勇者たちのランク
「この水晶は武器のランクを測れるものになります。手を翳して頂き皆さんの適応力を調べさせて頂きます」
この世界の測定器みたいなもんか。
最初にオタク系の小崎が水晶に手で触れた。
水晶が青色に光る。
おぉ、と声が上がった。
王様が微笑み、歓喜の声があがる。
「素質があるようじゃな」
水晶の周りには数人の異世界人。
彼らは何かを見極めんと目を光らせている。
計測は順番に進んでいく。
次に体育会系の石関という学生の番。
発光色は赤。
色で何か違うのだろうか?
「おぉ!? こ、この光量はっ!?」
ローブ男たちがどよめく。
最も強い光量。
「これは素晴らしいぞ」
王様もご満悦。
「よくわかんねーけどすげぇ結果らしいな!!」
石関という学生は興奮している。
「異世界も悪くねぇかもな! 仕方ねぇから、おれが勇者になってやらんでもねぇぜ~!?」
喜ぶ石関。
調子のいい男みたいだ。
しかし石関の天下は半日どころか、十分も続かなかった。
小山田が水晶に触れる。
「ぉ――おぉぉおおおお!? ば、馬鹿なぁぁああああ!? こんな、こんなことがぁっーーー!?」
迸る金色の光。
ピシッ
水晶にヒビが走った。
驚愕するローブ男たちの視線を一身に集めていた水晶が、
パリィンッ!
砕け散った。
「”鑑定晶の水晶”が……く、砕け散るなんてっ!」
冷や汗を垂らすローブ男。
小山田がサラッと聞く。
「え? 俺はよくわからないが………、今のって、なんかすごかったのか?」
満面の笑みの王様。
両手を打ち鳴らす。
「素晴らしいぞ。小山田殿! そなたは最高位のS級じゃぞ!」
S級。
なんかすごそうだ。
取り巻きらしき女子たちの目がキラキラ輝く。
「小山田くん、やっぱりすご~い……」
「洋くんは別の世界でも特別になれるんだね~」
「私を守ってぇ~っ」
やれやれと息をつく小山田。
「俺、自分が特別とか思ってねーし……普通だろ、こんなの」
石関が王様ににじり寄る。
「王様ぁ。お――おれは何級なんだよ!? 俺もランクが高いんだろ!?」
「イシゼキ殿はA級じゃ」
「Aの上は!?」
「S級です」
「トップの、一つ下か……」
歯噛みする石関。
「ちっ、しょうがねぇか。小山田には勝てねぇよな……」
王様の指示で、すぐさま代わりの水晶が運び込まれた。
飛び散った破片を兵士が掃除する。そして、測定が進む。
「な、なんだとーっ!? これは――」
次に驚愕の波を生んだのは、
中村海風。
銀光。
水晶が発した光が明滅している。
直後、
ボロ、ブワン
なんと、水晶が粉レベルにまで分解された。
粉塵が周囲に舞う。
「げほっ、ごほっ!」
咳き込むローブ男。
「ま、また水晶がっ!? ですがこんな反応は初めて見ますぞ、王様!?」
煙たい空気を手で払う片眼鏡の男。
「二人もS級がいるとは……今回の勇者たちは、格別に素晴らしいようです」
フルフル震える王様。
表情は大変なご満悦。
「普通S級は一度の召喚で一人いるかいないかなのに……これは過去最大の優れた召喚結果じゃ!」
王様が胸をはって両手を広げた。
恍惚の表情。
テンション上々な王様が手を突き出し、ビシッと促す。
三度、水晶が運び込まれる。
測定再開。
「さあでは、次の方!」
しかしその後は凡々とした結果が続いた。
比例して王様のコメントも凡コメント化していく。
そんな中、ついにやって来た。
俺――月島朝陽の番が。