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独身男のおっさん

 僕の名前は月島朝陽(ツキシマ・アサヒ)。小太りで、髪は荒れてぼさぼさ。情けない外見を整えようともしない、三十五歳の独身男性。


 職業はコンビニ店員。今日もパンを一切れだけ腹に掻き込み出勤。


 家は家賃三万円のボロアパート。僕の部屋は特に古い部屋で、隙間風や車の振動で部屋がガタガタと揺れ動く。でも、そんな家だからこそ風呂付きで三万という破格の家賃。バイト生活をしている僕にはありがたアパートだ。


 昼の十二時。


 昼になると、近所の高校の生徒が昼食を買いにくる。

 白金高校。僕の母校。

 レジ打ちをしていると、一人の女子学生が話しかけてくる。


「店員さん、お疲れなんですか?」

「はい? ええと、まあ。夜から働き続けていてますから」

「そうなんですか。大変ですね、頑張ってください!」


 女子高生に労ってもらえるのは、なかなかうれしいものだ。

 僕は頭を下げ、ありがとうございますとだけ伝える。


「もう、海風恥ずかしいよ。そういうのやめよう?」

「えぇ、なんでぇ?」

「だって、キモいじゃんあの店員。話しかけたら、こっちまで仲間みたいじゃん」

「ちょっと奈々ちゃん。言い過ぎだよ」


 労ってくれた女子高生は待っていた友達と合流し、そんなことを話してた。

 確かにキモイのは事実だからしょうがない。

 その後も大量のレジ打ちを続けて、気づけば十ニ時。

 同じバイトの大学生の子が話しかけてきた。


「あの、月島さん。店の前で学生がたむろってて。追い払ってもらえませんか? お客さんにクレームをつけられちゃったんで」

「あぁ……」


 僕は監視カメラの映像を確かめる。

 確かに、店外に四人組の学生が座り込んでいる。

 威圧感があるので、お客さんが不快に思うのも無理はない。

 こういう時のクレームも店に入り、店の責任になるから面倒だ。

 だが、対処しなくてはいけない。

 僕は覚悟する。


「あの、お客様。あまりお店の前で休憩なさるのはやめ頂けませんか?」


 僕は白金高校の生徒らしき四人組の学生に話しかる。


「あ? んだおっさんコラ。座ってるだけだろうが。文句あんのかコラ」

「店の前は座ってご休憩頂くための場所ではございませんので。ほかのお客様のご迷惑にもなりますから」

「あぁ? 誰が迷惑だコラ。ぶっ殺すぞ」

「テメェ調子こいてんじゃねえぞコラァ!」


 四人の学生のうち、三人の男が僕に向かって暴言を吐き、僕を取り囲んでくる。

 殺害予告されるのは始めての事じゃない。僕は冷静に対応する。


「申し訳ございません。こちらの場所は他のお客様も通ることがございますから。どうしても、座り込んでご休憩、というのはこちらとしても認めるのが難しくなってしまいまして」

「ゴタゴタうっせぞコラ!」


 男の一人が僕の胸ぐらを掴む。

 そんな時、最後の一人の声が上がる。


「――おっさんなんかイジメてんなよ、アンタら」


 白金高校の制服を着た、女の子。

 黒く焼けた肌に金髪という不良娘が言う。

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