決戦前夜
ゼゼとユキメが仲間になってくれた夜、俺達は夜通し語り合った。
最初は親睦を深める意味でなんとなく話をしていたが、話しているとなかなか気が合う相手だ。
これも勇者の縁なのだろうか?
そんなことを考えながら夜通し語り合った。
「その腰につけているのが、刀と呼ばれる剣なのか?」
俺は初めて見る刀に興味深々だ。
「そうだぜ。これが俺の言っていた丈衛門の3本形見の1つ【黒王】別名を斬魔道刀と言うんだ」
「こいつに付けられた能力はその別名の通り魔法をぶった斬ることができるんだ」
「この世界には後2本あるんだが、世界中に散らばってしまってるようだな」
「そんな凄い刀どこで手に入れたんだ?」
「これは俺の亡くなってしまった師匠の刀なんだ。それを俺が譲り受けたんだよ」
「師匠は鬼との戦闘で命を落としてしまってな。この国でやり残した事っていったら師匠の敵討ちがしてぇな」
師匠の話をするゼゼの顔は暗い表情をしていた。
「その敵討ち俺も手伝うぜ!!」
とっさに俺はそんなことを言ってしまった。
「ありがとよ! でもお前戦えるのか?」
少し冗談混じりなゼゼの言葉に俺はとっさに言った言葉の後悔なんてどっかに消えていた。
「お前たちは俺の仲間だ! 仲間のやり残した事をちゃんと清算してから連れていきたい!」
これは俺からの心からの言葉だ。
そんな俺の発言にゼゼの顔は真剣な顔付きに変わった。
「わかった。だが相手は強い。作戦を練らないと勝てないだろうな」
ゼゼが鬼の情報を知っているだけ教えてくれた。
ゼゼの師匠を殺した鬼は【黒鬼】と呼ばれこの国の鬼を束ねている、鬼の中のボスだそうな。
『クイーン』が奪われたあの日から鬼の活動は活発になり、日が出ている間にも現れるようになったという。
ゼゼとユキメは【黒鬼】を倒すためにこの空き家になっていた寺に住職のフリをして住んでいる。
ここから西へ向かった峠の山頂に鬼達の住みかがあり、そこで【黒鬼】は生活しているのだという。
見張りの鬼も徘徊しているような弱い鬼ではなく、強い鬼を見張りに置いているのだという。
正直【黒鬼】1匹ならどうにかなるだろうと甘い考えだった俺は少し不安になった。
「お前が暗い顔してどうするよ!」
ゼゼが俺のことを励ましてくれた。
俺はチッチに気になっていたことを問いかけた。
「そういえばゼゼはチッチの力を受けることはできるのか?」
「ゼゼは僕の力を使うことはできないだろうね」
「元々魔力を持たない人には僕の力を使いようがないんだよ」
「でも、ゼゼは剣の勇者だ! 魔物に対抗する力は持ってるはずさ!」
「心配ねぇよ! バット! 俺は鬼を殺して回ってきた」
「それに恐らくだが、俺が勇者に選ばれた理由ってのはこの刀が関係してるんじゃねぇか?根拠はないけどよ!」
ゼゼは自信満々にそう言い放った。
俺もその根拠のない言葉にどこか納得していた。
「ユキメは戦闘の方はどうなんだ?」
「私は赤ん坊の頃に親に捨てられたんですが、師匠に拾っていただいてから刀の稽古を積んできました。」
「私と師匠とで鬼を殺して回ってましたので足手まといにはなりませんよ!」
「こいつは俺に負けず劣らず刀の腕は確かなもんだ」
「こいつの持っている刀も名刀だぜ。名を吹雪と言い、能力は無いが切れ味は抜群だ」
俺は本当に頼もしい仲間を手に入れることができたみたいで安心した。
「やるなら早い方がいいな。明後日の朝、鬼のすみかに襲撃をかけることにしよう」
ゼゼとユキメはかなり決断の良い人間なのだろう。
正直俺は1週間後とかそんな感じだと思っていたのでびっくりしてしまった。
「あ、明後日な! わかった! 出かけるのは明日の午後とかか?」
「そうなるな。道中戦闘になることは避けられないだろう。覚悟しといてくれ」
「とりあえず今日はもう寝よう。日が昇る時間になっちまう」
ユキメが布団を敷いてくれ俺達は寝ることにした。
旅に出てから一週間と経たずに剣の勇者を見つけたまではいいものの。
強敵との戦闘までおまけで付いてくるとは思ってもなかったので、俺はなかなか寝付けなかった。
ーーそして夜が明けた。