絶体絶命
壁をぶち破った魔獣は黙ってこちらの様子を伺っていた。
「何者だ! 王様、早くあちらへ逃げてください」
ゴルドスさんがとっさに一人の兵隊に指示をし兵隊は王様を連れて奥の部屋へ行こうとしていたその時だった。
「別に俺は王様を殺しにきた訳じゃねぇよ。まぁ、ゆっくり話でもしようじゃねぇか」
王座に座り頬杖をついて魔獣がこちらへ言ってきた。
「お前と話すことなど何も無いッ! お前のような者がその椅子に座るなッ!!!」
ゴルドスさんの大きな声が響き渡る。
「まぁ、聞く気がないなら一方的に話そうか…… 俺は魔獣王レオパルドだ。城の結界がやけに丈夫だったもんで破るのに30年もかかっちまった」
「結界魔法ってのは厄介だな。人間にしては面白い魔法を作ったもんだ。褒めてやろう」
「だが、結界に使われている魔法を少し弄らせてもらった。王は向こうの部屋へ逃げようとしているが、一時的にこの部屋のすべての扉は魔界へと繋がっている」
「…なっ…なんということだ…」
扉を開いた王様が膝から崩れ落ちていた。
本当に扉の向こうは魔界へと繋がっていたのだ。
「お前を倒せばこの魔法を解くことができるんだな?」
「そうだ。だが俺は強いぞ。魔獣の中でも王位を持っているのは俺だけだからな」
「まぁ、安心しろ。命までは取らない。魔物といえども俺は王だからな」
「俺は王様のためなら命まで取るぞ?」
「好きにしやがれ。さぁ……いこうか」
二人が動いた瞬間、ゴルドスさんはレオパルドに握られていた。
「グ…グハッッ」
ゴルドスさんが口から血を出し苦悶の表情を浮かべている。
ほかの兵隊達がレオパルドに斬りかかろうとするが、威圧感により近くまで行くことができなかった。
「離してやるよ」
解放されたゴルドスさんはもう戦えるような状態ではなかった。
王様がゴルドスさんの側まで駆けつけた。
「大丈夫か!! ゴルドスよ!」
「すみません……王様。やつは強すぎます。あの……あの力を使ってもよろしいでしょうか?」
「やむおえんな……勇者ではないお前があの力を使う日が来るとはな……」
「精霊チッチよ! ゴルドスに力を与えてくれ!」
王様の呼びかけにネコのような小さな精霊が現れた。
「なんだよ!! 急に呼び出して!」
「すまぬな、チッチよ。見ての通りじゃ。ゴルドスに力を与えてはくれんか?」
「ッ!!……いいけども、あんな化け物と戦うほどの力を使ってしまったら、勇者でもないと身体が耐えられないよ!」
「大丈夫だ...…チッチ、俺に力をく..れ...」
「ゴルドス………本当に、本当にいいんだね?」
「早く……してくれ...…時間がない……」
ーー精霊が願いを込めるとゴルドスさんの身体が輝き力が満ち溢れていた