5 戦争再開‥‥‥
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異世界生活二日目。この日は初めての兵士としての出勤だった。
「こんなドキドキは高校の入学式以来だなぁ」
「何かおっしゃいましたか?」
「い、いやなんでもないよ」
そうして彼女と一緒に南門に向かっていく。
「しかし、天気がいいなぁ、こうして天気がいいとやる気が出てくるね」
「はい! ジート様も元気になられて私も嬉しいですわ!」
ここにきてまだ二日目だが、まるで新しい学校でクラス発表を待ってる間のような気分である。
「でも、ジート様。 無理はなされてはいけませんよ? 何かあれば私が飛んで迎えに行きますから!」
「大丈夫だよ。 ありがとうね」
歩くこと十分ほど、南門についた。そこは、大きな城壁で王都である、この街で最後の砦になるこの門は先の戦争でも大いに活躍してくれた。
「ジート様〜! よかったご無事で!」
大きな声で出迎えてくれた彼は十五歳ほどでまだ高校生にも満たないほどの体つきだった。服装は簡易的な兵士の装いで正直なところ頼りない装備と言わざるを得ない。
「あなた、こちらはアルクニクス様ですよ」
「あ、そうか。ジート様は記憶を亡くされたのでしたね」
「あぁ、すまない。よろしく頼む」
ここでは威厳を確保しないとな。年齢が二十四歳ほどになると日本でいう課長や部長という部類になるらしい。しっかり威厳のある彼の姿を演じないと申し訳ないからな。
そうして彼女とはここでお別れをして彼に南門の業務を案内してもらった。そこは古い砦で兵士が常に十人ほど常駐しているらしい。
「—説明は以上ですけど、何か思い出しましたか?」
「いいやすまん。何も……」
「どうだ、体調の方は」
奥の方から聞こえてきた渋い声の持ち主は、門の番人と言われる兵士長殿だ。大柄な体格はいくつもの争いを勝ち抜いてきた勲章が胸に飾られていた。
「あぁ、記憶がないんだったな。私はこの国の兵士長「アルスバンド」だ」
その強面の顔にはいくつもの傷が刻まれていた。彼がいうには「ジート」という人物はこの門の二番目の管理者で先の戦でもかなりの功績を挙げていたらしい。
「—それと、この前の話だが……。また、許可されなかった」
「この前の話?」
この前の話とは先の戦争でかなりの功績を挙げたジートだったが貴族派閥の反感が根強く騎士としての昇給が叶わなかった、とのことだ。
もちろん、なんの話かわからなかった為、適当に返事を返しておいた。
「今日は、私の仕事の補佐をお願いします!」
そう言うと彼は門の見張りに戻っていった。
門からの見晴らしはとてもよく鬱蒼と茂る森に気持ち良い風が鼻から身体中を駆け巡る。
「素晴らしい景色だな。まるで体が喜んで光合成しているみたいだな」
「はい! しかし、帝国との戦争がまた再開されればここは赤い血で染まります。 この門は帝国側にとって最初に落とすべき砦ですから」
彼の言うことは、おそらく事実であろう。それは脅しなどではなく自身が見てきた経験から話をしていることは目を見ればすぐにわかった。
「ジートさん! 今日は酒場でジートさんの復活をお祝いするんで必ず来てくださいね!」
そうして門での一日目が終了した。この一日で覚えることが多すぎて一回で覚えることはとても困難を極めた。
「これから大変だな。覚えることに人間関係やこの国の情勢。とりあえずせめて剣の扱いを覚えないとな」
それからの日々は毎日が驚きの連続で価値観の違いや常識の不一致など、瞬く間に一ヶ月が過ぎようとしていた。
—そして運命が大きく変わる。
ある非番の日の朝のことだ。僕は彼女と質素な朝食を楽しんでいた。
「ジート様、今日は市場の方へ向かいませんか?」
「あぁ、いいね。 僕もこの街のこともっと知りたいし!」
—その時だった。
「宣戦布告だ! 帝国が戦争を再開させた! 戦争が始まるぞ!」
「—⁉︎」
それはつまり、この平穏な日々が一気に崩れることを意味していた。
「僕は門に向かいます! ベイリーはここにいて!」
「あなた! お願いがあるの! ……子供を作りましょう!」
「—はい?」
そして彼女に言われるがまま、ベッドに押し倒された。そこからは大人の世界だった……。ここでは言えないくらいの……。
「あなた、本当に気をつけて……。生きて帰ってね」
「あぁ、必ず!」
門に着いてからは地獄だった。そこでは慌ただしく防衛ラインの建設が進められた
「アルニクス! 状況は!」
「はい! 国の騎士団のやつが総出でラインの建設を進めています! しかし、相手の数は二千と少し、対するこちらは二百程度。厳しい戦いは免れないでしょう……」
「さっさと働け平民ども! 貴様らなどせめて国の役に立って死ね!」
「誰だあいつ?」
「あの人、貴族派閥の騎士団長です。恐れく、ここの防衛担当を任されて不機嫌なんでしょう」
「そこの平民! さっさと手を動かせ!国の寄生虫め!」
「感じ悪いやつだな」
戦争が始まるのは明朝八時頃。南門から南西に二百メートルに防衛ラインを構え、そこで帝国を迎え撃つ。
「始まりますね。 兵士長」
「あぁ。おそらくこの国にとって最後の戦争になるだろう……、結果はどうあれ絶対に諦めてはならない! 祖国の為、愛する家族の為。
絶対に勝って帰ろう!」
「必ず勝利をこの手に収めましょう!」