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19話

 町中で暴れ回っている黒い服を着た人たちは、悪趣味なデザインのナイフを振るい、そのたびに人から噴き出す赤い噴水が空気を赤く染めていきます。


「だれ……なに……あのひとたち」


 わたしはお母様からはなにも聞いていません。教えてもらっていません。アレはわたしの知らない存在でした。

 ですが、知らなくても一目見ればわかります。この世に存在してはいけない部類の人間であると。

 またあの悲劇が繰り返されてしまう。今度はお父様やわたしの手ではなく、黒い服を着た人たちの手によって。


「みつかったらころされる……」


 間違いなく、血の海に沈む人たちの仲間入りを果たすでしょう。子どもは大人に太刀打ちできませんから。それはお父様に殺されてしまったときに経験済みです。

 このまま隠れてやり過ごすことができれば助かるでしょうか。このまま隠れ続けることができるでしょうか。


『ぐあああ?!?!』

『あなた!? きゃぁぁぁぁ?!』


 別の部屋からわたしのことを引き取ってくれた男性の悲鳴が反響してきました。間髪入れずに女性の悲鳴も。

 このままではすぐにこの部屋までやってきてしまうでしょう。

 わたしはクローゼットの中に身を潜めました。こんなところに隠れてもすぐに見つかってしまうのに、気が動転していたわたしはそんなことにも気づけませんでした。

 扉をわずかに開けて隙間から外の様子を窺います。


「人に救いを! 死の救済を!」


 黒い服を着た人が部屋に入ってきました。同じ言葉ばかりを繰り返しています。頭がおかしくなりそうです。

 そして真っ直ぐにわたしが隠れているクローゼットへ向かって歩いてきました。その手には子どもの身体を貫くくらいなら容易にできるであろう悪趣味なナイフが握られています。

 お父様にやられたときのように。わたしはこれからあのナイフでまたしても切り刻まれるのでしょう。


「…………」


 そのときわたしは思い出しました。

 ──わたしには対抗する手段があるではないか、と。

 記憶の奥底に封印して、今の今まで忘れていたこと。惨劇(さんげき)を目の当たりにして思い出しました。




 ──わたしには〝魔法〟という力があることを。

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