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彼らは歌う自分のために  作者: 高月水都


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19/21

昔の話

 ひとりというのがどれだけ心細いか幼い時から知っていた。


 にぃ

 必死に呼び掛けても誰も答えてくれない。


 みぃ

 悲しくて悲しくて、それでも呼んでいれば誰かが答えてくれると願っていた。



 みぃぃぃ

 小さな子猫だった。


 動ける範囲も狭くて、このまま消えていく儚い命だった。


 みぃ

 くぅん

 だけど、たまたま見つけてしまったその存在は自分よりも大きいが同じように儚く消えていく命だった。


 大きいけど小さい。


 たまに吠えて来て噛もうとしてくる生き物と同じ。


 本来なら怖がる存在だったが、怖くなかった。

(大丈夫だよ)

 一緒にいるよ。

 そっと慰めるように小犬を舐める。


 拙い動作だった。

 大きな体を舐めるには時間も労力も掛かったけど、舐めて慰めてあげたかった。


 綺麗な子。

 怖くない子。


 ふと、思い出す。

 明るくて、暖かそうな世界から見えた光景。


 楽し気な子供の声だけが聞こえた。


 子供たちがふわふわなものにもたれて、みんなで同じものを見ている。声が聞こえる。


 見ているものが何か気になってそっと窓から覗いて見た。


 大きな生き物の絵。

 大きな生き物は小さい生き物を必死に守っている。


「するとドラゴン(りゅう)は一鳴きして、悪い奴らを追い出しました」

 人の言葉は分からない。だけど、リュウという言葉だけ耳に残っていた。


 この子は大きい子になる。だったら、きっとそんな名前が似合うだろう。


 にゃおん

 リューちゃん


 呼びかける。

 

 くうん

 小犬(リューちゃん)が応える。


 いや、言葉は通じていないからタイミングが良かっただけだろうけど、それが嬉しかった。


 ああ、生きたいな。


 この子と一緒に。

 この子が大きくなるのを見たいな。


 そんな小さな願い。

 そんな細やかな望み。


 だけど、その想いが子猫に生きる気力を与えた。









「忘れていたよ。リューちゃんはリューちゃんだったから。そんな意味だったのは」


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