1 転生⁉︎ マジかよ最高じゃん⁉︎
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ここは関東にある郊外の街。とても静かで自然が豊かな街が僕は大好きだった。
梅雨のジメジメとした空気も嫌いではない。深夜のコンビニ通いも慣れたもの、いつものコンビニ弁当とカップラーメン。
そこのコンビニは昔から深夜に駐車場で暴走族が屯する。決して都会とはいえな場所だが田舎までとはいかない程の普通の街である。
僕の名前は、鈴木 一である。スズキという苗字にハジメという平凡な名前だ。この平凡な名前のせいで小学校では鈴木がクラスに三人もいた。
そんな僕も、晴れて高校を無事卒業した訳ですが、どういうことか就職先の会社が突如、倒産した。そのせいで、僕は六月になっても、こうして引きこもりを続けている訳で、親にもバイトくらいやりなさいと怒られるし高校の先生からは就職の斡旋をもう一度行うからと連絡が絶えない。
そもそもの問題、僕は昔からどうも不幸とは縁があるようで運がないことが多々ある。
例えば中学校の時、二年生の林間学校での出来事。僕は三人一組でスキーを滑っていた。リフトに乗っていた時、二つ前のリフトからストックが飛んできて直撃しかけたり、緩やかな林間コースを滑っていたらなぜか違うゲレンデに迷い込んでしまったり、何かと運がないことばかり起きる。しかし、そんな僕でも運動と勉強は普通だった。
成績も中の下。特に苦手なことはなく大きな怪我もなくここまで育った訳だが。
「そろそろ働かないとな。あ、確か昨日はポンプの発売日だっけ」
買い忘れを思い出し徐にコンビニへ戻る……
「—!」
一瞬の閃光にハジメは瞬き一つできずに強い衝撃に声を漏らす。
「—っ!」
角を飛び出したワゴン車が猛スピードで一にぶつかった。割れるウインカーに冷たい車体。景色が一瞬にして赤く染まり見える景色全てがスローモーションに変わる。腕はあり得ない方向にねじ曲がり胴体がボンネットに浮かび上がる。死ぬ間際にスローモーションになることは噂程度に聞いたことがあるがまさかここまでゆっくりとは……。
(あれ? それにしてもゆっくりやすぎないか)
まるで通常の時間の百分の一程度になったと感じる程に遅い。体は浮き、飛び跳ねるコンビニの袋。時間が遅いせいなのか痛みはあまり感じなくなった。体は動かないがなぜか眼球だけが動く。
(全く、死ぬ間際までもおかしな不幸だよ。本当に。)
そう心の中で色々なことを思い受かべ—
「え—」
声がする。あり得ない。この時間の中で普通の声が聞こえる。
(まさか、ここで神様登場的な展開!)
そうした期待と不安を抱き、唯一動く眼球にその意識を集中させる。その声は段々とこちらへ向かって来ており恐らく男性らしき声が近づいてくる。
(こりゃ、異世界とかに転生、召喚しちゃうやつだなぁ)
そうして、声はついに角を曲がって来た。
「……ぃゃあ、こりゃ、やっちゃったなぁ」
「—へ?」
思わぬ登場に声が出ない。
(いや、もともと声出せない状況なんだけど)
登場した謎の人物は長身で大柄な四十代くらいの男性でなぜか、ふんどし一つで歩いている。
「んもぉ、だから嫌だったんだよぉ、死んだ人間をちゃーんと運命指導書に書いてあるぅ通りに死んでいるか確認するのは、はぁ」
そう愚痴をこぼしながら歩いてくる。理解が追いつかないまま、これから起こりうる事柄に恐怖さえ覚える。
「死ぬだけじゃないの?」
そんな疑問を抱かずにはいられない。そして、男性は通常の速度でこちらへとたどり着き僕を見る。
「あちゃー、本当に運命指導書通りだ。痛そぉー」
そうして、両胸を抱き身震いする男性。
「ちゃんと時間を確認して、六月二十一日 三時二分 死亡予定……っと」
(あれ、これどういう展開? え、死ぬの?)
