変わったのは外見と方針だけ
1991年、日本の都心部で僕は産まれた。
小学校入学までの6年間、幼稚園に入らなかった僕は、比較的大きめな我が家で過ごした。
入学したのは小中一貫の伝統ある学校。特に大きなトラブルはなく、平和な日常だった。
高校は共学だった。自由度が高い学校だった為か、制服の見た目で持ち主を特定できるような状態になっていた。親友の制服が中二病全開でちょっと引いた。
その後、大学に行き、就職。
散歩帰りに色々あって今に至る、というわけだ。
閉話休題。
目の前の湖には、10人中5人は振り向くような、黒髪黒目の少女が映っている。優しそうな印象だが、その目には凛とした覇気が感じられる。
「あはっ♪」
彼女が首を振ると、肩まで届く濡羽のような純黒の髪がサラリと流れた。僕のストライクゾーンど直球だ。
……。
これが自分って……確かに、 学園祭で女装させられたり、ミスコンで入賞しかけたりしたことはあったけどさ…
けどさ!
なんで、なんで男の娘になってるのさ! 聞き間違い!? 聞き間違いなの!?
……はぁー…。
改めて確認すると、細身ではあるが男と言い切れなくはない体型、感覚で解っていたとおり、股間には長年連れ添った息子も健在であるということが解る。
あー……なんでこんな中途半端なことになってるの? いや、それは聞き間違いってことにしたんだっけ。
それはそうとして、ここから先、どうするかな〜?
男として動く場合、外見がアレだから信用されない気がするし、性別不詳はリスクがありそうだし…
いっそ、女性として活動すればなんとかなりそうだけど、それはそれで口調が不自然なのがバレて問題になりそうだし…
んー……口調だけユニセックスな感じにすれば問題ないかな〜?
よし、それでいこう。バレたらそのときはそのとき、女性だって嘘つかなきゃ問題なし、テンプレの異世界にはお風呂なんて無かったはずだしね!
それじゃ、レッツゴ〜!
っと、このままじゃダメか。
初期装備なのかなんなのか、服は一応変わってるけど、明らかに軽装。むしろナイフ以外はほぼ田舎の村娘って感じだし、このままじゃ生きていけるかも怪しい。
周り森だし。周り森だし!
そう、ここ湖のほとりは森の中、でっかい湖の向こう岸に草原が辛うじて見える程度の森の中なのです。
はぁ…、とりあえず向こう岸目指そう。