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教科書と10円
1時間目が始まった。
「先ほどはどうもありがとうございました」
氷未のお礼に彫霧は一切反応を見せない。
「それで・・・・・あの・・・・・彫霧君?教科書を・・・見せてもらえませんか?・・・・・忘れてしまったので」
「10円」
黒板を見ながら彫霧は言った。
「10円で見せる」
その発言を聞き、最初ぽかんとしていたが少しして返答した。
「・・・・・わかりました。授業が終わったらでよろしいですか?」
「駄目だ。必ず払うという保障がない」
彫霧は即答した。
「えっと・・・私を信じていただけませんか?」
困った表情で氷未が頼んだ。
「駄目だ。信用できない」
さらに困った表情で聞く。
「あの・・・・・どうして?」
「無駄話は嫌いだ。どうするんだ?」
「わかりました。・・・・・払います」
そう言って財布から10円玉を出して渡した。
それを受け取ってから無言で教科書を差し出した。
「え?・・・あの・・・・・一緒に見ないと彫霧君が勉強できませんよ?」
そんな言葉に見向きもせずに彫霧はケータイをポケットから出す。
それを見て少しして、先生にトイレに行くと言って教室から出て行った。




