一話 冒険者レイ・テオドール
―小さい頃、俺は母親に読んでもらった絵本の中に登場する誰にも負けない世界最強の剣士に憧れた。そして、世界最強の剣士になることが俺の夢だった―
俺―レイ・テオドール(21)は今、王都アグネシアの城門を抜けて一キロ離れた森林にクエストを達成するための素材を集めに来ていた。
「ふぅ、まぁこんなもんで十分か…」
今回俺が集めていた素材はヒカリタケとネンジュソウだ、この二つは錬金すれば上級の回復薬になる。
その分、こいつらが生えている所は少々面倒くさい場所ではあるが…
「さて、依頼分の量と俺が個人で使うように分けて…と」
俺が素材を仕分けた直後、
「グギャァァァ!!」
激しい雄叫びが森林中に響きまわった、と同時に森林上空を真っ赤な竜が羽ばたいて行った。
俺はすぐに木に登り羽ばたく竜を目視した、
「今のは…レッドドラゴン?なんでこの大陸に…しかも王都に向かって飛んで行ってるな…」
俺は木から飛び降り王都の方へ向かった。
―王都アグネシア城壁
「隊長!東の上空よりレッドドラゴンが接近しています!!」
「何故…この大陸にレッドドラゴンが…」
「隊長!まずいです!このままあれが突っ込んできたら…」
「落ち着け!皆慌てるな!我々は時間を稼げばよい、魔法部隊!一斉射撃構え!!」
王国軍第一部隊長バートン・ダグラスが部下達に命令を飛ばす。
「放てぇ!!!」
バートンの号令によりレッドドラゴンに向かって一斉に魔法が放たれた、
「グルガアァァァァ!!」
放たれた魔法がレッドドラゴンに当たる直前、レッドドラゴンの口から炎が吐かれた、
「隊長駄目です!!奴の炎によって魔法が搔き消されてしまいます!」
「くっ、それでも魔法で牽制するしかない!引き続き魔法を放て!!」
「了解!!」
引き続き魔法を放ち続けるが、レッドドラゴンの炎により魔法はことごとく掻き消されていった次の瞬間、
「グゥゥ、グガァァ!!!」
レッドドラゴンが速度を上げて突っ込んできた、
「くっ、仕方ない、皆はここから直ちに離れよ!」
「隊長?いったい何をする気ですか!」
「俺がここで奴を食い止める…」
バートンは腰から剣を抜き構える、
「持って十五分…いや、十分が限界だ…その間に出来るだけ王宮の守りを強固にしろ!!」
「隊長!!」
「行け!!時間がもったいない!!」
レッドドラゴンがバートンの前に着た瞬間、レッドドラゴンが切り刻まれた、
「その必要はない」
バートンの横にレイが立っていた、
「レイ!!」
「結構ギリギリだったな」
「お前…いつ来たんだ?」
「ついさっき」
「いつレッドドラゴンを切った?」
「ついさっき」
「太刀筋が見えなかったぞ!」
「それはあんたの目が悪いから」
「くっ…なにはともあれ助かったぞ」
「なら報酬は後でギルドの俺の口座に振り込んどいてくれ」
「は?」
「俺は冒険者だぞ?」
「しかし、これは王都の危機だったかもしれないんだぞ!!」
「なら尚更報酬を貰わんとな、なんせ王都を救ってやったんだからな」
「…」
「レッドドラゴン討伐、最低でも金貨五枚はくだらないな」
「はぁ~分かった、一応国王陛下に報告し、その報酬が払えるか検討しよう」
「無事報酬が支払われている事を願ってる」
「なぁレイ、前から言ってはいるが王宮騎士団か王国軍に入らないか?」
「…俺は、冒険者のままで良い」
「しかしお前が王宮騎士団や王国軍に入れば地位や名声、更には金だって…」
「じゃあな、バートン」
俺は手を振り城壁から飛び降りた、
「…隊長、あの冒険者はいったい何者ですか?レッドドラゴンは最低でもAランクの冒険者五人でやっと討伐出来るか出来ないかの魔物ですよ?それをあんな一瞬でなんて…」
「あいつは…特別なんだ」
「どういうことですか?」
「あいつの元いたギルドの名前は『蒼穹を歩む者達』だ」
「!!あの伝説の…」
「そうだ、そしてあいつは…SSランクの冒険者だ」
「そんな人が…こんなところにいるなんて…」
「まぁ、知らないのも無理はないギルドは二年で解散、メンバーもバラバラになりごくわずかな人しかこの事は知らないからな」
「そうだったんですね…」
「さぁ!!そんなことよりも後始末だ!俺は王宮に今回の事を報告してくる、ここは皆に任せるぞ」
「了解!!」
早々とバートンは王宮へ報告をしに向かった。