を作る事で、吉を呼び込む使命があった筈ですよ
必要とされているのなら、応えるのが当然ですよ
癒皓鳥さん、貴方は勘違いをしているわ
燕はさも呆れたように言った
飽く迄人間が求めているのは王の復活であって、貴方ではないのですよ
其の証拠に人間は私が巣を作っても、子供の守りはしてくれないわ
貴方の病や疲れを、顧みたりはしないわ
若し貴方が病で死に掛けても、人間は王を助けるよう、貴方に頼むでしょうよ
其で貴方が死んでも、人間は別段気にしないわ
御分かりかしら、人間が本当に待ち焦がれているのは、貴方ではなく、王なのよ
だから私は態々人間の所へ行って巣を作るのを止めたのよ
癒皓鳥さん、貴方も然う思わなくて
そんなに貴方が頑張っても、貴方は感謝されないわ
人間は王の復活を喜ぶのであって、貴方が来て喜んでいる訳ではないのよ
癒皓鳥は考え込みました
燕の言葉が正しい様に思えたからです
数羽の燕が癒皓鳥が失速しないよう、そっと支えてやりました
如何ですか癒皓鳥さん、私達と一緒に行きませんか
私達は人里離れた秘境の地へ向かっているの
彼所は静かで良いわ、貴方の長旅を癒すのに最適よ
癒皓鳥は燕と共に秘境へ向かいました
病に倒れる人々(ヒトビト)は悲しみ、王と后は嘆きます
神殿を立て、神事を執り行い、癒皓鳥を冀いましたが、旅の医者の存在を知ってから癒皓鳥の名を告げる者はいなくなりました
-Fin-
御疲れ様です。如何でしょうか、今回はやってみたいなと思っていた一寸日本の昔話系の話にしました。燕さんの口調とかね、正に然うです。
いや、別にツバメが人里で巣を作るのは別の理由っしょ、と言われるのは分かっているんですけれど、此処は物語と言う事で一寸目を瞑って頂ければと思います。
若しかしたら本当に燕さんは今回の御話の様な性格かも知れませんし、人が好きで来てくれている子がいるかも知れませんしね。科学だとか、本能だとか、効率的だとかそんな理屈抜きな行動って何かしらあると思うんですよ。時に心は思わぬ外方を向く事もありますし、然う思う方が書き手としても世界が面白く見える気がします。
そんなこんなで今回は此の位で。次はちょーっと異色な子にしようかな、と思っています。気が向いたら、ですけれど。
では皆さん良い物語を。