事実、このままいけば救急車を呼ばれ間違いなく即死級の傷を確認され人工呼吸が始まるだろうと一は確信する。
眼球は瞬く間に速度を上げで十右往無人に泳ぎ回る。このあり得ない状況に声が全く出ない。意識はまだある。時間は本当にゆっくりではあるが確実に進んでいる。ボンネットにあった胴体は間も無く滑り落ち地面に叩きつけられる。
「—」
一瞬、目があった気がした。その絶対絶命の場面で一は千載一遇のチャンスにかける。
( 頼む! 気づいてくれ!)
「—ん? あれ、もしかして意識あるの?」
ふんどしの男は少し驚いたようにこちらを見て顔を覗き込んでくる。
「んーおかしいな。確かに、この紙には即死って書いてあるんだけどな。」
言葉が出ない。うまく口を動かせない。車にはねられたせいで口を開けることができない。飛んだ不幸だ。
「やっぱり意識あるね。嫌だなーこれは不味いことになった。」
そう発言すると男性は、右手人差し指と中指で指をパチンと鳴らした。その瞬間、一の体は瞬く間に地面にずり落ちる。
「—ッ! って、痛くない?」
人間というのは危機感を感じると咄嗟に痛いと言葉を発してしまうらしい。本当に今日は付いていない。
「君はぁ、山ノ下 三郎君だねぇ?」
答えられないのに質問を与えられるのは非常に悔しい思いを感じる。
「あー君、もう喋れるよぉ」
「え。あ。口が動く。言葉が出る⁉︎」
こんな時でもやはり言葉を発することができるのは非常に嬉しいことだと改めて実感する。
「でぇ、山ノ下くーん。少しまずいことになったね」
「—あの、少し聞いてもいいですか?」
「なぁんだい」
「山ノ下くんって誰ですか?」
「—え」
その返答に驚いたように男の目が見開いていく。まるで、深夜のトイレで犬の交尾でも見たかのような形相である。そんな驚いた顔の男に一は言葉を付け足す。
「僕の名前は、鈴木 一です。山でも川でもなく鈴木です」
開いた口が塞がらない様子の男。この顔から察するに相当、おかしなことが起きているようだ。
「あのー、大丈夫ですか?」
男の様子に自らの不安を隠しながら、男により詳しい説明を要求した。
「—神が。神が。神ガァ!やってしまった。終わりだよ。終わり」
そんな絶望すら感じている様子の男は、雨で濡れたアスファルトに両膝をつき、手を固く結んで雨雲に叫んでいる。
(話しかけずらいなぁ)
そう感じるハジメは決して間違っていないと自らを信じ込ませる。
「す、すまん。取り乱してしまった。私は神様が発行している運命指導書の確認と報告の仕事をしている。」
話の内容が全く見えず、死んだはずの脳がフル回転を始める。
「まずは、状況の確認をしよう」
「た、確かにそうだな。まず、その運命指導書ってなんだ?」
(ってか、なんでふんどしなんだよ)
「これは、生命の神様が管理、発行している全人類の道の終わりを示すものだよ」
「—道の終わり?」
それは、すなわち死のことを示しているのだと一はすぐに感じた。
「えーと、それはつまり僕は死んだってことですか?」
「—そうだ。」
死というものは、いつの日か必ず訪れる。それは全生物にとって等しい理であることは当然、理解していたつもりだった。
不幸というものは必然的に決まっていたのかもしれない。そう感じていた一は男が発した次の言葉に驚きを隠せなくなる。
「—これは、こちらのミスだ。」
「はい?」
「君は本来なら今日死ぬ予定ではなかった。なんらかの手違いによって君と死ぬ予定だった者の体が入れ替わった」
