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11話

 ──返して? どうして? あんなに喜んでいたのに?


 わたしの中のわたしが語りかけてきました。

 確かに喜びました。嬉しかった。でもそれを感じていたのはわたしじゃない。あなたがわたしにそう感じさせていただけじゃないですか。


 ──でも幸せを感じていた。幸せだった。幸福に包まれていた。気持ちよかったでしょう?


 幸せでした。気持ちよかった。あなたのおかげで。でもそれはわたし自身が感じた気持ちじゃない。あなたがわたしにそう感じさせていただけじゃないですか。


 ──でもパパを殺してスッキリしたでしょう? 殺せてスカッとしたでしょう?


 スッキリしました。スカッとしました。願いが叶いました。でもそれはわたしが踏み出した一歩じゃない。あなたが背中を押して無理やり足を動かした。


 ──どうでした? 最高だったでしょう?


 最高で、最悪でした。他人の手で叶えられる自分の願いがこんなにも虚しいものだったんて知りませんでした。自分の手で願いを叶えられなかった悲しさがこんなにも辛いものだったなんて知りませんでした。


 ──もっとやってみたいでしょう? もっとやりたいでしょう?


 ええ、もっとやってみたいです。でももうやりたくありません。

 やるならば自分の手で。自分の意思で! あなたの手は、あなたの力は借りたくない!


 ──できるのですか? やれるのですか? お前に。


 必要とあらばやってみせましょう。必要でなければやりません。絶対に。

 あなたなんかに振り回せれてたまるものですか。


 ──…………。


 余りあるほどの意思の固さに、わたしの中のわたしは黙ってしまいました。いえ、わたしが黙らせました。

 この体はわたしのもの。この意思はわたしのもの。この心はわたしのもの。

 お母様を愛する気持ちも、お父様も憎む感情も、全てわたしのもの。

 誰かに奪われて、手に取られて、好きにされて、弄ばれて良いものではありません。


 ──奪ってやる。失わせてやる。お前から。


 改めて言いましょう。改めて願いましょう。

 出ていってください。わたしを返してください。

 さあ、今すぐにッ!

 強く強く願ったとき、わたしの体から黒いモヤが発生し、床をすり抜けて地面へと染み込んでいきました。




 ── 後 悔 し ろ 。




 そんな呪いの言葉を残しながら。

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