台風だし、学生も登校しろよ。休日?関係ないし、自分は出勤だぜ!
ドンッ
「こんな日なんだ!!女子高生の皆さんは登校しやがってどうぞ!!」
「机ドンの気持ちは俺だって分かるぜ、瀬戸ぉっ!」
ドンドンドン
「「台風なんだし、悪戯の風に透けブラ、絶好調な日こそ、俺達の癒しをよこせ!!」」
厄介な奴等が出勤してしまった……。
しかし、ここは社畜が過ごす会社。今泉ゲーム会社というところ。
台風だから、泊まり込み(まぁいつもの)で作業をしているわけなのってさ。朝から夕方まで天気は荒れ模様だ。
「あのー、騒がないでください。ハモられるとムカつきます」
「瀬戸、松代さん。溜まっている仕事あんだから」
「事務方の弓長と三矢はいいな!営業キャンセルなんだろ!」
「だからって仕事がないわけではありません。あなた達と一緒で仕事は山積み」
「友ちゃんや安西、おっぱい林崎がいないのはどーして?」
「台風で来れないんだから、自宅待機で良いだろ。電車動いてねぇし。あいつ等にも休暇が必要だ」
「男だけのむさ苦しさ!酉さんはまたどっか行ってるしー!ホント、むさ苦しいんだよ!今の作業環境!」
グチグチ言いまくる。
事実天才のデザイナー2人だからこそ、環境の大切さを説きたいんだろう。モチベーションは確かに業務の効率と質に大きく与える。彼等だって、人間なんだから。
「僕、電車通勤なんだよ!通勤の楽しみの一つは、可愛い女子高生、女性を見守ることなんだよ!台風はどーでも良いから、女性は僕のために出勤しなさい!」
「雨で濡れ、風で乱れ、冷えて弱った女性の身体を抱いてやるのが、男のカッコよさだろ!だから、可愛い女性は台風時に出勤してください!!」
「正直、本音の瀬戸。とんでもない言い訳の松代さんだな」
「明日まで待ちなさいよ。それくらいのこと。停電でもない限り、私達は業務がありますよ。別室にいる宮野さんみたく、仕事してください」
◇ ◇
ザーーーーーーーッ
ゴォーーーーーーッ
「凄い雨、風ね。これぞ、台風ってね」
「で?」
シトシト雨だったら相合傘だったろう。
台風で相合傘をやるとしたら、馬鹿野郎共であるが。それをやっている男女が一組がいた。
イカレもん同士。
「俺を会社から連れ出したのはなんでだ?酉」
「なんでって、宮野。朝、何も食べてないでしょ?たまには私と外食するの」
「俺に飯はいらねぇって言ったろ?不眠不休、食事なしで活動できる。松代とは違うんだよ」
「私は宮野に必要でしょ?私の手料理なんて時間なくて振る舞えないけど、一緒にいる時間は作ってもいいんじゃない?」
「…………お前ほど、気長じゃねぇーんだよ。酉」
台風の中。
朝から飯屋に駆け込むなんて、よくやるもんだ。いる店員さんも凄いもんだ。
酉と宮野が店に来ると、店員も驚いたものだ。こんな朝っぱらから、台風の中。やってくるお客がいるとは。ずぶ濡れになってまで……。
しかも、2人でカウンター席を選ぶんか。
「何を頼みたい?お金はあるからさ」
「…………」
「……もうっ、黙っちゃって」
「三矢達も誘えよ」
「照れてる?あんた?」
「バーカ。お前の仲間はあいつ等だろ。俺には関係ねぇー。イカレてることさせてくれりゃ、どーでも良いから。なんでもな」
「そーいう長い言い訳。やっぱ照れてるんだ。三矢くんに読まれちゃってるかもね。彼がここにいたら大変ね」
あー、こいつのペースに巻き込まれると、めんどくせぇ。
「できれば、宮野と違うのが良いんだけど」
「俺はパン。お前はご飯な」
「パンはないじゃない。店屋物しかないわよ」
「じゃあ、俺は肉と卵、玉ねぎ。お前は飯な」
「あら、面白い食べ方ね。すみません。牛丼1人前でー」
2人で1人前の牛丼とか迷惑過ぎる。まぁ、箸はカウンター席に置いてあるわけで。
牛丼がやってくると、本気でこの2人は、1人前の牛丼を上下で分けて食すつもりだ。
「なに見てんだ」
それは店員に言っているかと思ったが、眼中なく。酉に言っていた。
「だって、宮野が先に肉と卵、玉ねぎを食べてくれないとご飯が食べれないでしょ」
「うぜっ」
「決めたのは宮野でしょ」
酉的には、テーブル席を使ったファミリータイプの見つめ合いより、カウンター席で見つめ合った方がロマンがあるとでも思っている。
「箸の持ち方がなってないわね、あんた」
「うるせぇ」
こーいう指摘されると腹立つ。手がイライラして、余計な動作もしてしまう。
こうして見られながら食うのが、鬱陶しいと感じるのは初めてだ。
「ほい。お前の番」
「キレイに食べたわね。箸の持ち方がなってない割に」
「お前は俺のお母さんか?残りは食ってろ」
飯だけになった牛丼をいただく酉。宮野はやり返す気などなく、酉に背を向けて。ずーっと、店の時計を見ていた。
「つまんない奴ね。胸にご飯粒、頬にご飯粒か……」
「そーいうくだらねぇ冗談やるのがお前だろ?そんなお前は、俺は好きになれねぇ。松代にやってろ」
「はいはい。ど直球ありがとうね。あなたの前では、そーいう一面。協調してあげないとね」
分かっていて、普通に食べていた酉。
関係が悪そうに見えて、実際のところは、メンバーの中で一番強固な絆というか、似たイカレ具合で噛み合っている酉と宮野であった。
「ありがとうございましたー」
ガーーーーッ
「……会社に戻るわけだが、松代には何を言うんだ?ウザく問い詰められるぞ」
「台風でブラ透けしてきたし、着替えたいし、シャワー浴びるわー。で、うやむやに」
「そーか」
「今、確かに気づいたわ。私のブラ透け、確認したでしょ。宮野」
「お前が風邪を引かないか心配しただけだ。んなのはどーでもいい」