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プロローグ

この物語はフィクションです。実在する人物、団体等とは一切関係ありません。なお、作品の都合上一部現存する機関名(気象庁、海上保安庁など)が登場しますが、これらも全て現存する機関とは無関係な架空の機関です。

西暦 2124 年 8 月 5 日

大学院生に長い夏休みなどない。どれだけ科学技術が進歩しようとも、どれだけ人間の 生活が豊かになろうとも、大学生は 8 月になればキャンパスから姿をきっぱり消し、閑散 としたキャンパス内を大学院生が闊歩するという工学部の光景は変わらないようだ。滝澤 彰宏も、そんな大学院生の 1 人だ。季節は夏、滝澤がキャンパスに到着する午前 10 時に もなれば、アスファルトは高く昇った太陽によって熱せられ、下からの不快な熱気が体を 包み込む。

天気予報によると今日の東京の最高気温は 38 度、降水確率 0%。しかし滝澤が通う東都 理工科大学の敷地に関して言えば、この天気予報は全く役に立たない。

「ああ、また降ってくるな。」

滝澤がそうつぶやくとほぼ同時に、雨粒が一粒落ちる。そしてもう一粒... 30 秒も経つ 頃にはキャンパス一帯は大雨に見舞われた。今日の雨量は 150mm といったところか。5 分 もすればこの雨はきっかり止んでまた元の不快な蒸し暑さに戻るのだろう。

「いい加減雨降らす時は事前に予告するなり正門に表札立てるなりして欲しいもんだがね?おかげで毎回ずぶ濡れなんだが。」

滝澤は雨音にかき消されないように大声でこの雨の元凶である人物に呼びかける。

「あれ、今回はちゃんと Web 掲示板に告知出したよ?ちゃんとチェックしてないあんた が悪いんじゃない?」

雨の元凶もまた大声で返す。

「Web 掲示板なんて頻繁にチェックしないだろ普通。現に門の前で立ち往生してる人たくさんいるぞ。」

そうこうしている間に雨はかなり弱まり、傘なしでもどうにか歩けるくらいまで落ち着いた。

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