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14話

「────」


 目を開けたら、わたしの視界には知らない天井が映っていました。どうやら天国には天井というものがあるようです。雲の上に天国があるというのはやっぱりただのおとぎ話だったようです。わたしは賢いですから、嘘だってことにはとっくに気づいていましたけどね。

 いえ、もしかしたらここは地獄かもしれません。そのほうが納得できます。わたしが犯してしまった罪の大きさを考えれば地獄送りにされるのは当然ですから。


「せ、先生! 先生ー!!」

「……?」


 寝ぼけていたのかそんな益体(やくたい)もないことを考えながら天井をボケーっと見ていたら、突然女性の叫び声が聞こえてきて、ドタドタとどこかへ駆けていきました。

 よくよく周囲を確認してみれば、どこかの部屋のベッドで横になっているではありませんか。腕には針が刺さっていて、点滴が打たれています。どうやらここは診療所の一室のようで、治療を施されていたみたいです。

 つまり先程どこかへ駆けていった女性は看護婦で、わたしはまだ死んでいないようです。

 生きている。なにがあったのかよくわかりませんが、わたしは生きている。

 しばらくすると白衣を着た銀髪のおじさまが柔和な笑みを浮かべながらやってきました。


「おお、気がついたようだね。丸四日ほど眠っていたんだが、調子はどうだい? 話せそうかい?」


 脇に置いてある簡素な丸椅子に腰かけて、わたしの顔色を窺いながら問いました。

 調子は悪くはありませんが、話すにはまだ体が重くて億劫で、わたしが置かれている状況に困惑しているというのが正直なところです。

 すぐに返事をしないわたしに「ふむ」とお医者様は小さく頷きました。


「まぁ、無理に話してもらわなくても今は大丈夫だよ。落ち着いてからゆっくりと話を聞かせておくれ」


 そう言って身なりと姿勢を正し、わたしから話を聞くのを保留にしたお医者様は、軽く咳払いをして喉の調子を整えてから話し始めました。


「いきなりこんなことを言われても信じられないかもしれないが……どうか信じて聞いてほしい」


 お医者様は真剣な表情でゆっくりと言い聞かせてくれました。


「私は嘘が苦手というか嫌いなので、正直に話すことをどうか許してくれ。君を拾ったあの村だが……全滅した。君は唯一の生き残りなんだ」


 わたしはショックを──受けませんでした。村でなにが起こったのか知らないお医者様からすれば、わたしは惨劇に巻き込まれた哀れな女の子に見えるのでしょう。




 ……全滅した原因のほとんどは、わたしとも知らずに。

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