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21話

 ──突如としてわたしの顔に襲い掛かる熱気。目の前が明るく真っ赤に染まっていました。

 手に持っていた魔本が勢いよく燃え上がっていたのです。


「……っ?!」


 静かに驚き、慌てて魔本を手放します。

 このままでは古本屋が火事になってしまうので、すぐさま真っ白なローブを脱ぎ、被せるようにして窒息鎮火させました。

 この服は特殊な耐熱耐火繊維で出来ているのでこれくらいの火であれば問題はありません。汚れてしまうのはブチ切れ案件ですが。


「ちょっと嬢ちゃん?! 大丈夫かい?!」

「……ええ、問題ありません」

「いやいや、とてもそうは見えやしないよ! 顔が青ざめてるし、息も荒いじゃないかい!」


 この古本屋の店主でしょう。腰の曲がった怪しげな老婆はわたしの身体を労ってくれます。

 なのでわたしは重ねて言いました。


「問題ありません。死ななかったので」


 老婆は確か「この本を開いたら死ぬ」みたいなことを言っていました。結果的にそうはならなかったので、やはり問題はありませんよね。

 正確には「この本を開いたら魂を吸われる」ですけど。


「そういう問題かい?! 確かに死んじゃいないけど、今にも死にそうだったよ!」

「そうですか。まぁ、そのときはそのときです」


 わたしの呆気ない反応に「ハァ~……?」となんとも形容しがたい呆れたような反応を示してくれました。


「そんなことより、先程の本はおいくらですか? 弁償します」


 軽い財布を取り出しながら伺うと、老婆はやはり呆れたような反応をして手と首を一緒に振りました。


「そんなことよりって……金ならいらないよ。危なっかしい本ってことは前から知ってたんだ、処分できて清々したってもんさ。死んだ人間処分するよりよっぽどマシだね」


 だったらどうして自分で捨てるなり燃やそうとはしなかったのでしょうか。

 触らぬ神に祟りなしと言いますから、それで正解だと思いますが。神ではなく悪魔ですけど。余計なことをして悪化することを恐れたのでしょう。

 老婆はニヤリと口角を上げて笑みを浮かべました。


「他を買ってくれるってんなら話は別だけどね」

「コッペパンは取り扱っていますか?」

「あるわけないだろ!」


 ちょっとボケたつもりだったんですけど、結構な勢いで怒られちゃいました。てへ。

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