2. 転生
(ん? なんだ? ここは何処だ?)
真っ暗闇の中で私は目覚めた。周囲を何かに覆われているらしく上手く身動きがとれない。それに手足の感覚もない。落とし穴に落ちて致命傷を負って以降の記憶がないが, もしかして千切れでもしたのだろうか?そんな不安に駆られつつ必死に体をネジってもがいていると遠くから何かが近づいてくる足音がした。足音はドンドン近づいてくると私の近くでストップした。逃げ出したくても身動きすら取れない今の私にはどうしようもない。ジャキジャキと何かを切り裂く音が近くで聞こえる。ハサミを耳元で使われているような感覚でちょっと怖かった。暫く恐怖に耐えていると外から光が差し込んできた。外に黒いハサミの先端のようなものが見える。どうやらジャキジャキと音を立てて切り裂かれていたのは私の周りを覆っていた何かだったようである。
(何かよくわかんないけど折角穴が空いたんだし脱出しよう!)
そう思って体をねっじったその時, 黒いハサミのような何かが中まで入り込んで来て私に迫ってきた。
(ギャー 斬り殺されるー)
迫りくる刃から逃れようと必死に体をねじってみるも手も足もない体では逃げることはできない。私は目をギュッと閉じて切断されるその時を待った。
(あれ? 死んでない?)
黒い刃は私のことを切断せずに両側からがっちりとホールドしていた。どうやら私を切り裂くことが目的だったわけではないようだ。
(とりあえず助かったぁ~)
そう安堵したのも束の間, 私は黒い刃によって持ち上げられ外に出されたのだった。
周りを見渡すとゴツゴツとした岩に覆われていた。どうやら洞窟のようである。所々に光るコケのようなものが生えており, それが光源になっているようだった。久しぶりの外の世界だったがあまり開放的な場所ではなかったのが残念だった。続いて私を挟んで運んでいる黒い刃の正体を見ようと思って体を折り曲げた。腹筋には割と自信があったのだが体が弱っているのか上半身を起こすのに結構苦労した。体を起こすと黒光りする謎の生き物が目に飛び込んできた。その生き物は頭に2本の折れ曲がった棒が突き刺さっており, 私をつかんでいる刃はどうやら口であるらしかった。足は6本生えており, 体は3つに分かれていた。
(!?!?!?)
私はこの生き物に心当たりがあった。そう"アリ"である。人間よりもサイズが大きいアリなど聞いたこともないがこの姿は間違いなくアリそのものである。しかしそうなってくると1つの疑問が生じてくる。一体何故このアリは私を咥えて何処かへ運んでいるのかということである。だが, 私は薄々感づいていた。アリが咥えて運んでいくものなど餌ともう一つぐらいしか私は知らない。私は恐る恐る自分の体へ視線を向けた。
(あぁ.. やっぱり...)
白い半透明のブニブニしたものが視界に入ってくる。それはどう見てもアリの幼虫の下半身だった。どうやら私はアリに転生してしまったらしい。




