壊される平和
先日行われた俺も産まれた国、世界一の大国スピナッチ主催の武道会に優勝し、晴れて世界チャンピオンになった俺は国王様から記念品と賞金を貰いに城へ向かった。
7才の格闘技を始めて11年。
やっと努力が報われたような気持ちだ。
スピナッチ国では最年少チャンピオンの誕生にお祭り騒ぎだった。
「賞金で何を買おうかな」
と俺は呑気にそんなことを考えていた。
「チャンピオンお待ちしておりました、王様がお待ちです。どうぞこちらへ」
城の門の前で兵隊が俺の到着を待ってくれていた。
この時までは、まさか俺が勇者になるとは思ってもみなかった訳だが...
「おぉ! 待っておったぞ! チャンピオン、まさかまだ18の少年がチャンピオンになるとはな! 王としても鼻が高いぞ!」
「時間より早く来てしまってすみません王様、私もこの日が楽しみでして」
「いいんじゃよ、チャンピオンよ。名はバットと申したか、聖騎士ゴルドスもお前には純粋な格闘では負けてしまうかもしれないな!」
「私も剣には自信があるのだがな、格闘となるとバット君に負けてしまうかもしれないね」
そんなゴルドスさんの冗談に兵隊達が笑っていた。
それはそうだ、聖騎士はこの世界にまだ3人しかいない最強と言われる部類の人なのだから。
聖騎士はゴルドス シルバーン ブロンズの3人だ。
ゴルドスさんは世界最強の騎士だ。
一人で100人の魔物を倒したとかなんとか聞いたことがある。
シルバーンさんは魔法の達人で結界魔法が得意と聞いている。
この城の結界もシルバーンさんが貼っていて30年は破られていないそうだ。
ブロンズさんも騎士だ。
ゴルドスさんの強さが目立ちすぎていて影が薄いがもちろん強い...らしい。
魔物といっても街には現れない。
人間が森を切り開き街を作る際に戦うことがあるくらい。
今は人同士の争いの方が多いのが現実だ。
「冗談はこれくらいにして、そろそろ記念品と賞金を渡すとしよう」
「本当によく頑張ったなバットよ、記念品のベルトと賞金300万ペリルだ」
「ありがとうございます! 王様! 大事に使わせて頂きます!」
思ったよりも大金でびっくりしたが俺はチャンピオンだ。
これからもっと稼いでやると思っていた。
――そんな時だった。
壁が壊れる大きな音と共にライオンのような大きな人型の魔獣が現れたのだった・・・