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『大盗賊ダイ』  作者: 提灯屋
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お嬢様属性はやめなよ


「昨日偶々(たまたま)こちらの乙女たちは事件に巻き込まれました。現在は判事職ですが弟は以前は法定刑吏。護衛としては適役です」

「ははははははははは」

「パウロ判事さん、ちょっと黙ってて」

「おう、いいツッコミだへ、ダイ」

 ツッコミか? そしてあんた、ボケだったのか、あの笑い。


「それから、ズィロが多分馬車に同乗するでしょうから、乙女の護衛は小官が」

「太刀打ちできんの、あんたチビだけど」

「ご安心ください。ズィロは弟みたいなもんですから」

 失礼極まるテオの言葉も受け流すペネ。


「で、なんでオジさんが同じ客室に?」

「もちろん、今回の代打に限らず、テオ嬢」

 うやうやしくテオに拝礼するズィロ。このおっさん、猫の足跡団の首領の気難しさを考慮しているらしい。


「おい、おれをお嬢さ」

 ぺしっ。ペネがテオのおでこを叩く。もちろん、背丈不足しているからパウロがだっこして。


「〝おい〟とか長時間窓から喋るのはお嬢様として不適切ですよ、乙女」

「んだよ。あんたカノッサ(うち)の舎監かよ」

「姉ちゃんな、愛と正義と」

 無意味な壮大設定。


「パウロ。貴方は黙っていなさい。乙女、テオさん。小官は判事としてではなく、年長者として忠告していますよ。そろそろ全てを斜に構えるのはお控えなさい」

「ふん」

 膨れ顔のテオは車窓を閉じる。もっとも外扉は全開なんですけど。


「スカウトは車中でも良いとして、ご褒美と出演料は支払わなければいけませんよ、座長」

「はい、それはもちろん」

 とても大人しいズィロ。それから、ここまでは想定範疇なのか、大汗もかいていない。


「いけません、忘れるところでした。パウロ」

「はいな、姉ちゃん」

「なに、それ」

 パウロが握っているから、小鳥の卵だと思った。


「あれ、これは?」

 パウロの手からダイの手に見覚えのあるアイテムが授与された。


「ご褒美だそうです」

「えーー。〝これ?〟」

「これって白い煉瓦レンガ?」

 そうじゃない。ダイが手渡されたのは確かに全体は白っぽかったけど煉瓦のような人造物じゃない。


「『王者の石』だそうですよ。判事にどんな雑用を申し付けているのか」

「えーー。じゃあリリュさんだね」

「あ、白ひげ怒ってる?」

「ってない」

 でもリリュの名前を耳にしたマーサは頬がピクピク間違えるした。


「じゃあ主にリリュさんからのご褒美なんだ」

「そのようですね。どうしてそれがご褒美なのか、小官には理解しかねますけど」

 ふーーーんと返事をしながら、王者の石を持ち上げるダイ。

 大きさは丁度八歳のダイの両掌に載るくらいだ。


「んだけど卵なら旨かよ、ダイ」

「だから貴方は黙ってなさい」

 再三再四姉に叱責されたパウロは、馬車の影に隠れる。この巨漢、ミニサイズの姉にめっぽう弱い。


「おれ、楽屋でいらないっていったのになぁ」

「正直小官も子供のご褒美にしてももっと適当な品があると思いますけど、頼まれましたので」

「でもさ」

 石を抱きかかえたままのダイの背後から顔を突き出す鼻高。『猫の足跡団』の一員だ。


「地が白いから磨けば案外綺麗な置物になりそう」

「だ・か・ら・さ・」

 一旦閉じていた窓を全開するテオ。


「お嬢様属性はやめなよ。どーーーせ、私たちはフェー」

 フェーデ。繰り返すが、恐喝強請ゆすりや金品をせびる行為を決闘に偽装する犯罪だ。首領リーダのテオの指揮下、『猫の足跡団』はフェーデの常習者だった。


「パウロ、馬車を護衛しなさい。さあ乙女たち、乗車。素早く乗車」

 ズィロと司法院が用意した御者はテオたちがフェーデ犯だとは知らない。命令口調だけどペネなりの配慮ある言動だった。


「じゃあ途中までおれも」

 ペネが馬車に乗り込んでしまい『王者の石』返却にならなかったダイは、面倒なご褒美を愛馬とうちゃんの鞍に突っ込んで乗馬。馬車を追走する。


「はははは。いい天気だへ」

 もちろんパウロは駆け足で追走。


「パウロさんって脳筋の見本なんだね」

「ははははは。のうきん?」

「いや、いいから」

 馬車と一騎、そしておかしな黒い巨体が進む。



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