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異世界召喚

「どこだここ……?」


 さっきまでコンビニにいたのに、気づいたら豪勢な大広間にいた。

周囲には、高校生。制服が白金高校のものばかりだ。突然のことだったから、高校生たちはアタフタしている。


「さっきまで学校だった筈なのに……何処だよ、此処は!?」

「何かのドッキリなのよね!?」

「一体、何がどうなってんだよ……」

「どうせコイツらはコスプレしてるだけじゃね?」

「そうだよね。きっと何処かにカメラで撮ってるだけだよね?」

「なぁ、そこのオッサン! 早く俺達を学校に戻せよっ!」

「そうだそうだ! こんなイタズラに付き合ってらんねぇんだよ!」


 とまあ、こんな感じだ。

 しかし改めて冷静になって考えてみると……僕がよく読むラノベと似たような状況な気がするんだよなぁ。

 例えばラノベ定番の異世界に召喚される”勇者召喚”とか、な。


「たったこれだけ、だと……?」


 頭に王冠を被ってでっぷりと太った偉そうな男が、これまた豪華な椅子にふんぞり返って座って険しい顔をしていた。

 周囲を見回すと、王様の他には片眼鏡をかけた細い男、あとは上質そうなローブを着ている魔導士風の男。他兵士数人。


 この場にいる全員が、俺たちを見つめていた。

 周囲にはコンビニも車もビルもない。

 さっきまで白金高校の生徒に絡まれていたのが十秒ほど前のこと。


 なんだかんだしゃべっている間、召喚した人たちはなんか揉めていた。


「何故これだけなのだ。二十人~三十人は一度に呼べるはずであろう」

「陛下……恐れながら、召喚陣が稼働するまで時間がかかってしまったせいかと思われます。それが原因で予定時間より遅く召喚がはじまったようでございます」


 片眼鏡の男が淡々と告げると、陛下と呼ばれた男はやっぱり王様のようで、頬杖をついたまま不満げなため息をついた。


「魔族の人数は測りしれぬ。やつらに太刀打ちするためには、数多の英雄を召喚するしかないという話であろう?」

「仰る通りでございます」

「それがたったこれだけでは」

「しかしながら陛下。英雄召喚の儀は、九割方最上級レベルを持って現れます。最上級レベルは、一騎当千……いや当万と呼べる存在。この人数とはいえ、かなりの戦力になるでしょう」


 ローブ男のオッサンが王様に尋ねた。


「陛下、どうなさいますか」

「呼んでしまった以上、やり直しは出来ぬ。……だな?」

「左様でございます」


 片眼鏡が相槌を打つと、王様らしき人が言った。


「――そこの者たち、よく聞くがよい!」


 王様が俺たちに話しかける。


「聞こえていた通りである。我々は、魔族との戦争に勝つため、英雄召喚の儀を行い、そなたらをこの世界へ呼び出した。……どうか我らに力を貸してほしい」

「まじかよ、勇者召喚! クラス転移ってやつじゃん!」

「戦争? 魔族? そんなこと、いきなり言われても……」


 まあ、そうだよな。学生たちの反応は当然だ。命を懸けて戦えっていきなり言われても、相当な覚悟が要る。

 これはゲームじゃなくてリアル。オートセーブもリトライもない。死んだらそれまでだ。

 一人の男子高校生が声を上げる。


「ちょっと待ってくれ!」


 金髪ピアスなのに、真面目そうな顔立ちの青年。


「そもそも、俺たちは勇者なんかじゃない! 普通の高校生だ! その、魔族とかいうやつと戦わせられるなんてごめんだ! 戦争なんて、そんな経験もない平凡な高校生が、急に魔族とか何だとか、受け入れられるわけがないだろ!」


 その男子学生の発言に、周囲の女子が憧憬の目で崇め奉る。


「小山田くん、性格もイケメンすぎる~」

「異世界に来ても頼りになりそう」

「結婚したーい」


 どうやら彼は女子から絶賛の人気があるみたいだ。

 続けて、片眼鏡の男がしゃべる。


「ごもっともな意見です。ただこの世界には、強力な武器といった勇者だけが扱える特別な武器があります。魔族が徘徊するこの世界で、その力は生きる助けとなるでしょう」


 王様が続く。


「英雄には、望む物を与えることにしておる。武器も道具も、食べ物も飲み物も金も異性も、望むがままじゃ!」

「豪華な食事だって」

「美人とかも好き放題かな」

「やっべぇ!! やったじゃん!」

「じゃやります!」


 早ぇよ

 ちゃんと考えないであっさり承諾して大丈夫か?


「ありがとう。そなたらが力を貸してくれれば、魔族全滅の日も近くなるであろう」


 俺まだイエスって言ってないのに巻き添え食っている!?

 ……まあ、いいか。どうやら武器もチート武器っぽいし。楽勝だろ。


「では勇者達よ。それぞれの名を聞こうかの」


 王様にそう言われ俺達は各々自己紹介をする。


「俺の名前は小山田洋 (オヤマダヨウ)。」


 身長は175cmくらい。爽やかイケメン。

 取り巻きの女子が複数いる。


「僕の名前は小崎雄馬(コザキユウマ)


 丸渕眼鏡に寝ぐせのついた髪。見た目通りオタク系だ。


「俺は石関平 (イシゼキタイラ)」


 力自慢の体育会気質っぽい。


「私の名前は中村海風(ナカムラウミカ)

 

 僕に話しかけてくれた女子高校生。

 黒髪。色白。超絶美女のお嬢様気質だ。


「私の名前は吉岡奏 (ヨシオカカナデ)」


 僕に絡んできた不良グループの一人。

 黒く焼けた肌に金髪という、少し古く感じるスタイルの不良娘。


「わっ、私の名前は小芝奈々 (コシバナナ)」


 童顔で妹気質の女の子だ。


「ぼっ、僕の名前は岸田卓也キシダタクヤ


 根暗で内気な感じの高校生だ。

 以下順番に学生たちが名前を言っていく。

 次は俺の番か。


「最後は僕だな、僕の名前は月島朝陽(ツキシマアサヒ)。年齢は三十五歳」

「えっ」


 場の空気が静まる。

 皆の目がこちらに向けられ、ヒソヒソ声がする。


『えっ、なんでおっさんがいるの?』

『誰かの親?』

『あんな奴学校にいた?』

『キモっ』


 などなど。辛辣な言葉が飛び交う。

 確かにこの中に三十五歳の独身男がいるなんておかしいだろう。

 できることなら自分だけも帰りたい。

 すると、王様がゴホンっと咳払いをした。


「皆の者の紹介は大体終わったようじゃな。では例の物を準備するのじゃ」

「「はっ」」


 完全に僕の存在はスルー。まぁ、慣れてるからいいけど。そっちの方がありがたいし。

 片眼鏡の男が返事をすると、台座と水晶を準備する。


 水晶は俺の腰上くらいの位置にあった。

 この水晶に手で順番に触れてほしい。

 僕たちはそう指示された。


 何か計測するそうだ。


「英雄たちよ。そなたらのステータスを開示し、我らに示してくれ」

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