1.私たちの始まりの物語
初めまして。春風すみです。「伊吹」をこれから更新していこうと思いますのでよろしくお願いいたします。
「ないっ、どうしてっ!?」
春野すみれは、一人叫んでいた。学校の裏の神社で、いつものように一人放課後を過ごそうとしていたのだが・・・・・・
「おばあちゃんのお守りがっ!なんで!?」
今は亡き祖母からもらったお守りが無い。いつもかばんの中につけていたのに・・・。あのお守りは、すみれが中学校を受験するときに作ってもらった、大切な宝物だった。
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すみれは中学三年生。成績は常にトップ。また、運動もそこそこでき、先生からの信頼も厚い。小学校のころから学級委員や生徒会の役員などを務めてきた、まさに秀才である。
そんな彼女は、幼なじみも認めるほどの人見知りで、引っ込み思案。よって、クラスの中では空気のように身を潜め、大好きな読書をしている。
その彼女の幼なじみというのが僕、霜鶴雪兎。すみれと同じ中学三年生で、同じクラス。彼女がいつも一人でこの神社に来ていることを、僕は知っている。・・・ストーカー?そんなわけないじゃん笑。なぜ知っているかって?そりゃあもちろん、この神社のことが僕たちは大好きだったから。まぁ、彼女は気付いていないだろうが。
彼女は中学一年生まで彼女の祖母・梅さんと暮らしていた。しかし、梅さんが亡くなってから、彼女は一人暮らしをしている。その梅さんが遺したお守りを、彼女はそれはそれは大切にしていた。
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きっとかばんの中にあるだろう。いや、無いと困る、大変だ。すみれはかばんや服のポケットを探し始めた。山に斜陽が隠れ始めたころ、すみれは泣き出しそうになっていた。どこをどう探してもお守りがないのだ。こんなとき友達がいたら、探すのを手伝ってくれるんだろうなぁ・・・。すみれは昔、一番の友達だったある人を思い出していた。「雪兎」。ゆきうさぎと書いて、ゆきとと読む。雪兎は明るくて、落ち込みやすい私のことをいつも励ましてくれていた。中学校へあがるまでは。
中学校に入ると、雪兎は持ち前の明るさと社交性で、どんどん友人を作っていった。逆に、私は今までと違う空気感に圧倒され、おろおろしているうちに雪兎までもが遠い人となってしまったのである。彼がいたら・・・と、何度思ったことか。
「すみれ?大丈夫?」
ほら、こんなにも優しい言葉を、彼の明るい声を想像してしまう。もう、ここに来ることはないのに。
「すみれ、ねぇ、すみれ!」
「ぅえっ!?」
声に驚いて振り向くと、そこに雪兎がいた。おかしい、幻覚だろうか。雪兎はこの時間、クラブ活動でサッカーをしているか、塾に行っているはずなのに。
(・・・なんで?)
「なんで?なんでここに?」
気付いたら声に出ていた。恥ずかしい。反射的にごめん、と言おうとしたけど・・・
「何でって、うーん・・・」
雪兎が悩んでいる。というか、それ以前に、普通に会話をしている。
「何でっていったら・・・それは、すみれが心配だったから、かな?」
「心配?」
「だっていつもこの神社に来てるでしょう?クラブも遊びも断ってさ。」
気付いていたの?あんなに遠くなってしまったのに?私のことなんて見ていないと思っていた。
「で?お守りがないんでしょ?僕もこの神社を探したけど、無かったよ。」
「探してくれたの?」
ダメだ、頭の中にはてなマークしか浮かばない。本当に、昔に戻ったみたいだ。
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