探し物を探す途中にて。
サブタイトル変えました。11月26日。
「……あめ」
目が潰れそうなほどに青い空を見上げて、小さく呟いた。それに誰かが
『何言ってるんですかー。こんなにいい天気なのに。しっかりして下さいよー』
明るく返事をした。でも、その姿はどこにもない。
『全く、しっかりして下さいよー。嬢さんが倒れたらこっちもおしまいなんだから』
少し細いでもしっかりと舗装された道を歩いているのは嬢さんと呼ばれた一人の少女。大きな紫色の傘をさしている。
少女は少し傾いた傘をなおして
「ぜんしょする」
幼い口調でそう言った。
それきり黙った少女に痺れを切らしたのか姿の見えない誰かが言う。
『次の街はどんなところですかねぇ』
少女は傘を見上げて全く表情を変えないままに答えた。
「どんなところでもいいよ。どうせいつもといっしょ」
『もうちょっと期待とかしませんか?ほら、誰かと仲良くなる!とか、美味しいもの食べる、とか』
ニコニコという擬音がつきそうなほど明るく楽しそうにそう言う誰か。でもその姿はやはり見えない。
少女は道の先を睨みつけるようにして見た。
「おまえがやっかいごとをつれてくることのほうが、きっとおおいよ。そうでしょ、ヴィオラ」
『そんなことありませんって。俺、厄介ごとなんで連れてきませんってば』
少女はどうだか。とでも言うように自身がヴィオラと呼んだ紫色の傘を見上げる。その目はその言葉をまるで信頼していなかった。
『ま、心配しないでください。何かあったら俺がなんとかしますから』
少し笑いを含んだような声で、ヴィオラと呼ばれた傘が言う。
「……おまえは、あめをさえぎるくらいしかできないでしょ」
淡々と、しかしじとりと少女は言った。
『えー酷いですよ嬢さん。俺も、実はすごいんですよー?』
からからと笑う声がする。
少女は嘘だな、なんて、まるで信用していない。
確かに今までそんな、死にそうなほど酷い目にあったことはないけれど。けれどその理由を、この傘が守ってくれたからだ!と思えるほどに夢見がちな精神をしているわけでもない。
少女は今まで自分がさしていた紫色の傘を閉じて、無言でぺしりと地面に叩きつけてみた。
『いてっ』
そのまま無言で傘を開いて何事もなかったかのように肩にもたれさせる。
『いきなり何するんですか嬢さん。物は大切にしなくっちゃぁ』
少し不服そうにヴィオラが言った。そんなのどこに吹く風。少女は特に何も言わない。
風が吹いて、幽かに少女の少し長い髪を揺らした。
少し霞がかった空は、それでも青くて。のんびりと雲が流れていく。
『いい街だと、いいですね。次の街は』
ぽつりと、ヴィオラが零した。
「そうだね」
少女も今度はちゃんと言葉を返した。
少女は空を見上げて、小さく呟いた。
「ほんとうに。どこにいったのかな」
『……さぁ?でも、セロが探してれば、きっと見つかりますよ』
ヴィオラは少し間を空けて答える。その言葉にセロと呼ばれた少女はわからないくらい幽かに、でも確かに笑った。