一は理解が追いつかない。ただ、運命を受け入れ転生など期待していた自分に情けなさすら感じている様子だ。
「じゃあ僕は間違えて死んじゃったということですか?」
「—そうだ。すまない」
死んだ後にすら不幸や不運などが付いてくるとは運命的な何かで結ばれているのかもしれない。そして、先ほどまでとは違う口調になっている男にハジメは気づくはずもなかった。
「ここでは、なんだからよかったら神様のところで話をしないか?」
「—そ、それはつまり、もうここには帰ってこられないということですか」
「—忝い」
ようやくここで、本当の死を実感した。家族のことや友達のこと、様々な感情が思い出を司る。
母親は昔、僕が生まれてすぐに離婚し女手一つでここまで育ててくれた。なに不自由なく妹と自分をここまで育ててくれたのは間違いなく母親のおかげである。心配性でお節介で、しかし、困った時はいくらでも時間を使い相談に乗ってくれた。
就職先が倒産した時だって無理に次の就職先を探させようとはしなかった。これは、間違いなく母親の優しさだと今になって気づいた。唯一の救いは喧嘩別れしなかったところだろう。喧嘩別れしていたらどれほどの後悔と悲しみを感じていただろう。
考えるだけでも胸が痛む。
「—さぁ、この中へ」
男の立つその場所には魔法陣のようなものが浮かび上がっていた。
「これは?」
「転移魔法だ」
(いきなりファンタジックになってきたぞ……)
「人間界では基本、魔法は存在していない。人間は些細なことですぐに争いを引き起こす。魔法を軍事勢力としない為、存在させていない」
魔法と科学とは相見えないものだと感じる。人間は、貧弱な個体故にその知恵を使ってここまでの科学社会を築いてきた。もし、魔法が存在していても結局は争いごとにしようしていただろうとハジメは感じた。
「さぁ、目を瞑って」
「はい!」
男のその言葉と同時に魔法陣から眩いばかりの光が辺り一面を照らし始める。
(絵に描いたような異世界物語だなぁ)
光は瞬く間に増殖して円を描くように拡張していく。次第に、二人を覆うように回転しまるで台風の中にいるような風を円の中に巻き起こす。
「さぁ、じゃ行きますヨォ」
それと同時に光はさらに勢いを高め一瞬の閃光と共に消えた。
「—」
光が消えると同時に静寂が一の心に襲いかかる。
「—も、もう目を開けていいですか?」
「あぁ、構わないよ」
恐る恐る目を開けた一は目の前にいる人物に驚愕する。
「ふ、ふんどしの子供⁉︎」
「子供じゃないわい‼︎ 全くいきなりきて失礼な子供じゃぃ」
まるで絵本のような開けた丘の上にいた一の目の前には幼い子供の体型をした男の子が立っていた。その男の子は年齢は五歳ほどで短めの短髪に綺麗な白い肌に艶やかな黒髪の青い目をしたふんどしの子供だった。その出で立ちは、子供とは思えないほどに気高く意気揚々とこちらを見つめている。
「えーと、このお子様は?」
困った様子でハジメは横にいるふんどし一号に救いを求める。
「鈴木さまぁ、いくらこちらのミスとは言え、生物の生命の神「アラゴン」様をお子様呼ばわりすることは許されませんよ」
「—アラゴン様?」
「そうじゃ、この世界の全ての生命を管理統括しているのは、紛れもなくこのワシ、アラゴンなのじゃよ!」
腰に手を当て鼻を尖らせ自慢げに語る様子は徒競走で一位をとった幼稚園生そのものに思える。
