第2話
「なぁなぁ、ヨナは貴族じゃないんだよな?」
好奇心か疑心か複雑な表情で話しかけてくる。
「あぁ、俺は貴族ではない。ヤワナは貴族なんだろ?良いのか、こんな平民らと関わって。」
そう言いながら視線をシロに向ける。
「それどういう事っすか?ノプシスさ……シロを侮辱したっすよね?」
いきなり立って睨みを聞かせてくる、そして僅かに殺気が漏れている。
この感じただこいつはシロの正体知っているのだろう。
「あぁ、いや逆だな貴族を侮辱した。」
俺がそう言うと2人揃ってポカーンとする。
あぁ、これは永久に脳内保存だな。
「シロはわかっていたんじゃないか?」と問いかける。
「ま、まぁなんとなくは……でもヨナさんは面白い方なのですね。私は好きです、ヨナさんみたいに身分関係なく話して頂ける方は」
はは、実質俺は身分に縛られる次元にはいない。
シロも馬鹿だと思う、一般的な平民の設定だろうにその言い方だと身分差別の経験あるように聞こえる。
「そうか?俺は自分より弱いと判断した奴には例え身分が遥か上でも下に見るぞ?勿論敬語も使わない」
お、ちょっとばかりヤワナが苛立ってやがるぞ?
シロは至って平静を装っているが内心絶対俺を哀れんでいるな、目線がそんな感じだ。ああ楽しい。
「だ、黙っていれば!俺はともかくシロを侮辱すんな!」
あれまぁ気の短い事で。
「はは、すまんすまん。気を付けるよ」
それにしてもこいつら馬鹿ではないだろうか。
足音たてないし、隙は全くないし、他の学生レベルではないと思う。
それにシロのアクセサリーの多さ……全てから微量な魔力を感じる所からみると封具か。
そこそこ実力のあるやつなら気づくはずだ。
俺は今とっても機嫌が良いから1つ教えてやろう。
「それはともかく、お前ら馬鹿か?」
「はい?何の事でしょうか」
「んーー。怒らせたからな一つだけ。お前ら実力バレンぞ?」
俺がそう言うと瞬時に殺気を俺にだけ結構なレベルで向けてきた。
いやいやびっくり普通の学生ならフラつくレベル、俺もとりあえずフラつく。
「お前何者だ?」
ヤワナが言ってくるが俺は一般学生。
「と、とりあえず殺気止めてくれないか?」
殺気にあてられたふりをする。
なかなか難しいもんだな。
俺がそう言うとスーッと殺気が消える、気迫はヤバイが。
本当に楽しい気分だ。
「俺はただの平民だ、お前達足音鳴らしていないし、隙も全くない、それなのに感じる魔力は一般並。そこから導かれる答えは実力を隠している、くらいだろう?俺が気付くくらいだからな、実力そこそこあるやつなら一発だ」
ああ、結局全部言ってしまったではないか。
「足音……気付かなかったな。」
「ですね」
2人が目を合わせながら足元をみる。
「そ、それよりお前達こそ何者だ?」
「それは言えね「ギルドに所属しているんです。」そうだ」
ヤワナを遮るようにしてシロが発言する。
「へぇー?ランクは?」
「私はランクを持っていません。彼はCで、そのサポートを私がしている、みたいな感じです。私は魔力量がとても少なく体術はそこそこできますが……要するに落ちこぼれです。」
ふーん、そう来るか。ギルドランクはS.A.B.C.D.E.FとあるからCランクの場合一人前と捉えられる。
そんな訳はないはずだが、これ以上は突っ込まないであげよう。
「へぇー、さすが貴族」
「次ノプシスとアイリス試験室に入りなさい。」
そうこう話しているうちにだいぶ列は進み試験の順番がやってきた。
「あ、俺ら呼ばれたから……お互い入学できる事を願ってまた学園でな!」
お辞儀をして行く対象。これで俺のことを印象付けることはできただろう。
この後間も無く俺の番が訪れ、簡単な身体検査、能力値検査、武力検査、魔法力検査を行った。普通レベルに調整し実施したため特に面白みはなかった。試験中妙な視線は感じたがただの監視官だろう。
これで普通に入学はできる。なんの変哲もない一般学生の完成だ。
そして試験をした日から一ヶ月あまりが過ぎた。
俺は都市の大通りから少し離れた裏路地に一軒家を買った。
アレから割とすぐ適当に見つけておいた。本当に一般的な一軒家だが便宜上あれば問題はない。
お金はそこらの森で狩った魔物を素材を買い取ってくれる所に持って行き手に入れた。
この世界のお金は大まかに金貨と銀貨と銅貨、鉄貨でなっている。それぞれ10枚で大銅貨、大銀貨、大金貨というものもある。
金貨1枚は銀貨100枚に妥当し銀貨1枚は銅貨100枚に、銅貨1枚は鉄貨10枚になる。
一般的に銀貨20枚あれば1ヶ月は暮らせるくらいだ。
俺がたまたま遭遇して狩った奴は良くわからないが希少な奴らしく金貨15枚くれた。
それでも店は大儲けらしい、もっとくれると言っていたが家を買うのに必要なのは10枚だったので断ってやった。
ちなみにそこのおやじとは何気に仲良くなった。白い髭が特徴的な強面のおじさんだ。
家から徒歩5分も掛からず着く所にあり知る人ぞ知る隠れた名店なのだそうだ。酒場のおっさんらが噂していたのを小耳に挟んだ。
俺が持って行った奴は翌日完売したらしい。
欲しい人は欲しいのだと思う、俺はいらない。
見た目はグロテスクで何気に体も硬かった。
おやじによると皮と内臓が希少らしい。
与太話はここら辺で、たった今入学案内書が届いた。
入学式まであと一週間程ありその間に全て自分で必要な物は用意しなくてはならないようだ。
ヨナ・ハリエンジュ殿
この度は我が国立ミラージュ魔法学園を受験して頂き誠にありごとうございます。
ハリエンジュ殿の合格を通知するとともに入学式の日程、又入学に必要な物をここに記します。
4月25日朝9時より学園の武道館
9時までに武道館の自席に着席するよう、お願い致します。
学園の門にて別途用紙の入学証明書をお見せ頂ければ係の者が案内致します。
どうぞ遅れぬようよろしくお願い致します。
各自準備するべきもの
筆記用具、武具、膝下の目立たない色のローブ
私服5セット程度、及び生活に必要なもの
不要物は基本的にありませんが、此方の判断で没収させて頂く場合がございます。
生活に必要な物は入学後一週間程度過ぎれば売店にて全て揃える事ができますので最低限の持ち物にして下さい。
尚、教材や制服などは各自の部屋に揃えてあります。
入学式当日はローブを羽織れば何を着ても平気です。
では貴殿に会える事を我が学園教師一同心待ちにしております
あとの一週間はこの備品を揃えてシロでも監視するかな。
あーあ柄にもなく楽しみだ。