金色のオモチャ箱
『さあさあ、よってらっしゃい、みてらっしゃい。籠目籠目のカプセル・トイ。万札入れればあら不思議。箱の中身は空っぽなのに、出てくる出てくる大きなカプセル。中には、おっこいつはすごい! クマのぬいぐるみだ! なになに? 背中のスイッチを押せば本物そっくりに!? うっそでぇいそんなわけあるかって、ややや! あぁこりゃたまげた……って、ぎゃぁ! かぁごめかごめの籠目次元研究所』
動画が終わり、次の動画へ行こうとする。何度見ても子供騙しの嘘くさい広告だとスマホの電源を落とした。
『カプセル・トイ』は異次元のオモチャ。何が出るかはお楽しみ。そんな売り文句とともに数週間前、東都に設置された『カプセル・トイ』。
始めは籠目次元研究所などという聞いたこともない怪しい研究所と、そのあからさまな虚偽広告に人々は無関心だった。
しかし、パイオニアたちは試しにと回し、その虚偽でも誇大でもない結果に大騒ぎした。自立する操り人形、モノを浮かせるシャボン玉。彼らの異次元のオモチャの報告動画が次々に出回り、よく出来たCGだと馬鹿にする者もいたが、無数に続く報告から多くの人は『カプセル・トイ』に興味を持ち始めた。
それはこの俺、金色遊もその一人だった。
東都は麹田区。そびえ立つビルの狭間に気圧された小さな白い建物。ここが籠目次元研究所なる場所らしい。
外観からは何の建物かはわからない綺麗な建物。しかし別次元から来たような異質な白は東都の往来にはまるで似つかわしくない。
中も頭が痛くなるほど白く、2階に通された俺は廊下に並べられた白い椅子に座り、スマホ片手にその番を今か今かと待っていた。
オモチャというものは子どもの娯楽だという考えの人間もいるだろう。だが、『カプセル・トイ』についてはその考えを捨てるべきだ。
アレはオモチャではない。オモチャの見た目をした『力』だ。オモチャには正しく異次元の能力があり、出てくるものは人それぞれ。きっと数年後にはどんなオモチャを持っているかで受験や就職、その人の価値が決まる未来が訪れるだろう。
「それでは皆さまどうぞお入りください」
椅子から立ち上がり、白く重厚な扉の中へと向かう。
部屋の中はやはり白く。ただ中央に無機質で場違いな一般的でよく見るカプセルトイが置かれている。だが普通のものと違うのは、俺の背丈よりもはるかに大きいということ。
「やあやあ、よくぞいらっしゃいました!」
そう元気に声をかけてきたのはカプセルトイの隣に佇む眼鏡をかけた白衣の男。白い部屋の光を反射するように頭部も輝きを放っている。
「私は当研究所の責任者、滝音です。どうぞどうぞよろしく」
差し出された右手に握手を返そうとする。が、すぐに引かれてしまい、右手の居場所をなくす。
「とまぁそんな事よりもカプセルですよねぇ。ええ、ええ、皆さんの考えていることは全てわかっているのです」
そう言って滝音はカプセルトイの説明に入る。まずはと指差した場所には数センチの長方形の窪みがあった。
「さてさて、まずは皆様のカードを読み取らせていただきます。使用料もそうですが、誰がいつどんな物質を手にしたか、記録せねばならんのです」
カードというのは国民番号カードのことである。こいつには持ち主のあらゆる情報が紐付けられており、もちろんクレジットカードにもなる。
ガチャの値段は十万円。ぼったくりにも思えるが、それでも現代の科学では到底追いつかないオモチャが手に入るのだ。安いものだろう。いや、もう追いついているのか?
そんなことを考えながら、滝音に促されるようにカードを嵌めれば、軽快な音楽が鳴った。正しく読み込めたのだろう。次にカプセルトイの中心部についたハンドルを回す。
ガタッ……ガガッガガッ……ゴトンッ!
カプセルトイ特有の一連の音が鳴り、童心を取り戻す。昔もお小遣いを使って消しゴムだかなんだかのカプセルトイを回した気がする。今にして思えば、なぜあんな物が欲しかったのか。
実家に帰ったら探してみようかという気にもなりつつ、自販機のように広い取り出し口から片手に収まりきらない大きなカプセルを取り出した。黒と透明のプラスチック……に似た素材。ワクワクした顔の滝音を他所に俺は渾身の力を込めてカプセルを開封した。
中に入っていたのは紐付きのコルクガン。木でできた筒に持ち手とトリガーのついた粗末なものだ。子どもですら喜ぶか怪しい。
「おやおやTgシリーズのA00569ですか。待ってください今取扱書を入手します」
俺がなんとも言えない顔をしている間に、滝音は備え付けられていたモニターに使い方を表示させた。日本語では無い何処かの国の言葉とコルクガンの絵。読めはしないが絵のお陰で内容はわかる。俺はその絵に従うようにコルクガンをセットした。といっても筒にコルクを詰めただけだが。
そうして、何も無い空間に向かってトリガーを引けば、ポンッと軽快な音ともにコルクは射出され、浮遊した。
「…………」
コルクは落ちず、1メートルくらいのタコ糸をピンと張り伸ばしていた。銃を動かせばコルクも斜線上に動く。触れど弛まない紐。これだけか……? 撃てば落ちないコルクガン。せめてもっと長さがあれば、あってもまあ大したことはなさそうだが……。
……にしても、これはどうすれば普通のコルクガンのように落ちるのか。
そう思った瞬間、紐は弛みコルクは重力に従ってプラプラと落ちた。考えていることが分かったかのような動き。……いや、さてはともう一度コルクを打った。
伸びきったコルクに今度は右に動くよう考える。すると磁石にでも引っ張られたように不自然に右へ動いた。口元が緩む。今度は左へ上へ蛇の如く。
「ははっ面白っ」
「おやおや気に入っていただけて良かった」
思ったよりもいいものだ。自分が想像した通りに動くコルクガン。
それが俺が手にしたオモチャだった。
能力バトルの起
能力もオモチャに限定できて面白いと思う
滝音はいらない




