4. 妙案
(妙案とは一体何なのか それを今からご説明いたしましょ~う)
(チキチキ 音羽先生の世界一役に立たない授業~はっじまーるよー!!)
(イェーイ!!(幻聴))
(ヒューヒュー(妄想))
(まず!! 転生してから毎日鍛え上げたこの腹筋を使って体を立てま~す)
(よっこいしょっと)
(あっ いま年より臭いとか思ったそこのあなた!! お話がありますので後で職員室に来てください)
(それはさておき)
(次に壁に黒い糸で半円を沢山もたれかかっても大丈夫なくらい作りま~す)
(そして下から半円を潜っていってその中に体を通しま~す)
(これで体がある程度固定できたので後はグルグル回りながら糸を吐いていけば~)
(~グルグルグルグル~)
(はい!! 壁付け型半円黒繭の出来上がりぃ♪)
音羽先生の世界一役に立たない授業【完】
他のとは微妙に違うものの、無事に繭が完成した。いや本当に苦労した。あまり知性を感じない他の兄弟たちはあっさりと成功して私だけ失敗しまくったのは釈然としないものの、兎に角完成してよかった。危うく私だけ大人になれないところだった。片面が岩壁でクッション性に欠けているが進化さえ出来れば問題ない。そう思ったのだがある問題が生じた。進化の仕方が分からないのである。例えばポ〇モンならレベルアップした時に光に包まれて変形していたような気がするのだが, 繭が完成しても特に何も体に変化が生じていない。
(ぐぬぬ...一体どうすればいいんだ...)
このままでは進化も食事もできずに繭の中で可愛い幼虫のミイラが完成してしまう恐れがあるのである。私は必死に考えて考えて考え続けた。そしてレベルアップした時のことを思い出した。頭の中で謎の音声が響いたことを。
(あんなゲームチックなシステムが存在している以上、ステータスを見れたりする何かが存在していても良いはず...)
(とりあえず色々試してみよう!!)
諦めたらそこで試合終了だ。有名な漫画に出てくる使い勝手の良い名セリフである。ミイラになる心配をする前に何でもいいから思いついたことを片っ端から試すのだ。それがミイラ化回避への最短ルートなのである。だが手足がない以上出来ることは頭の中で念じることや体をねじることぐらいのものである。とりあえず頭の中で"ステータス"と念じてみる。しかし何も起こらなかった。それ以外にもそれっぽいワードを念じてみたり、体を動かしたりしてみたものの特に何も起きる様子はなかった。
(あーもう!!ステータスぐらい表示出来るようにしとけよクソゲーかよ!!)
頭をブンブン振りながら脳内で愚痴っていると突如
『ヒュリリン』
と聞きなれないシステム音的な何かが響いた。驚いて前をみるとウィンドウが表示されていた。もちろんディスプレイなんか存在しないので空中にである。
(これが噂のAR? いやでもゴーグルも何も付けていないのに何で空中に表示できるんだ?)
色々と突っ込みたい部分はあるものの、まずは進化が最重要課題なので一旦忘れることにして私はウィンドウを操作し始めた。表示されたウィンドウは非常にユーザビリティに富んでいて説明されなくても特に苦労せずに使いこなすことが出来た。現代っ子大勝利である。ステータスを選択すると各種能力値等が表示された。
【個体名】黒田音羽
【種族名】ブラック・アント・チャイルド
【レベル】2
【能力値】HP:100 MP:10 ATK:5 MATK:3 DEF:5 MDEF:4 SPD:1
【強化値】STR:+0 INT:+0 VIT:+0 AGI:+0 / Point:1
(めちゃめちゃRPGっぽい!!)
どこからどう見ても懐かしきRPGのステータス画面である。もし進化に関係するとすれば間違いなく【種族名】の項目だろう。私はとりあえず種族名の所をタップしてみた。すると画面が切り替わり樹形図のようなものが表示された。間違いなく進化先が表示されているのであろう。チャイルドからの進化先は一択しかないようで直線で結ばれていた。
【???】
/
【ブラック・アント・チャイルド】ー【ブラック・アント】ー【???】
\
【???】
試しに【ブラック・アント・チャイルド】をタップしてみると説明が表示された。
ブラック・アントの幼虫。
半透明の白い楕円形の体をしている。手足はなく凹凸も少ない。
基本的に一人では何もできないのでブラック・アントに世話されている。
進化先
ブラック・アント
(いや説明雑すぎだろ~!!)
と思ったが、もしこの世にいる生き物全てに説明を付けているのであれば致し方ないかもしれないな、と自作RPGを作った時の苦労を思い出して考えを改めた。続いて【ブラック・アント】をタップしてみると、やはり説明書きと共に【進化】の文字が予想通り存在した。早速タップしてみるが反応しない。よく見ると進化ボタンの下に何やら書いてある。どうやら進化には条件があるらしくそれをクリアしないと進化出来ないようである。
【進化条件:使用済強化値ポイント合計1】
どうやらステータスの画面にあった強化値というやつを割り振らないといけないらしい。本当ならよく考えて割り振らないといけないのだろうが、さっさと進化したいし、たったの1ポイントなのでよく考えずにSTRに振っておいた。攻撃力があって困るということはないと思うので無難な選択だろう。
(進化条件クリア~!! よっしゃー!早速進化じゃ~)
はじめてのおつかい ならぬ はじめての進化である。私はワクワクしながら進化のボタンを押した。