インガオホー
しゅうきさんとのコラボ小説になります。内容なんてペラッペラの紙みたいなものなんで、そんな深く考えないでください。
後、かなりめんd――ゲフンゲフン。色々考えた結果、戦闘シーンや考察、大元のやりとりの大部分をカットいたしました。
手を抜いたって?
……ごめんね。
「まあなんていいますか」
水面が広がり、足元を濡らすなか。自分の衣服が濡れるのにも関わらず、膝を付き項垂れている少年。
なんともバツが悪い。
考えるように人差し指を唇に当てて、乾いた笑みで彼を見下ろす。
彼は今、私という情報の塊によって、力の差をまざまざと見せつけられてしまったのだ。
それにより意気消沈。15歳そこらの男の子なんて、まあそんなところですよね。
とはいえやり過ぎてしまったと反省はしている。まあ楽しかったんだけど。
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ことの経緯は、ある日のラジオ収録の後の事だ。
「実は僕、物を作ることができるんだ」
彼。平行世界線からやってきたという『しゅうき』と言う少年。普段、私たちの番組、『阿求の駄弁りR』を視聴しているリスナーさんなのだが、今回は社会科見学ということで収録ブースに遊びに来ていた。
二月も過ぎたばかりでまだ寒いというのに、半そで半ズボンという、どこのガキ大将だ。と思わせる服装をしていて、見ているだけで身震いをしてしまいそうになる。
そんな彼が、収録も終わり、撤収作業をスタッフさんたちがしている中で、隣に座っていた私にそう話しかけたのだ。
「物……ですか?」
物を作るという、唐突すぎる言葉に、反射的に聞き返した。彼は得意そうな笑みを浮かべて頷くと、私の目の前に掌を差し出す。
「こうやって……」
彼は何をするでもなく、ただ平然としていたのだが、あっという間にバレッタが出来上がった。造詣としては、リボンの中心に花らしきものが施された、比較的どこでも見かけるようなものだった。
「この髪飾りとか……」
「髪飾りですか?」
彼は少しキョトンとした顔をして、首を少し傾げた。どうやらまだ髪飾りとバレッタの区別がついていないのだろう。まあ男の人は、そういう女性的なヘヤアクセは無頓着な部分があるし、仕方がないといえば仕方がない。
私は別に注意するべきことではないと思い、特に説明することはしなかった。そのバレッタに関しても「なんでもないですよ」、とだけ言って受け取る。
しかし良く出来ているというか……形状や構造までそっくりそのまま作られている。日常生活で使っても支障がないレベルだ。
「それあげるよ。阿求さんにはいつも楽しませて貰ってるお礼」
「別にそんな、楽しませてるだなんて」
私がラジオやってるのはプロデューサーの所為なので、そんなこと気にしたこともなかった。
しかし周りから、それもリスナーから見たら、楽しませて貰っているということになるのだろう。無邪気なその笑顔に、少しだけ気持ちが温かくなるのを感じる。
「ありがとうございます」
「うん。他になんか欲しいのある? 大抵作れるんだよ~」
そう言ってヘアゴムやら万年筆やら、特に私が好みそうな内容のものを手当たり次第作ってくれた。どういった原理でそういうのを作れるのかわからないが、これが恐らく彼の力なのだろう。
「やっぱ万年筆がいいかな?」
「ああ、ありがとうございます」
素直に万年筆を受け取り、蓋を取る。見た目は至って普通の万年筆だったのだが、少し違いがあった……というか、作りが違う。
「これ、金製ではないんですね」
「えっ?」
「いや、見たところ、銀が使われているようだったので」
万年筆はインクの酸に対応するために、ペン先はに金を使うのが一般的で、最近ではスチール製なんてものを出て来てはいるが、銀は存在していないはずなのだ。その理由としては、恐らく銀は酸化しやすいからだろう。
ただ渡された万年筆は、明らかに銀だった。
「それにこれ、ペンポイントが付いてないですよ?」
「えっ? えっ?」
柔らかい金を使うと、もちろんペン先は摩耗していく。それを防ぐために、ペンポイントと呼ばれる耐摩耗合金を使用したものが、ペン先には取り付けられているののだ。これがないと、万年筆で文字を書くということはできない。
それがないと、もらっても困るというものだ。
「これ、作り直せますか?」
「えっと……たぶん」
不安だな。
彼は一しきり万年筆とにらめっこをしてから、なんとかペン先を金に変えることは成功した。しかし、ペンポイントを作ることはできなかった。
「あの?」
「大丈夫大丈夫、たぶんできるから」
