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18話

 ここからまた始まったのです。わたしの転落人生が。


 ──後悔しろ。


 わたしはすぐに理解しました。取り憑いていた悪魔が最後に残した言葉の意味を。

 わたしのそばにいる人が次々と死んでいくのです。まるで──呪いのように。

 この呪いのせいでいくつかの家をたらい回しにされました。これではあっという間に追い出されて、わたしの居場所が無くなってしまうことは子どもながら容易に想像がつきました。

 だからわたしは、心を閉ざす術を覚えました。笑顔を張り付けて愛想を浮かべ、相手のことは見ない。考えない。覚えない。関わらない。

 そうすることによって、他人が死ぬことを防げたのです。なぜか。

 これに早々に気づくことができたのは僥倖(ぎょうこう)でした。

 とはいえ──


「なんだか気味が悪いわ……」

「こら、そんなことを言ってはいけないよ」

「でも──」


 一目でわかる作られた表情など、出来の悪い人形のように薄気味悪かったのでしょう。わたしのことを善意半分、嫌々半分で引き取ってくれた家族からは二歩も三歩も心の距離が開いていました。

 わたしがこうして壁を作ることによって守られている命であると、この人たちは知る由もありませんから、致し方ないと諦めています。

 わたしが寂しい思いすることで、誰かの命が救われていると思えば多少は気も楽になりますから。


「──みない。かんがえない。おぼえない。かかわらない──みない。かんがえない。おぼえない。かかわらない」


 これがわたし自身を守り、周囲を守る呪文でした。こんなことを延々と呟いていたら、気味悪がられるのも当然でしたね。

 今いる家から追い出されないだけマシと思って、わたしは大人しく過ごしていました。


「けっきょく、こうなるんだな……」


 自分が置かれている状況を(かえり)みて、わたしの人生はずっとこのままなんだろうなと思いました。

 むしろ以前より悪化しているとさえ言えます。

 昔はお母様がいましたが、今は完全に独りだからです。


「だれかがしんじゃうよりはいいよね……ね、ママ」


 お母様はもともと体が弱い人でしたから、普通の人よりも他人を思いやる慈愛の心に溢れていました。わたしもそうあるようにと、誠心誠意、真心を込めて育ててくれました。

 わたしはそんなお母様の愛情を一心に受けて成長しましたから、お母様の努力と信頼を裏切りたくないのです。

 結局、そんな努力も水の泡となってしまうのですが。


『た、助けてくれぇ!!!』

「……え?」


 自分の部屋に引きこもっていたら、外から大きな声で助けを求める声が。

 それに続くように、別の場所から続々と悲鳴が響き渡ってきます。


「なにがおこってるの……?」


 こっそりと窓から外を覗き込んでみると、黒い服を着た人たちが町の人たちを次々と襲い、大量虐殺が行われていたのでした。

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