12.すみれと御三方の邂逅1
水雫月の新作の準備で更新が二か月も止まってしまい、大変申し訳ありませんでした。
春風もこの作品を完結させたので、更新かんばります。
「何、緊張してんの。 別に怖い用事じゃないし、リラックスだよ。」
ぽんっと頭に手を置かれた。ふっと力が抜ける。覚えていたのか?いや、でも今はただ恥ずかしい。放課後で静かだと言っても、まだ何グループかは教室にいるのだ。そのうちの一つがこっちに近づいてきた。彼らは比較的、すみれに友好的だった気がする。確か、温田君、尾谷君、矢橋君だっただろうか。雪兎の友達だったはず。そして、カーストの上位層の人たち。
「雪兎、遅いよ。 あぁ春野さん、こんにちは。 温田璃来です。」
「まさか、雪兎が手を握るとは、うらやましいな。 尾谷泰輝といいます。 よろしく。」
「雪兎のクセに・・・。 いや、怖がらせてしまいました? 矢橋儚人、こいつらの幼なじみです。」
「ようやく春野さんと、」
「雪兎について話せるので、」
「とても嬉しいんですよ。」
「ちょ、ちょっと待って。 雪兎、どういうこと? 用事って何?」
「ええっと、用事はこの三人が聞きたいことがあるって言うので。 いや、ごめん。 嫌だったら帰ってもいいんだけど。」
そんな子犬のような顔を向けられて、帰れるわけがない。というか、しどろもどろになりながら謝る雪兎と笑顔の三人。状況がうまく呑み込めない。とりあえず整理してみよう。この御三方は私に聞きたいことがあって、そのために雪兎に私を呼び出させた。で、今に至る。よし、理解できた。聞きたいことっていうのは、朝の大告白大会のことだろうか。・・・ん?ちょっと待った。ここまで来て私、まだ自己紹介をしていない。相手がすでに知っていたとしても、あいさつは礼儀というもの。そしてこの沈黙も破りたい。
「あいさつが遅れてしまい、申し訳ございません。 ご存じとは思いますが、春野すみれです。 今日は、朝のことの説明をすればよろしいですか?」
―――――沈黙。
なぜ?えっ、間違えた?それともコミュ障が全開だった?笑顔は保ったつもりだけど。
「ふふっ、はははは!」
「おもしろいし、優しいんですね。」
「クソっ、なんで雪兎がこのような方を。」
それぞれの感想を言う三人と、ため息をつく雪兎。三人は分かるけど、雪兎はどうした?
「えっと。」
「いやいや、驚きました。 さすがですね。 でも、朝のことは雪兎からぎっちり搾り取ってあるので。」
「聞きたいのはその前。」
「誰があなたの御守りを盗ったかだ。 盗みにかかわったヤツ、全員殺す。」
「あーもう、三人ともストップ。 特に儚人。 殺すとか物騒なことをすみれの前で言わないで!」
私は、雪兎は御守りのことまで話してたの、(というか、すみれの前でって・・・え?)と呆気にとられ、三人は雪兎の大声でポカーンとしている。
―――――溺愛。
溜め息の後の第一声がこれである。彼ら的にこの一言であろう。ここまでくる間の会話も、席がそう遠くはないから聞かれてただろうし。これ以上ここにいると私の精神的ダメージが・・・っ!すみれは耳まで赤かった顔を何とか元に戻し・・・
「皆さんっ場所を・・・場所を変えましょうっ!」
こう絞り出すように叫んだ。
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