(いやぁ、神ってさもっと男前だったりおじいさんだったり女神様だったりするじゃん。なのに、子供でしかもふんどしってどうも締まり悪いよな。しかも、このままいくとどうせ勇者に転生させられて困難なストーリーだったり複雑な人間関係とかに首を突っ込んだり正直、めんどくさいよな。やっぱり、このまま成仏せてもらって天国とかでボーッと暮らす方が俺には向いてるんじゃないかなぁ)
異世界転生物のお決まり事項をここまで揃えてしまうといくら鈍感な人間でも流石に感づいてしまうものだ。ましてや、ハジメは大の異世界アニメ大好き少年なのでここまでくるとあの子供にどんな転生特典を突きつけようか今まさに考えている時だった。
「おい!少年!聞いておるのか!」
「は、はい⁉︎」
「全くこれだから子供の相手は嫌いなのじゃ。特に人間の子供は傲慢で聞き分けがなく何かあったらすぐ喚きよる」
突然、訳もなく連れてこられて訳も分からず罵倒される。ハジメは優しい性格だが怒るときは納得がいくまで引き下がらない。いわゆる、頑固というやつである。
「—あのー、さっきそこの大きいふんどしさんが言ってたんですけど僕が手違いで死んでしまったって本当ですか?」
「—」
「—あのぉ」
「わかっておる!そうじゃ、お主はこちらの手違い、何らかのミスで間違って他人の死を受け取ってしまったのじゃ」
「そんな……」
ハジメは露骨に悲しい表情を表に出し情に訴え次の転生で贔屓してもらえるように作戦を実行する。
(これで神は申し訳ないと感じるはずだ。そして、次の転生で勇者に生まれ変わって国や人々を救い神と崇められる存在になるんだ!)
「しかし、困ったもんじゃな……」
「何がですか?」
「本来、死ぬ予定でなかった君には次の転生先が決まっておらんのじゃよ」
神の思わぬ発言に咄嗟に嫌な予感を感知する。先ほどまで勇者に転生するとばかり信じていた一はこの展開に焦るように言葉を発する。
「そ、それってつまり僕は生まれ変われないということですか?」
「基本的にはそうじゃ。運命指導書はそもそも生まれてから死ぬまでの罪や善を計算して次の世界を決定してから施行されるもの。そもそも、転生先が決まっておらぬ君にはそもそも運命指導書は思考できないんじゃよ」
「—じゃ、じゃあその間違えた運命指導書に記載されている転移先は⁉︎」
「……地獄じゃよ」
予想外の返答に一は思わず息が詰まる。転移先が地獄ということは前世で殺人や窃盗、その他の大罪を犯したということだ。
転生先が地獄とわかっているにも関わらず進んで地獄に落ちる人間はそういないであろう。
「そ、それって地獄しか行けないということですか?」
「—そうじゃ」
ここまで異世界で勇者になれるとばかり考えていた一は自分の浅はかさに思わず腰が抜ける。そもそも考えてみれば天国があれば地獄もあることは子供でもわかる。
異世界アニメしか見てこなかったハジメは最初から地獄という選択肢を全く頭に入れていなかったのだ。
しかし、次の神の言葉にうっすらと希望に光が舞い込んでくる。
「しかし、今回は例外に例外を重ねておる。死んだのもそもそもこちらの手違いが原因であるからのぉ」
「地獄以外ならどこでもいいです!とにかく地獄だけは!」
「んー、あ! 確か、空きが一つある世界があったな!どれどれ……」
そうして、ふんどしからタブレットのようなものを取り出して猛スピードで画面をスワイプしていく。
(いや!どこから出してるんだよ!ってか何でタブレットあるんだよ!ここ電波届くのかよ!)
