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プロローグ
0 プロローグ 〜始まりの音〜
「雨の匂いがする」
蟲たちが大合唱を始め静かな心に華やかな音色を奏でていく。
この世界に来たとき十八歳だった僕は世間知らずも良いところだった。
この世界での生活は決して楽ではありません。ただ、毎日がとても非日常的で刺激的だった。
あれからどれほどの年月が経ったのか。
最初はいろんなことが草原を駆け抜ける—白馬の如く過ぎ去っていった。
「―蟲ここの景色はいつ見ても変わらないね」
静かな森のひらけた場所にある小さな池の畔。月明かりに照らされ月光蟲達が縦横無尽に飛び回る、そんな場所だった。
「そうね、本当にいろんなことがまるで宇宙に線を描く流星雨のように日々を重ねて行ったわね」
気づけばもう既に一年が経過していた。この世界に来て右も左もわからなかった僕にこの世界の全てを教えてくれた。
— —彼女は僕にとって掛け替えのない人物に変わっていた。