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雨花追い御伽噺  作者: 左傘 蕨
一章 旅の途中にて。
8/22

街でお友だち⑸

結構前にかけてましたがなんだかんだで遅くなりました。

それではどーぞ。

 ばたん、と大きな音がして扉が乱暴に開けられた。

 扉を振り返ってみればそこにいたのは、見て三分後くらいには忘れていそうな程ありきたりな顔をした男。


 しかし、どうにも今は忘れられそうもない。

 引きつけられて、そして思わず目を離せなくなってしまいそうな程の目。

 真っ赤腫れ上がった、正気とは思えないような、血走った、目。

 その目はどろどろとした殺意を湛えて、セロをまっすぐに、確かに見ていた。


 彼は近くにいた少女を掴んで、引き寄せる。

 そして首元に突きつけられた鈍い光を放つ、ナイフ。

 少し先が欠けていて、確かにそれが人を殺すことのできるモノだということに現実味を持たせていた。



「お前のせいだ!」

 口から泡を吹く勢いで彼はそう言った。

 手に持ったナイフはカタカタと震えて少し、少女の首に傷をつけた。

 とろりと、零れた赤。

 ヒッ、と引きつるような声が少女の口から漏れた。


 やっと少女の両親が思い出したように動き始める。

 その顔を占めるのは恐怖。

 自分の娘が人質に取られているという事実と、そしてもう一つ。

 事件なんて起こして領主様にまた、目をつけられるのでは、という恐怖。



 それをセロは無感動に眺めていた。

 というか、少女を人質にとった彼が何を言いたいのか。寧ろ何がしたいのかすらわからない。

 セロはお前のせいだと言われるようなことをした覚えはないし、今までに会った記憶もない。

 セロは小さく首を傾げる。


「お前が屋敷に火をつけたりするから!だから俺らの家族は見せしめに首を切られた!」

 セロは彼の間違いに気づいた。

 おそらく、彼が言っているのは、コクリコのこと。

 首を切られた、というのはよくわからないが。

 屋敷に火をつけたのは、セロではない。けれどセロと見間違うような人、は。

 それは



「黙ってないで何か言えよ!」

 悲鳴のような声が考え込んでいたセロを引き戻す。

 セロはやっと彼に目を向けた。


「じゃぁ、わたしにどうしてほしいの」

 さっきから要望らしきことは聞こえてこない。

 それでは答えようもない。


「領主様のところに行け!そして首切られちまえ!」

 彼は苛立ったように怒鳴りつける。

「わたし ひ つけてないよ?それでも?」

「嘘を吐くな!確かに見たんだ!青い服着たお前が笑いながら屋敷じゅうに火をつけて回ってたのをな!」


 どうやらセロ予想は当たったよう。間違いなく、屋敷に火をつけたのはコクリコだ。

 セロは目を伏せた。




「……どうしろって、いうの」

 ポツリと零した声は誰に向けたものでもなく、思わず零れたもの。


「なんだっていいよ!ねぇ!助けてよ、なんで?なんで私がこんなことになってるの?ねぇ、可笑しいよ!」

 人質に取られたままの少女が不意に叫んだ。まるで、今やっと自分の置かれた状況がわかったようで。

 大きく見開かれた目。

 ぐしゃりと歪められた顔。

 ぼろぼろと零れる涙。

 零れた涙が床に落ちた血を少し薄めた。


 少女の両親は何もできないままで。

 セロは、傘を強く握りしめていた。




 今にも崩れてしまいそうな危うい均衡の中。

 それを壊す声。

『ほら、やっぱり。ね?言ったでしょ?やっぱりまた駄目だったんですよ、嬢さん』

 なんで、とセロは小さな声で呟く。他の人がいるところではセロの身に(・・・・・)危険が及ぶかもしれないから喋らない、と約束したはずなのに。

 それなのにヴィオラは当たり前のように

『いつまでもこんなところにいちゃ駄目ですよー。あんなのの相手なんてしなくていいですから』

 そう言った。


 恐らくヴィオラの言うあんなの、は人質にとった彼。そして取られた少女。何より

『こんな茶番劇、付き合う必要なんてあります?』

 この、人一人の命がかかった状況全て。


「茶番劇なんかじゃない!」

 ヴィオラの言葉に固まっていた彼は、さっきより憤ったようにその手に持っていたナイフを振りかざす。


「なにを、」

 セロの言いかけた言葉は、言い終わることはなく、そして



まとめて投稿したかったんですよね。

街のお話が終わるまで。


言い訳です。すみません。

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