フラグは選択するもの!
読みにくいと思います。
描写がクソだと思います。
だから…
【アドバイス募集中!】
「はぁー…
寒い。マジ寒い。
あ〜、どっかに携帯型魔力懐炉でも落ちてないかなー!」
溜息ひとつ吐き、冬の寒空に叫ぶ。
上司の贔屓、ふと気づくと靴に付着していた犬のフン、電車の遅れによる駅のホームでの数十分。優希のストレスは今、過去でも二、三度しかない程の高みに達していた。
コンビニの外の真冬の空気はかなり身に染みる。それこそ、魔法が信じたくなるくらいには。
「って、そんなのある訳ないかぁ〜。ラノベじゃあるまいし、ね」
自分の吐いた大人らしさの微塵も感じられない台詞に自己嫌悪、道端の空き缶を思いっきり蹴っ飛ばす。
宙を舞った空き缶は、爽快にかっ飛んでいきーー
「うぉ!?
あ、避けれた」
ーー身を逸らした優希のすぐ横を掠めた。電信柱に跳ね返ったのだ。
一歩左には謎の魔法陣。そこから発せられる引力に、匠の粋な計らいが感じられる。
「って、そうじゃないよ!
なんで魔法陣があるんだよ! ここ地球だろうが!」
さてはテンプレ異世界召喚か? と思い、優希が慌てて辺りを見回すと、有りえない程の転生フラグがそこかしこに散乱していた。
暴走するトラックと子猫、包丁を振り回す不審者に追われる少女、蓋の開いた底の見えないマンホール、美男美女の揃った四人組の高校生、先程から謎の引力を発する魔法陣、などなど。恐らくそれぞれが別の転生、転移に対応していると思われる。
「うわ!? 何この乱立フラグ! しかも少しずつ量が増えてるし!」
前門のトラック、後門の通り魔。大通りとはいえ、すぐ後ろは住宅街のため、狭い場所に地雷な要素が散らばっている。
それだけではない。魔法陣や謎のアイテムがコロコロと出現し、津波のように辺りを埋め尽くしてゆくため、最早地球には見えないような光景が出来上がってきた。
「あぁ、もう! どのみち避けられないんでしょ!
なら一番チートになりそうなの選んでやるよ!
俺の厨二魂よ、燃え上がれ!」
といったところで時が止まったりはしなかった。黒歴史に抗いながら選択肢を絞っていく。
正直、一部ラノベの冒頭にのみ登場する転生シーンなんて碌に憶えていない。中二病は高校までには終わったし、家の本棚は海賊王な漫画本のみで埋まってる。
だがしかし、ここで諦めたら試合どころか人生まで終了しかねない。
優希は灰色とは程遠い脳細胞をフルに駆使して考える。
「マンホールは下位世界光る石はチートなし白魔法陣は勇者召喚黒魔法陣は魔王召喚高校生は巻き込まれお地蔵さんは戦国時代不審者は神様転生トラックはランダムワームホールは近未来……めんどくさい!
もう被害少なきゃなんでもいいや!」
チートへの可能性を放棄、思考を切り替えて謎現象によって起こる被害を抑える方法を考える。
「えっと、子猫は車高的にセーフだろうから、危ないのは通り魔かな?
よっしゃ逝くぜ! 俺の生き様見とけやコラァァァアアアアァァ!!!」
優希は九割方ヤケになりながら黒っぽい服装の不審者に向かってアスファルトの大地を馳けた。
無数にある選択肢から一つを選びきったことに対するご褒美なのか、足下に散らばる謎アイテム群を踏んでしまうこともなく、優希は真っ直ぐに不審者へと向かっていった。