食ザー版 食戟の○ーマ
定食屋『せいえき』は、味はいいが、評判は悪かった。理由は簡単だ。
料理が全て汁入りだからだ。
ここでいう汁というのは、荘厳華麗なる白濁液のことを指す。ちょっとした粘り気と異様な温もりを持った水に白い絵の具を垂らしたような液体。
要するに精液だ。
もちろん衛生的に問題はない。毎日お風呂には入っているし、念入りに洗っている。客に提供するのはいつも二発目以降だから、腐っていることもない。常に新鮮な状態でイキの良いものを提供している自負がある。
それでも抵抗感のある人がいるのもわかる。むしろいない方が心配になるくらいだ。
「……自分らさぁ、こういう飯出しといて、気持ち悪いとか思わんのか?」
ある夜、酔っ払った客が失礼な口を開いた。お品書きを見ては不愉快そうに顔を引き攣らせている。既に半分減ったビールの泡が何で出来ているかも知らずに。
男が口を開くたび、ムワッとイカとタバコが混ざった臭いが鼻をつく。食事にザーメンをかける食ザー。それに関わらず、食事の後は歯を磨いた方がいい。男が求めているのはそういう指摘でないことも理解している。
「お客さん、ウチはそういうお店なんですよ。性感ヘルスの嬢だって(お客さんのこと)気持ち悪いと思っているでしょ?」
父が窘めるように言った。言い換えれば売れるからやるという理論だ。商売にもならないのに誰が好き好んでアンタの相手をするのか。
とは言ったものの、僕も、そして父も、この食ザー料理店をそれだけの思いで営業しているわけではない。というより、売れる売れないで言えば、全く売れていない。閑古鳥さえ鳴くのを躊躇うほどだ。
それでも『お精子処 せいえき』が今も看板を掲げていられるのは、アンタのようなトチ狂った物好きのお陰である。くらえ感謝のザーメン三倍がけ先付け。
「儲かりまっか。そうでっか」
男は何かを歌って白い液体に浸る先付けを摘む。
瞬間、眠気で閉じかかっていた目は興奮した猫のようにガン開き、全身に電撃が走ったかの如く身震いさせた。かと思うと、絶頂に至る恍惚とした表情を浮かべる。
「どうです? お客さん」
父はにこやかに尋ねた。絶対の自信を持ち合わせた子どものような笑顔。万能感に似た全てを、余すことなく表情に貼り付ける。相手のプライドを粉々にへし折ってしまうその笑顔が僕に遺伝していると知ってからは、少し憎い。笑顔で友達を失うなんてスカトロより最悪だ。
「ぐっ。……ま、まあ、上手いやないの」
男は負けを認めたくないのか、ビールをグビッと飲み直し、狙いを僕に定めた。
「自分の先付けは確かに上手い。山菜の調理はさることながら、かかっとるコレが精子やとは思えんレベルや。せやけど、倅はどうやろな。自分みたく上手い精子シコれんかったらこの店も往生や」
確かに先付けを作ったのは父だが、仕上げにぶっかけたのは僕だ。というより、精通してからこの店の大半の料理にぶっかけているのは僕だ。ムッとしながらそう言ってやろうと思ったが、父があの笑顔で静止する。なるほど、見せつけてやれと。
自慢だが僕のイチモツはかなり大きい。料理以外に使うことはできないけれど、客に見せると皆喉を鳴らすほどには上手いザーメンをぶっかけることができる。
僕は割烹着からソレを取り出してゆっくりと擦る。
「うっ……なんちゅうデカさや」
「さ、どうします? お客さん。追いザーイきますか? それとも何か作りますか?」
「……自分、年幾つや」
「十五歳。もうすぐ高校生ですね」
「もうそれくらいになるのか」
「自分の子どもの歳くらい覚えとき。名前は?」
「荒野。聖液荒野」
「……ええわ、荒野、この店で一番のもんこさえてみぃ。三倍も歳離れたガキに舐められたまま終われるか」
僕は待っていましたと言わんばかりに笑うと、イチモツをぶら下げたまま厨房に戻る。
「なんて手際や……野菜、肉、全てが均等に切られてイってるっ」
「そりゃ当然ですよ。荒野が厨房に立ったのは、まだペニスの皮剥きもままならないガキの頃からですから」
「な、なんや今の。ボールにぶっかけよったで?」
「当然。食ザーってのはただかければ良いってもんではないんで」
「ザーメンの持つ旨味も栄養も余さず伝える。それが『お精子処 せいえき』の料理です」
コトリと男の前に皿を置く。湯気立つ円盤。お好み焼きである。
「なんや自分。ワシが関西弁使うとるからって粉もんかいな。こいつはフェラされたもんやで」
「喘ぎ声は、食べてからにしてください」
「ほな」
男は慣れた手つきでお好み焼きに卓上のソースをかける。薄く伸ばしてマヨネーズ、鰹節、青のりと順番に。そして、いざと切り分けようとするところで待ったをかける。かけるのはそれだけじゃない。
「お客さん、仕上げがまだですよ」
「うっ……それはいらんねんけど……。えぇいままよ。かけるならかけぇ! ここで引けるか」
僕の頬は痛いくらいに吊り上がっていた。シコシコと擦る竿は今か今かと爆発の時を待って、F1レーサー気分の緊張感が襲いくる。彼らも車内で擦っていたに違いない。発射の時を待っていたに違いない。
僕はゴーサインと同時にアクセルを全開にして、盛大にぶち撒けた。
襲いくる解放感と同時に、白の祝砲が弾け飛ぶ。
荘厳華麗。そう表現するに値する神々しい白い液体が空を駆け巡り男のお好み焼きに降りかかる。
「くっ……認めへん。こんなもんっ。せやけど、アカン。体が、鼻が、舌が、反応してまう!」
絶頂。抗えない舌の快楽。
僕は満足げに笑った。
「お粗相!」
食○のソーマで一番好きなキャラは美作昴です
もしかしたらいつか続き書くかもしれない