神は幼き体で大きなタブレット片手に必死に画面と睨み合っている。
そうして二分ほど経った時、神の指が止まった。
「ここじゃ……。発売されなかったゲームの世界「アレンドクレスト」じゃ!」
「ゲームの世界?」
ゲームの世界は幅が広い。森林が多いファンタジックな世界やドラゴンや獣人、多種多様な生物が期待できる。地獄とは打って変わって素晴らしい世界だと喜びを露わにする。
「じゃ、じゃそれって勇者に転生できるってこと⁉︎」
「いや、それはない」
「—え」
「勇者は存在しない。そもそも、ゲームの世界では勇者がプレイヤーであることが多いのじゃ。そのためいくら発売されていないゲームの世界とはいえ勇者というのはあくまで架空の存在になるのじゃよ」
飛んだ期待外れだと一はため息をつきその一瞬の期待に儚い別れを告げる。
「じゃ、じゃあ、王様の子供とか?お金持ちで可愛いお姫様と結婚して何不自由なく暮らすことができれば……」
「それもない」
(神、無能すぎじゃね⁉︎ )
「貴族や王家というものたちはすでに物語の重要人物として空きが出ないように制作されておる。死んだゲームの世界とはいえこちらが手を出せば人を消してしまうことになる。いくら神仏とはいえそんなことはできんのじゃ」
「—じゃ、じゃあ、魔法使いとかは⁉︎」
「この世界では貴族しか魔法は使えん。貴族以外が魔法使えば一気にお尋ね者じゃよ」
もうすでにありとあらゆる考えは話した。
しかし、全て却下され残り考えらるものは一般的な平民しか思いつかない。
「じゃあもう一体どこに空きがあるっていうんですかぁ」
「兵士じゃよ」
「兵士?」
魔法使いは却下され兵士が良いというのは些かおかしい話である。
「兵士っていうのは馬に乗って敵を倒す者のことですか?」
「違う、それは騎士じゃ。兵士は門番や見張りなどをする者だ。言わば警察みたいなものじゃな」
飛んだ期待外れだった。考えてみれば転生して勇者になって世界を救うなど初めから無理な話だった。異世界に転生して勇者になることなど現実であり得る話ではない。前世で徳を積んだ訳でもなく、かといって悪事を働いた訳でもないが現実はそう甘くないのだと身をもって痛感したのだ。
もし、遺書が残せるなら神は冷酷無慈悲で何とも頼り甲斐のない子供だって教えてやりたい。
「まぁ、そういじけずくな。元はと言えばこちらの手違いが原因じゃ。ワシができる限りのことはしておいてやろう、お主何か希望はあるか?」
「—はぁ、じゃあまぁとりあえず体でも強くしといてください」
「任せておれ!」
そうして神はタブレットを操作し始めるとふんどし一号が一の周りに魔法陣を起動させた。
「ちょ、ちょまだ話が」
「安心しておれ、そんな危険な世界ではないわい。ホッホッホ」
(このクソガキ!)
「あ、これはい」
そうして手渡されたものは説明書のようなものだ。おそらくゲームの説明書だろう。
「こ、これいるの?」
「ホッホッホ、きっと役に立つわい」
呑気な神とは裏腹に魔法陣の光はますます勢いを増していく。
行きと同じような円形に台風のような突風が吹き荒れその光は止まることを知らない。
「ちょ、ちょっと待てって、何でふんどしなの⁉︎」
「ホッホッホ、それはワシらが裸族だからじゃよぉ」
「この変態キッズめぇ!」
そして、光が最高潮になりつつある時、神が呟くように言葉を放った。
「気をつけろ。お主を呼んでおるものがおるようじゃ……」
「なんて⁉︎聞こえない!」
神様の意味深な発言も聞き取れず光は高速回転を始めやがてハジメは激しい頭痛に見舞われる。
「—ッ!」
脳が内部から破壊されていく感じ、前世の記憶、十八年の思い出たちが様々な色になって蘇ってくる。楽しかったこと母親のこと思い残すはないつもりだった。せめて母親にだけはありがとうを伝えたかった。
「母さん、迷惑ばかりかけてごめんな。ほんとありがとう」
内部の風は勢いを増す一方、ハジメは次第に意識が遠くなっていく。世界がぼんやり灰色に変わり意識が遠く遠くに離れていく。
涙を流した彼の顔は柔らかな笑みを浮かべ、深い眠りに落ちた。