第3話
…………えー名残惜しい所ですが、これにて私校長の話を終わらせて頂きたく思います。」
やっと終わったようだな、校長の話。
お約束のように頭はカッパそしてクソ長い話、1時間弱は話していた。
俺は当然開始10分と経たずに別世界へと落ちた。
周りも新入生以外は夢の世界か友達とくっちゃべってる。
新入生は頭に入ってるかはともかく静かに聞いていたらしい。
えらいな、うん。
まぁ俺もぱっと見はその仲間だが。
校長と入れ替わりに中央に立ったのはスタイルが恐ろしいくらい整ってる若い女性。
軽くウェーブのかかった長くて艶のある黒髪、服は白いワイシャツに黒のスラックスと言うなんとも言えない地味な格好をしていた。
肌は真っ白で瞳は琥珀色、なかなか美しい。
この世界の人間ならそこそこ珍しいんじゃないのか?
まぁ人間ではないけどな、パッと見人間。
上手く隠してるな。
俺がそんなくだらない事を考えているうちに喋り出した。
「私は学園長を勤めております、パステラ・ベアリアと申します。この度は我ミラージュ学園に入学して頂きまして教師一同たいへん嬉しく思います、さて堅苦しい話はさて置き。皆様お待ちかねのクラス編成の発表です。」
ほう、学園長さんだったのか。
ニコニコ笑ってはいるがなかなかの強者だな。
「新入生については此方の判断で決めさせて頂いた個々のレベルを元に各クラスほぼ平等となるよう選抜致しました。在校生については教師同士の話合いなどを行った点を除けば新入生と同じです。」
まぁ俺はシロと同じであれば良い、そこは運が良いからな俺が望めばその通りになる。
そしてシロとヤワナは同じだろう。あとはどうでも良い。
「今から新入生のみ一斉に転移を行います。在校生は前担任等に学年別に染色されている紙を貰い魔力を流し表示された指示に従って下さい。」
学園長さんは言い終わると此方へ歩みを進めてくる。
「えー転移を経験した事ない人はいるかしら、居たら迷子になると厄介なので個別で行います。経験ある方はご起立お願いします、あるけど不安だと言う方は着席したままでお願いします」
そうして立ったのは5分の4、俺は勿論座ったまんま。
シロ達に目を向けて見るとこっちをチラチラ見ながらも2人とも立っていた。
ま、俺には言っちまったもんなギルド所属者だって。
俺が立たないのを不思議そうに見ている。
「えーとじゃあとりあえず一斉転移を行います。」
学園長さんは下に描かれている魔法陣に手を触れ何かブツブツ言い線が光ったかと思うと一気に立っていた奴等が消えた。
なかなか壮観な景色だ、在校生の方もすぐいなくなり学園長さんが俺らを一ヶ所に集めた。そしてにっこりと話し始める。
「今ここにいるあなた方は落ちこぼれです、はっきり言って我学園で最初足を引っ張る存在になると思われます。この中の一部は不安なだけという人もいるでしょう、しかしそれも足を引っ張る原因になりかねません。私はあなた方を責め立てている訳ではございません。努力しなさい、スタートが遅いあなた方は国立に入ったのですから挽回のチャンスは沢山あります。思う存分努力しなさい。そのためにこちらは力を貸すことを惜しみません、では順番に教師がまわります。」
なんだ転移できないのは珍しいのか。説教されたし、学園長様様って訳か?