それから1分もしないうちに、なんとかペンポイントらしきものが付加された万年筆ができあがった。
「これで書けるから」
「……一つだけいいですか?」
「んっ?」
正直、聞こうかどうか迷ったが、これは今度困らないように、言っといたほうがいいよね。
「今たぶん、書ける万年筆を想像しましたよね?」
私の問いに、彼は少しだけ頬が引き攣ったような顔をする。それで私の想像は確信に変わった。
彼は恐らく、なんでも作れるが、それは結果を引き出す為に必要な要素があるものを作り出すだけで、それそのものを作り出すことができないんだ。
今にしてもそうだ。ただ漠然と万年筆というものを想像しただろうが、そうした場合自分の知識から物を構築しなくてはならない。そうなった場合、外見はそれそのものだが、細部まではそれその通りに作ることができない。ただ結果的に、書ける万年筆を作るということに主観を置けば、彼が細かな指定をしなくとも“書ける万年筆”が出来上がるのだろう。
結果的に、それは万年筆としての責務は果たしている。
なんとも難儀な能力である。
「あの……一つ頼まれごとをしていいですか?」
「何?」
余計なおせっかいかもしれないけど、彼がこの先を生きていく上では、こういったことが壁になるときが来るだろう。そのための練習をするのはいいかもしれない。
「なんでも作れる空間を作って、私とその中で遊びませんか?」
いや……違うな。
ただ単に私は、チート級のスキルを持っている人を、完膚なきまでに叩き潰すのが大好きなクズなだけだ。
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まあ。詳しい経緯を説明するとこんな感じで、その空間を作って貰ってから、情報によって左右されることが多いということを見せつけた訳だけど(その内容については、とても長くなるからカットしたよ)。
ぶっちゃけた話をいえば、結果が付いてくる物を作るこの子のやりかたは間違ってはいない。それこそ魔科学的な物だって作れるし、現代兵器だってその気になれば作れることだろう。
ただそのことに胡坐をかくのは違うことだし、その結果考えることを止めてしまったら、それは進歩を失うことになってしまう。
今回の場合、ただ単純に私の趣味に付き合わせただけになったけど、結果としてはそういう教訓的なものを教えられたのかな? 完全に後付のこじ付けな気もするが。
「まあ。勉強すればどうということは――」
彼を慰めようと思って声をかけたが。手を肩に伸ばした瞬間に、彼は勢いよく立ち上がった。
「阿求さんすげー!」
「……えっ?」
予想だにしない返しに、私は目を丸くした。
彼はキラキラと輝いた目で私を見ている。その尊敬の眼差しは、私をたじろがせた。
「作るってそういうことだったんだ。ただ漠然と作るだけじゃ駄目だ。もっと工夫して造らないといけないんだ。阿求さんのおかげで思い知らされた!」
「あっ、はい」
とても熱い眼差しと、楽観的に勘違いをしてまるで自分のためにしてくれたみたいな対応に、嫌な汗が背中に流れる。
「ありがとう阿求さん。僕、もっとうまく作れるように頑張る」
「あはは~。まあ頑張ってください」
良心が痛むって言うのはこういうことをいうんですかね? 完全に私怨であなたをフルボッコにしたなんて、もう絶対に言えない。
それからも続く、私を褒め称える言葉の数々は彼が帰るまで続き。過度のストレスで胃を痛めた私は、次の日寝込むことになり。今後は虐めるのも大概にしておこうと、逆に思い知らされたのだった。
「はぁ……」
はい。みずたつです。今回しゅうきさんとのコラボ小説書かせて貰いました。
内容はまあ、なんとなく察してください。これ以上僕の中にアイディアが下りてこなかったんです。
後全然しゅうきさんの作品読んでる時間なかったので、借りた子ほとんど喋らなかったです。申し訳ない。キャラが掴めなかったんだ。
裏話というかなんというか↓
実際僕は俺つえー系統が苦手です。そんな俺つえー的な人は全員足元に屈服させたいともまあ普通に思っています。弱い能力で強い人を完封するのとか、能力だけじゃなくてただ考えだけで相手を跪かせるのとか大好きなので、彼の能力である「あらゆる物を作り出す程度の能力」というチートにたいして、穴を探してそこに付け込んでノシテやろうと思ったんです。
単純に僕の性格が悪いんですよね。
そんな思いから作られたこの作品ですが、物事はインガオホー。悪いことをすればその報いが必ず帰ってきます。その結果が阿求さんという訳です。皆さんも注意しましょうね。
では、みずたつでした。