9.青天の霹靂
おはこんにちばんは。・・・寒いですね。
(ネタがない芸人かよ)
「何をされているんでしょうか?」
「何をしている、と言われましても・・・私たちの見たことを問うているだけです。」
「ふーん、何のことを?」
雪兎は、しどろもどろになっているお嬢様方の説明を聞いていた。途中から、『春野さんがいけないの、』とか、『何で春野さんが、』という声が聞き取れた。ただ、私はそれよりも、さっきの雪兎の声が気になっていた。私の前では常に明るく、お茶目なことを言う人が、こんなにも冷たい声が出せるのか、と。それに、昨日言っていたことを本当に実行してくれているのか、と。驚いていた。
「ねえ、すみれ。」
いきなり名前で呼ばれて、とても驚いた。ただ、私以上に、その一言でクラスメート達が固まった。
「何?」
雪兎が近付いてきたから、小声で応じた。
「昨日のこと、言ってもいい?」
雪兎も小声だ。私は、恥ずかしいと思いながらも、雪兎にうなずいた。だって、その目が子犬みたいに覗きこんできたから。
「さて、今、僕とすみれが一緒に帰ったからどうだとかいうのを聞いたんだけど。」
雪兎はいったん、そこで言葉を区切った。もちろん、あの冷たい声である。
「僕とすみれは付き合ってるんだよ? それなのに、すみれはダメだ、僕に相応しくないというのかい?」
――沈黙――
教室にはそれしかなかった。誰も動かない。誰もしゃべらない。すみれは、これが雪兎の、次期生徒会長と呼ばれる彼の本性か、と少し驚き、少しおかしくなった。だっていつもの彼と、あまりにも違うから。
「ふふっ。」
思わず笑ってしまった。みんなの視線が突き刺さる。でも、
「そうですね。 雪兎と私は付き合っていますね。 でももちろん、雪兎は雪兎、今までと変わらないと思いますよ。 まあ、多少おしゃべりの内容は変わるかもしれませんが。 さてと、そろそろ時間です。 席に着きませんか?」
私の言葉に、ハッとしたように皆さんが席に着く中、雪兎は明るい笑顔で、パチンっとウィンクをした。それがまた可愛いと思うのは、すみれの心の内に秘めておこう。
「おや、今日は静かですね。」
先生が入ってきた。いつも通りの時間が流れる。授業の間の休み時間も、おしゃべりの声はいつもより些か小さかった。
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――昼休み――
「あのっ・・・!」
いつものように読書をしていると、女の子が一人、机の前に来た。確か・・・上木さん。小柄で、チワワみたいなふわふわした雰囲気の人だ。
「あの・・・本当にごめんなさいっ!」
「何が?」
思わず素で言ってしまった。私は素で話すと怖いからと、丁寧語を心掛けていたのに・・・。
「あの、えっと、その・・・。 御守り、ごめんなさい。」
「え?」
「西寺さんに頼まれて御守り取ったの、私なんです。 本当にごめんなさい。 きっと大事なものだったのに。 だから・・・だから、お返しします! 本当にすいませんでした!」
西寺さんはこのクラスのリーダー格・お嬢様である。そして私は、深く頭を下げる上木さんを見て一言。
「いいですよ。」
「ふぇ?」
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