第1章〜対象との出会い〜第1話
この世界に来て一ヶ月が経過した。
今回の目的の人物は既に見つけていて、動向を探っている。
別に何か悪さをするという訳ではないが、こいつは要注意人物に設定されている。
広大にセカイが存在する中で一つの世界の個人や組織が悪さをして結果的にその世界が消えようと、知った事ではない。
何が問題か、それは勝手に他の世界に干渉し得る力を持つ者である。例えばその世界には存在しないのに不老不死や能力の異常高値など理由は様々だ。しかし世界それぞれに平均値や理りがあるため意図して造られた場合においては問題にはならない。なぜならその世界や個人には制約が着くからだ。
しかしこいつは何かのミスでほぼ不死、そしてこの世界には存在する魔力や、潜在能力が設定値よりも異常に高いのだ。そのためいずれ世界の存在に気付いて干渉できる可能性もある。
何かのミスと言ったが大方あいつが寝ぼけただとか、指示ミスだとか、ケタ間違えたとか下らないことだろう、よくあることだ。
それがわかりきった状態で俺に指示するあいつを100回くらい殺したのは言うまでもないが、あいつは曲がりなりにも俺より上の立場だ。
力では俺が上だが、俺を消滅できる立場にいる。
セカイはつまらないが消滅したらたぶんもっとつまらない。
だから仕方なくいつも通り指示を請けた。
何百年アイツを理由にシゴトを全て断ってたから、そろそろ現存の奴らだけでは限界なのだろう。
世界の一つや二つ消えたところでセカイには何も異常はきたさない。
だが、それが何十となると話は別である。
普通は数百年に一つや二つくらいの速度で世界が消えるのが妥当だが、シゴトを放棄した事によってバランス改善が追いつかなくなり数百年に五個くらい消えるようになった。
あいつらが世界を創造できるスピードの倍以上ある。
サボっていた1000年近くの間で、30個近く世界が消えたらしい。
セカイから世界が20以上消えたためにバランスが崩れかけているみたいだ。
世界を急ピッチに作らなくてはならなくなったあいつらはセカイの中の小さな一つの世界に創る生物の管理が疎かになったのだろう。
怠惰からできたその世界で最強とも言える人が、無数に存在しうる世界の中にいる。
その中でも特に強い、管理者の中でも中堅レベルかもしれない対象が俺に回された。
基本的にこう言った世界のバランスを改善するのは中堅レベルであり、普通ならばそれで充分だ。
しかし今回の人は普通ではなくかなり異常らしい。
中堅では手に負えない特殊な案件は千年に一度あるかないかのレアな事だ。
十何年前に創られた対象で今から俺はそいつに近づき力が世界に影響を及ぼさないよう、そいつに悟られないよう力を制御してやる。
ただし、それはそいつが面白かったらの話だ。
つまらない人だったら即消す。
何も影響がないと言えば嘘だが、消せば世界に影響は少ないし、何十年シゴトをしなくて済むのだ。
そして今対象は友人とともに学園に入るための手続きに並んでいる。
学園と言うのは魔術を教える学園の事であり15歳になる対象は今までは行ってなかったようだ。
世界最強の男が何のためにわざわざ教育機関に行くのかと思う。教育機関でなければ学ばないこともあるだろうが面倒ではないのだろうか。
そもそも対象が学園に入ったら俺まで入らなくてはならなくなる。とてもとても面倒である。
対象は案件に就いてから5年以内は消すな、詳細を知らずに決定してはならないという規則がある。
それを決めているのはあいつらであいつらは俺のお気に入りでもあるから文句は今の所ない。
そして、対象が入る学園はこの世界アルメリアの中の最大国コーラルにある全寮制の国立の学園である。将来有望な生徒ばかりのかなりレベルが高い学園だ。
この世界では余程の理由がない限り義務付けられているのが15歳から20歳までの学園生活だ。
勿論15歳以下が通う学校もあるが、それは基本的な知識を付けるものであり、魔術や体術と言った実技を学べる所はない。
そのため自然と基礎教育能力の高い貴族階級など裕福な層にいる者たちがレベルの高い国立に入る。
平民層のほとんどは都立など都市が運営している所に入り、さらに平民以下である奴隷などは田舎の村立などに入る。
私立というのもあるがそこはコンセプトによって様々な特色がある。
どんなに身分が低くてもレベルが高い奴は国立に転入する事もあれば最初から国立に入る人もいる。
しかし、勿論貴族階級だらけの中に平民以下が混ざるのは目立ち大体避けらる。
獣人なんかがたまに混ざるとばれた時がその子の終わりである。
そんな事はどうでも良いのだ。
問題は全寮制と言う所にある。
国立と都立は全て全寮制、勿論例外はほぼない。
王族のみが全寮制の刑を逃れられるらしい。
俺はまだこの国において籍を置いていないため王族は愚か平民でさえないんじゃないか?
作りにいったら親連れて来いと言われたのだ。
シゴトをする際の規則で出来るだけその世界のルールに則って力は最小限にというのがあるため最初はチャレンジした。しかし無駄足になったため勝手に作った。
しかし住所がないため今はホームレスになる。この俺がホームレスとは笑えるな。
そんなこんながあり俺は今対象の後ろに並んでいる。
そして対象の友人が俺に話しかけたそうにチラチラ見ている。
はぁ、やめてくれよな。
「なんだ?俺の顔に何かついているのか?」
目線があった時白々しく聞いてみる。
「あ、いやそんな事はないっす。」
俺に声を掛けられるとは思ってなかったようで、どこかオドオドしている。
「ふーん、そう。」
俺が興味なさそうに返答し視線をずらせば慌てたように名前を尋ねてきた。
「人に聞く前に自分が名乗ったら?」
と眉をしかめながら質問を返す。
「あ、すみませんっす。俺ヤワナ・アイリスっす。こっちはシュロ・ノプシスっす。俺の事はヤワナでよろしくっす。」
不快な視線など気にかけた様子もなく軽快に返答をする対象の友人と特に興味もなさそうに名乗る対象。
「シュロです。シロって呼んで下さい」
握手を求めてくる2人に握手しながら自己紹介をする。
「承知した。俺はヨナ・ハリエンジュ、何とでも呼ぶが良い。」