四話 守りたい
バートンとの話し合いから三日経った今、俺は王都アグネシアのギルドハウスで昼食を食べていた、
「なあ、聞いたかAクラスのダンジョンが王都南門から出て約二キロのところに出現したらしいぞ」
あの後、王宮から調査団がどこにダンジョンが出現したか調査したらしい、その調査内容によるとダンジョン付近にはAクラスの魔物が群がっており、侵入することが最初の関門となっているらしい、
「それにしても、Aクラスの冒険者は多いな」
ダンジョン攻略のクエストが出でからというもの色んなAクラスのギルドがクエストを受注しており、少なくとも三~四パーティーはもうダンジョンに潜っているそうだ、
「みんな!聞いてくれ!僕達三日月の使者もAクラスダンジョンの攻略に向かう、もし攻略することが出来たらみんなで祝杯を挙げよう!!」
高々に発言をした冒険者ドレット・ディクスは他のパーティーメンバーと共にギルドハウスを去っていった、
「あいつら…生きて帰ってこれるのか?」
「さぁな、でももし攻略して帰ってきたら俺もあのギルドに加入したいぜ」
「おまえBクラスだろ?相手にしてもらえねーよ」
「やっぱそうかな」
このダンジョン攻略はAクラス冒険者以上しか受注出来ず、Aクラス未満の冒険者達は見送ることしか出来ない、
「くそー俺ももっとレベルとスキル上げてAクラスになりてぇなー」
「それはそうと今回のダンジョン、どんな宝が待ってるんだろうな」
「Aクラスなんだから宝具か神器クラスの物じゃねーか?」
「いいなぁ、俺も神器とか所有したいぜ」
そんな冒険者の会話を聞きながら食事を終えると、
「やあ、漆黒の剣士さん」
高貴な立ち振る舞いと豪華な鎧を身に着けた金髪の騎士が近づいて来た、
「これはこれは、王宮騎士団の団長様が何の用でこんな所へ?」
「要件は分かっているはずだよ?レイ・テオドール」
「バートンから何も聞いてないのか?」
「彼からは聞いてるさ、今僕がここにいるのは君にもダンジョン攻略に向かって欲しい事を言いに来たのさ」
カーティスが俺のテーブルの正面に座り腕を組む、
「君の望む報酬を払おう、何が良い?」
「俺が望むのはお前が俺の視界から消える事だな」
俺も腕を組みカーティスを睨む、
「それは難しいな、君がダンジョンに行ってくれれば視界から消えるかもね」
「嫌なら力ずくで消しても良いんだが?」
「君が言うと冗談に聞こえないな、それに君と対等に戦えるのは元ギルドのパーティーメンバーぐらいだろ?僕の全力でも君には傷一つつけることは出来ないよ」
「そうだろうな、それで?なぜ勝てない相手に頼み事をする?」
「救って欲しいからだ、Aクラス冒険者も、この王都も」
「なぜそこまでする?」
「僕はこの王都で生まれ、この王都で育った、この王都を守りたいと思うのは当然の事だと思う」
「ならお前が攻略に行けば良いだろ、バートンも連れて」
「それが出来たらそうしているさ…でも無理なんだ王宮の防衛を強化しないといけない…僕は騎士団の団長だからみんなに迷惑をかけるわけにはいかないんだ…虫が良いとは思っているけど君にしか頼れないんだ…」
カーティスは頭を下げる、
「ダンジョンを攻略してくれ」
俺は席を立ちギルドハウスを出ようとした、すると受付嬢のセーナ・ウィリスがクエストの紙を持ってきた、
「救える命は救いましょう、あなたなら出来るはずです」
カーティスも再び頭を下げる、俺はため息をつきながら紙を受け取る、
「報酬は後でしっかり貰うぞ」
俺はしぶしぶギルドハウスを後にした。