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俺が兄であることに不服か?  作者: Fukuju
第壱章 SPRING -春編-
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楽しい!楽しい!午前授業!? ②

教室に着いたのだが仁は教室に入れないでいた。


何故だか分からないが何か嫌な予感がしてならなかったし、何よりチャイムはまだ鳴っていないのに教室内が明らかに静かだったからだ。


”絶対に何かおかしい‥”


だが、このままではらちが明かない。仁は意を決してドアを開けた。


すると、教室内には先生は居なかったが、生徒は全員 出席していて、全員が席に座っていた。

だが、誰一人として話している人は居ない。


”かなり怪しいな‥”


保険として、いつでも逃げ出せるようにドアを開けたままにしておいた。


そして、俺の不安が現実に起こったのは教室内に入って直ぐだった。今入ってきたドアが勢いよく閉まったのだ。


”なんだ!?”


そう思うより早く、誰かが叫んだ。


『福川 仁を取り押さえろ!!』


その声と同時に先ほどまで静かに座っていた男子生徒が勢いよく俺に飛び乗っかってきた。


気づいた時もうすでに時遅し。


俺の上には四、五人の男子が馬乗りになり、俺はうつ伏せのまま身動きが出来ない状態になった。


『はっはっはっはっは』


前の席の方から一人の男が悪態をつきながら俺の目前にまで近寄ってきた。すると、俺に指をし、


『お前には幾つか質問に答えてもらう。拒否権は無いぞ!』


悪人面あくにんづらで言い放つ。


仁は頬杖ほおづえをつきながら深いため息をついた。

なぜなら、その男が誰であるかを知っているからだ。


『新学期 早々から一体何の真似まねだ。朝日ともはる


すると、朝日は少し焦りながら小さな声で話しかけてきた。


『バカ!雰囲気壊すなよ。俺はマフィアのBOSSで、お前はその中に紛れていたスパイって設定なんだ。なぁ頼むから、もう少しだけ付き合ってくれよ、な?』


可愛くもないウインクをしてきたのは秘密にしておこう。


”そもそもなんでマフィアなんだよ‥‥”


という俺の思いも虚しく、朝日はまた演技を始めた。


『お前には幾つか質問に答えてもらう。拒否権はお前には無いぞ!』


しょうがなく、仁もこの訳の分からない劇に付き合うことにした。

後でジュースでもおごらす為に。


『なんだ!?一体何を聞こうっていうんだ!?』


朝日(ヤクザのBOSS(仮))は不吉な笑みを浮かべながら質問をしてきた。


『始業式の時に出ていた新入生代表の子は本当にお前の妹なのか?』


『あぁ、あれは俺の妹‥‥って、それが聞きたいだけじゃねえか!』


『ま、まあな』


朝日は本心の下心を当てられ少し戸惑いながら下手くそな口笛を吹いて誤魔化していた。


『全く‥お前は本当に回りくどい事するよな。普通に直接 聞けばいいのに』


『え!?きいていいのか!??』


先ほどまでの表情が嘘のように目を爛々(らんらん)とさせ顔を近づけてくる。


『そ•の•ま•え•に!俺の上のこいつらをどかせろよ』


『‥それもそうだな』


朝日は男子達を手招きしながら教室の隅に移動し、数秒後、男子は教室を出て行き、朝日は俺の元へ帰ってきた。


『何をしてたんだよ』


『手伝ってくれた報酬を渡してたんだよ。報酬と言ってもある秘密の場所の情報だがな』


悪どい顔をしながら朝日が言ってくる時は、関わらない方がいいというのを俺は知っている。


キーンコーンカーンコーン‥


チャイムが鳴った。


『朝日、俺の席はどこだ?』


『えーと、お前の席はあそこだよ』


朝日の指を指した方を見ると、窓際の一番後ろ。誰もが一度は憧れる最高のスポットだ。


”ラッキー!”


そう思いながら席に着こうとすると、朝日は俺の席の前に座った。


『もしかして、お前 俺の前?』


朝日は満面の笑みを俺に向けてきた。


”最悪だ‥‥”


と思う中で、朝から今までの数時間の事を思い出し、


”今日一日でいったいどんだけ嫌な事が起こるんだよ‥‥”


としみじみ思った。


だが、朝日とは高校からの友達で普通に仲は良いし嫌いでは無い。


だが、先ほどので分かったと思うが少々めんどくさいところがある。

顔はイケメンなのに全く勿体もったい無いと心から思う。

こいつにあだ名もつけるとしたら、


「残念なムードメーカー」


といったところだろう。


『ところでさぁ、さっきの続きなんだかど‥‥』


『今からホームルームを始めるぞ!』


いつの間にか担任の先生が教卓に立っていた。


話しの途中で切られた朝日は少しふてくされていた。


『仁、妹ちゃんの事 後で絶対に教えろよな』


『分かった、分かった。』


嬉しそうな顔をしながら、朝日は先生の方に向き直った。


”全く、単純な奴だ”


だが、朝日のそういう所は俺だけじゃなく、皆が嫌いじゃない事を仁は知っていた。


だが、朝日と久しぶりに居る自分が少し楽しんでいることには気づいていなかった。

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