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アリに転生ってそんなのあり?  作者: 神無木かなで
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1. プロローグ

【プロローグ】


この世界は平和だった。

シロップに浸したパンのように甘くて夢のような平和な世界を人々は満喫していた。

かつては魔族との戦争に明け暮れていたこともあったが, それも今となっては昔の話。

人々の記憶からかつての戦争の記憶はすっかり消え去り, 平和ボケしていた。

魔王が倒されて以降は地上に強い魔物が現れることもなくなったため, それに伴い剣技や魔法の数々も失われつつあった。


しかし, そんな平和な世界も長くは続かなかった。魔族という外敵が居なくなってしまったせいで, 今度は人間同士が対立し始めたからである。

かつての戦争の際に対魔王を目的に作られた評議会が戦後も存続し各国の利害調整を行っていたが, それでも少しずつ足並みが乱れつつあった。


これはそんな世界の物語である。


**************************************************************************************************************************************


私は黒田音羽。ほんのちょっとだけ変わった趣味がある, 至って普通の女子大生である。

変わった趣味と言ってもストレス発散に処刑動画のようなグロイものを見るのが好きなだけである。

至って普通の女子大生だと自分の中で自負していた。

昨日, 前期最後の試験が終わり私は夏休み初日を迎えていた。

「う~ん 暇だぁ 何もすることがな~い」

そう, 私は困っていた。折角の夏休みにもかかわらず, バイトもしていなければコミュ障なので当然の如く遊びに誘ってくれる友人も居ない私には

やることが特に無いのだ。

暇が売れたら一儲けできそうなぐらいには暇だったので, とりあえず適当にアニメでも見みて暇をつぶすことにした。

ボーっとタブレットを眺めていると話が進み, 修学旅行のシーンになった。少女たちが千本鳥居を潜って山頂まで登っていく。

それを見ていたら何故か唐突に山に登りたい衝動が, 私の中を駆け巡った。

恐らくは約4カ月部屋に引きこもって毎日パソコンとにらめっこしながらプログラムを書いたり, レポートを書いたりしていた反動であろう。

体が自然を求めているのである。

「よし! 山に登ろう」

思い立ったが吉日である。私は早速準備を始めた。


疲れた!!

大学に入学して以降, ろくに運動もしていない人間に山登りは流石にきつ過ぎた。

そして飽きた!!

最初こそ久しぶりに感じる自然が心地よかったが, 登っているのは観光地でも何でもない近所の山である。

ろくに整備もされていないので登りにくいし, 景色も良くない。要するに何もないのである。

なんだかんだ山の中腹辺りまで登ってしまったのでここまで来て引き返すのはもったいないと脳内のもったいないばあさんが叫んでいる。

ここまで来たら頂上からの眺めを拝みたい気持ちもあるので私はそのまま突き進むことにした。


しばらく登っていると地面にアリの行列が出来ているのを発見した。登山に飽きていた私は行列を辿っていきたい衝動に駆られそのまま今まで登ってきていた道を外れ, アリを追いかけることにした。また持病の悪癖が発動してしまったのだった。

アリの行列はとんでもなく長かった。今までの人生で見た中で1番かもしれない。そんなことを思いながら右足を踏み出した瞬間

私の背中をツーっと冷汗が流れ落ちていく。何故なら無かったのである。本来足の裏に感じるはずの大地の感触が。

偶然にも穴を木の皮が塞ぎ, 木の皮の上に落ち葉が重なり天然の落とし穴が出来てしまっていたのである。なんとか壁に掴まろうと必死に手を伸ばすも

奮戦むなしく私の体は悲鳴と共に暗い穴の中に吸い込まれていったのだった。



痛い...

穴は随分と深かったようで叩きつけられた衝撃で右腕が折れているようだ。更に運の悪いことに落下した位置に尖った岩が突き出ていて, それに思いっきり腹部を貫かれてしまった。絶体絶命である。ふと目の前の地面を見てみるを瀕死の小さな黒いアリがピクピクしながら必死にもがいていた。私の巻き添えで落ちてきてしまったのだろうか。だとしたら私以上に運のない奴かもしれない。喉の奥から血が逆流してくるのを感じる。だんだんと意識が朦朧としてきて目の前の景色が遠くなっていく。

落とし穴の入口から差し込む陽光に照らされる鮮血で真っ赤に染まった自分の手はとても美しかった。


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