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13話

 それからの日々は、茫然自失としていましたし怒涛のように過ぎ去っていったのでよく覚えていません。

 ただ覚えているのは、絶望的なまでの罪悪感と、罪悪感からくる衝動に突き動かされて村に転がる大量の死体をひたすらに埋めていたこと。

 とんでもないことをやらかしてしまった自覚はありましたから、その証拠を隠そうとしたのです。悪戯がバレるのを恐れる子どものように。

 それに死体をそのままにしていたら、また魔人が生まれてしまうかもしれません。

 そんな言い訳を自分に言い聞かせて、ひたすらに死体を埋め続けました。


「はっ……はっ……」


 たった一人の子どもが背負うには重すぎる罪。そんな罪が少しでも軽くなるような気がして、贖罪(しょくざい)のつもりで動き続けました。

 空腹なんて忘れてひたすらに。頬がこけても目もくれず、目が窪んでもわからない。骨が浮いても気づかずに。

 穴を掘っては死体を埋め、死体を埋めては穴を掘り──

 もちろん幼い子どもができる仕事ではありません。すぐに体力の限界が訪れました。寒い季節であることも災いしました。肌を刺す冷気がわたしの少ない体力を奪っていきます。


「も……ダメ……」


 膝をつき、うつ伏せに倒れて、ただでさえ低くなっている体温が地面にどんどん奪われていきます。

 指先の感覚がありません。瞼すら重く感じて、目を閉じてしまいたくなります。この脱力感に身を預けてしまえば、どれだけ楽になれることでしょう。

 ──でも、それは許されない。許せない。


「ダメ……じゃない」


 震える声で叱咤して、体に力を込めます。声が震えているのは寒いからじゃない。魂が諦めるなと打ち震えているからだと自らに言い聞かせます。

 悪魔からこの体を取り返したことを後悔したくない。悪魔の言葉を認めたくない。

 ただそれだけの理由で意地になって、立ち上がり──


「ぁ……れ……?」


 動かない。動けない。なんで? どうして?

 魂だけが動いて、体が置き去りにされるような感覚。

 これが死ぬということなんだな、と本能的に理解しました。体を動かそうという気持ちを手放したとき、わたしの命は終わるのだと。

 まだ終わってない。まだ諦めたくない。

 わたしは必死に自分の体を動かそうとしました。ですが現実は人の努力を嘲笑います。


「…………」


 だんだんと意識すら薄れてきました。瞼を開けるだけでも辛くなってきました。

 死ぬ。いま死んだら次はない。もう目覚めることはない。

 助けて。誰か助けて。

 誰でもいい。命が助かるのならば悪党だっていい。悪魔でなければ誰でもいい。

 どうか、わたしに……償い切れない、ほどの……罪を償う機会を…………お与えくだs──

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