尊い日常
痛いの苦手な人は読まないでください!
私の夫は、お釈迦様の権化かと疑うほど、優しい。
まず、私が一日家にいて、家事を一切せずに夜を迎えても、怒ったことが一度もない。
「あなたは休むことが仕事なんだよ。」
そう言って、お風呂掃除も夜ご飯も、自分で用意して、片付けている。
私が病気になる前も、なった後も、このスタンスを貫いている。私に何かを求めたことがない。料理に関しては特にそうだ。
私はひどい貧血持ちなのだが、貧血になると、まず視界が欠ける。そのまま夜ごはん作りに着手して、スライサーで親指の爪を飛ばし、夜間救急病院に搬送されたことがある。
以来、夫は決して私に無理に料理をさせない。
朝は、私のお昼のお弁当を作ってから出勤する。
帰宅時には必ず連絡をくれる。
買ってきてほしいものがあれば、お店を回ってでも買ってきてくれる。
こんな夫がいてくれて、感謝しかない。早く元気になりたい。元気になって、たくさんの楽しいことを一緒にしていきたい。
だから、投薬治療も何もかも、絶対に頑張る。
昨日、私は夫と遊んだ。映画を見て、感動して、たくさん泣いた。それから一緒にクロスワードパズルをした。
レベルは、
簡単→普通→難しい→博士→ナイトメア
の順だった。レベルのネーミングセンス、謎である。
私は迷わずナイトメアに挑戦した。私のこの時の自信も、今となっては大きな謎である。
数十分後、私は夫にこう言った。
「私がアメリカ人なら、いま…
『Oh…shit…! 』
って言ってる…!! 」
まじでナイトメアには手も足も出なかった。
「これ、問題バグってる…?」
と追い討ちで聞いてみたほどだ。
普段感情を表に出さない、静かな夫が爆笑した瞬間だった。私が療養休暇に入ってから約2ヶ月、そういえば、夫が笑ったのを見たのは初めてだった。
最終的に、私に解けるレベルは『簡単』がやっとということが判明し、夫はさらに爆笑した。私おバカやん…と私も思ったが、夫が笑ってくれるのなら、もう何だってよかった。
というか、自分自身も、あの謎の自信なんだったんだと、おかしすぎて笑えた。自分も、病気で仕事を休むことになってから、声を上げて笑ったのは初めてだった。笑うとお腹が痛くなることを思い出した。
なんて尊い日常なんだろうと思った。