しばらくするととってもやる気のなさそうな白衣を着た汚らしい男が近よって来た。
…………まさかな、俺は嫌だぞあんなホームレス紛いな男と記念すべき最初の転移をするなんて。
そんな俺の思考を知ってか知らずかニヤリと笑った。
まじですか。
「よ、俺がお前を案内してやる。お前名は?」
「……ハリエンジュだ。」
「連れないなぁ、まぁ良いハリエンジュ経験は何回ある?」
「ない」
俺がそう言うとポッカーンと固まる教師、そんなに珍しいのか。
「ない……か。そんな奴教師になってから見たの初めてだぞ。まぁ良い簡単に言えば俺から離れるな、あと場所の意識を思い浮かべるな。迷子になるからな」
さっきから迷子迷子って一体何を迷うんだろうか。転移をしたことがないのは珍しいのであれば少し失敗だったかもしれない。確実に目立ってしまっている。
俺の知ってる転移みたいなもんは迷子なんて事はなかったぞ、確か……。
なんか気になるな、迷子。
場所の意識か、思い浮かべてしまおうと、そう思い俺はニヤりと笑う。
「……なんだ、その笑み。まぁいい行くぞ?」
確認をとる教師、勿論俺は明確に場所のイメージをしながらコクリと頷く。この教師思ったよりいい匂いする。
「行くぞ」
そう言った瞬間視界が暗くなり軽く握っていた手が何かの力にひっぱられ解けた。
そのほんの一瞬の出来事のあと俺が到達したのは真っ白な空間。
俺は学園の校門をイメージしたんだが。
これが教室の訳もないだろうし。
「せんせーー?」
…………何この真っ白な空間、声が反射してこないのをみると相当広いか無限に広がってるんじゃないか?
まさかコレが俗にいう迷子か?
コレが迷子ならかなりやばいな、何人死んでるんだ?誰がこの世界を作ったのか知らないがコレは設定として良くない。転移が作れない世界に誰かが無理矢理方程式を完成させた歪みの結果か、方程式が未完成か、設定か、不明ではあるがコレはつまらないな。
俺だからなんとも感じないが子供なら数分、大人でも十数分、実力者でも1時間で精神崩壊するだろう。
あくまで1人でしかも自力で脱出できなくて、助けが来る可能性がない時だが。
俺にとっては脱出しようと思えば簡単だが、後々が面倒くさい。
教師の様子でも見てまつかな。
ホームレス的教師side
なんだアイツ俺が近くに行くとめちゃくちゃ嫌そうな顔しやがった。
軽く挨拶をし転移経験を聞くと0だという。
この時代にこの年齢で転移をした事がないやつなんて始めて見たし、聞いた事もない。
まぁとりあえず迷子対策を言いつけた。
その直後ニヤリと何か企んでそうな笑みを浮かべやがった。
まぁいいや、どうせ何かする度胸はないだろう。
行くぞ、と合図をして頷いたのを見計らい転移を発動させた。
だけど次の瞬間視界に現れたのは成功の証である光ではなくて、迷子の前兆である暗闇……。
そして必死にハリエンジュに手を離すな!!と言うが、するッと抜けていき解けてしまった。
ヤバいと思った瞬間俺はハリエンジュを送るはずの教室にいた。
放心していた俺は着地直後跪く。
「ヤベぇー!!マジヤベぇー!!…………」
「先生?どうしたんですか?」
俺が微妙に叫んでいたせいか、学園長とか他クラスの教師が何事かと入ってくる。
「あ、学園長!生徒1名おそらく迷子になりました」
「は?」
ポッカーんとする学園長。
「いやだから「始めての転移じゃあるまいし個別でそんな馬鹿な筈はないでしょう?」」
「初めてみたいでした、ハリエンジュ」
俺の言葉を聞いた瞬間アワアワする教師一同。
「それは本当ですね?ならば早く探し出さないと、入学早々精神崩壊してしまうじゃないの!猶予はあと10分くらいかしら?しかし猶予をすぎても諦めず一刻も早く探し出す事!いいわね。ああなんてことこんなの学園始まって以来の不祥事だわ!」
「わかりました。」
「あなたはギルドに協力を仰ぐの!その他は私も含め全力探しなさい、ただし2人1組でよ」
そう言った学園長の言葉に皆従い動き出す。
俺はチラッとシロを見て見たがすでにいない。
フッと笑いギルドに転移した。
ホームレス的教師sideEND